- コラム
軍事学入門「選挙結果が軍事に与える影響」~2017年衆議院選挙が与えた軍事的影響~
2017/11/18
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2017/01/7
菅野 直人
「言霊(ことだま)」という言葉があります。言葉には霊的な力が宿るので、良いことを言えば良いことが起こり、悪いことを言えば悪いことが起きるという考え方です。それでは戦争や軍事のことを語ると戦争が起きるのでしょうか?相手がある場合には、そうとは限りません。
「1945年に太平洋戦争が終わってから、日本は平和国家になった。だから戦争が起きなかった」という言葉は、ある意味真実であり、それゆえに「定番」の思想として支持されています。
それが日本国憲法第9条によって実現しているかはさておき、1945年8月15日の玉音放送以降、日本軍は解体され、大日本帝国は崩壊して平和国家が生まれたのです…本当に?
現実にはそれから71年以上たった2016年12月現在、必ずしも日本がずっと平和であったとは言えません。
平和と戦争はコインの裏表のように、「戦争になりそうな力」と「平和であろうとする力」の絶妙な均衡によってのみ維持されている場合があります。
もちろん、戦争になりそうな力など無くとも平和が保たれる場合もあるでしょう。
ただしそのようなケースは、
・侵略よりクーデターが怖いので、常設の軍隊など置けない
典型的な例がコスタリカですが、警察の傘下に準軍事組織を保有しており、あくまで権力を持たないようコントロールされているだけとも言えます。
さらに有事に軍組織を復活させることも可能なため、厳密には軍を廃止したわけではありません。
・あまりに国力が小さいため、国防を他国に依存しているケース
上記の小国家の他に、ヨーロッパで言えばサンマリノやアンドラ、モナコがこの例です。
上記のような例外に限られます。
さて、日本はその「例外」に含まれるでしょうか?
日本とその国境を接している国には、以下の4パターン5ヶ国があります。
・一応は友好国
現状では敵対しているとまで言えない、という意味で韓国とロシア
ただしロシアは旧ソ連時代、極度に敵対国寄りと言って良い関係で、現在も重要な仮想敵国には違いありません。
・どう判断すべきか困る国
商売を考えると友好国なのですが、それ以外では敵対的とも言えないことも無い中華人民共和国
・明確に敵対国
これはシンプルに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)
このような多方向で問題を抱えている以上、周辺に脅威が無いとは言えないでしょう。
また、クーデターに関しては、自衛隊や防衛省は政治的大勢力でも無く、起こす理由が特にありません。
とりあえず政権簒奪などの心配は、政治的問題だけで十分そうです。
最後に、「国防を他国に依存しているケース」は敗戦時から1952年のサンフランシスコ平和条約で日本が国家の主権を完全に取り戻すまでの期間がそうでした。
北方領土や竹島および周辺の漁業権の問題はこの期間に端を発しており、現在の「平和」に大きな陰を落としています。
最後の事例を見てもわかる通り、日本にとって「平和の大きな障害」は、日本が国防力を喪失していた時期を起源としています。
日本が自ら国防を行う権利を回復して以降は、米国の協力を得ながらではありますが、相手とのパワーバランスを図る形で、「平和への大きな障害」の拡大を防いできた、とも言えるでしょう。
その意味で、日本にとっては「戦争はしません!」という言葉は、今ひとつ言霊として力が小さいようで、相手が「重大な結果を招く」つまり戦争も辞さない!と言霊を発した場合にはあまり役に立ちませんでした。
対話による解決が難しく、さりとて平和は維持しなければならないとなれば、残る手段は「戦争を行う力」を保持することで、「平和を保つ」それ以外に無くなっています。
こればかりは日本という国が置かれた立地条件や周辺状況に変化が無い限り、変わりが無いでしょう。
それでは日本が南太平洋のどこかにあれば…となると、それでは大陸や朝鮮半島を経由してきた文化や技術の吸収で発展してきた歴史が消えてしまいます。
今更日本列島ごとどこかに引越しできない以上、隣人と折り合いをつける方法として、「戦争と平和」は1枚のコインの裏表と考え、付き合い続けるしか無いようです。
いかがでしょう?
第2回はいくらか具体的に「日本で軍事学を学ばねばならない理由」をご説明しました。
なお、あくまで「軍事学入門」その入口ということで、北方領土問題や竹島問題の詳細はまた別な機会にご紹介したいと思います。
次回からは、いよいよあらゆる物事を軍事に絡めて解釈していきますが、まずは「軍事学の観点から見た国家間関係」を解説していきましょう。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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