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2016/10/12

菅野 直人

現代航空母艦のトレンドと運用思想 【前編】

海上自衛隊でヘリ空母4隻体制が間もなく整い、中国では練習空母「遼寧」に続き、2隻の空母が建造中の現在、「空母(航空母艦)」という兵器に注目が集まっています。その長い歴史の中で、日本が最強の保有国だった事もある空母、その現在のトレンドを紹介します。

現在の空母に落ち着くまで

第2次世界大戦以降、米英の軽空母が中規模海軍国に供与された事で、一時は空母保有国が増えた事もありましたが、後継艦も無く消え去った国も多く、今でも空母保有国は多くありません。
ハリアー系V/STOL機の登場で軽空母に脚光が当たった時代もありましたが、それらは小型過ぎて運用に制約が多いものでした。
現在はそれら軽空母から「全通甲板を持った多用途艦」に発展するか、より高性能機を運用できる正規空母を保有するかで二極化しています。

正規空母保有国は予算がネック

FA-18 Trap.jpg
パブリック・ドメイン, Link

アレスティング・ワイヤーを利用して空母に着艦中のF/A-18戦闘機。

出典:Wikipedia

アレスティング・ワイヤー

艦載機をカタパルトで発艦させ、アレスティングワイヤーで着艦させるCATOBAR空母、着艦は共通なものの、カタパルトを使わずスキージャンプで短距離滑走発艦させるSTOBAR空母が、「正規空母」と呼ばれます。
現在の正規空母保有国は、アメリカ、ロシア、フランス、ブラジル、インド、中国の6ヶ国で、もっとも小型のブラジル空母「サンパウロ」でも3万トン級と大型ですが、そのほとんどは予算問題に苦しんでいます。

先行き不透明なアメリカ、元気な中国

中でも深刻なのはアメリカで、空母数削減で重要海域の空母空白期間が目立ったり、搭載航空隊の不足で海兵隊機の派遣が恒常的になっています。
議会からは予算カットでさらに減勢されそうになっており、現状の洋上航空兵力をいつまで維持できるか、わかりません。
他の国も同じように予算問題を抱えていますが、通常型空母2隻(001A型、002型)を建造中、さらに原子力空母2隻を建造予定の中国だけが元気です。
正規空母は本国から遠く離れた洋上に大規模な航空兵力を展開できるため、わかりやすい形で「いざとなれば軍事力行使」のサインを送りやすいのが特徴でした。
それが「世界の警察」の役割に疲れ、サインを送る必要性が薄れつつあるアメリカでは縮小傾向で、必要性が増すばかりの中国では増加傾向にある、と考えればわかりやすいでしょう。

かつての軽空母群は多用途艦へ

08.05.11 Las Palmas 001.JPG
By W. Edlmeier投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

スペインの強襲揚陸艦「ファン・カルロス一世」軽空母任務もこなす多用途性を備えている

一時期流行った各国の軽空母群は、イタリアの「カブール」、スペインの「ファン・カルロス一世」のように、「全通甲板を備えた大型多用途艦」へと発展しました。

「昔ながらの軽空母」は、イギリスで建造中のSTOVL空母クィーン・エリザベス級くらいで、それ以外は旧時代的な意味での空母とは言えませんが、揚陸艦や給油艦、災害時の救難艦など運用に柔軟性があるため、現在のトレンドと言えるでしょう。

現代の空母は、正規空母、軽空母に関わらず、その国の海軍単独で使うというより、同盟国と組んだ統合任務部隊で、多様な任務をこなす柔軟性が求められます。
いざという時に単独でコトにあたる必要性と危機感のある国ほど、空母の新規整備に熱心になっっている背景が浮き彫りとなっています。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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