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2019/03/1

笹木恵一

フランケンシュタイン対地底怪獣~核の時代と原爆の怨霊~

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』は1965 年に東宝と、米国のベネディクト・プロが共同制作した怪獣映画。通称“フラバラ”。製作 田中友幸、監督 本多猪四郎、特技監督 円谷英二。『ゴジラ』を生み出したお三方である。この作品、ファンの間では有名だが一般的な知名度は高くない、まさに隠れた名作と言える。

出典: フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)







大まかなストーリー

第二次大戦末期。ドイツ軍は、かつてフランケンシュタイン博士が作ったという怪物の心臓を手に入れ、それを使って超人兵士を作る計画を立てるが、ベルリンが陥落し計画は断念される。怪物の心臓は密かに同盟国である日本に届けられ、広島の研究所に預けられる。しかしそれも原爆投下により研究所もろとも全て消失してしまった。それから15年の月日が流れた。広島市内では謎の浮浪児の目撃例が相次ぐ。その少年は食べ物を求めて家畜やペットの動物を襲っていたが、原爆症の研究所職員に発見され引き取られる。研究所で十分な食べ物を与えられた少年はみるみるうちに10メートルを超える巨人に成長する。そのニュースを聞いて、かつて広島に怪物の心臓を運んだ元軍人が訊ねてくる。彼は、あの少年はフランケンシュタインの怪物なのではないかというのだ。ちょうどその頃、各地を原因不明の地震が襲い、現場では発光する巨大生物が目撃される。さらに巨人となったフランケンシュタインの怪物は、押し寄せたマスコミのカメラのフラッシュに怯えて暴れだし、研究所を脱走してしまった。フランケンシュタインと地底怪獣バラゴンは、まるで引き寄せられるかのように、お互いに向かって日本を横断していく。ついに激突する二体。炎に包まれた森の中で二体の影は消えていくのだった。

企画の経緯

フランケンシュタイン』は1818年にメアリー・シェリーによって執筆された小説が原作で、今日一般的に“フランケンシュタイン”という名前で連想されるのは、作品内でフランケンシュタイン博士によって作られた、死体を繋ぎ合わせて作られた怪物のことだ。
古くから演劇や映画の題材として扱われており、1933年の『キングコング』で特撮を務めたウィリス・オブライエンも、キングコングとフランケンシュタインが戦う映画を企画するが、実現せず。その企画の権利が流れ流れて東宝に行きつき、『フランケンシュタイン対ゴジラ』という企画が立ち上がるが、諸々の事情でゴジラではなく、オリジナル怪獣のバラゴンが登場することになった。ちなみに完成した作品はゴジラがバラゴンになった以外ほとんど同じ内容らしい。ということで、今回はバラゴン=ゴジラとして語らせていただく。

原爆VS水爆

数ある東宝怪獣映画の中でも、一般的には見過ごされがちな今作だが、バラゴン=ゴジラだと考えると興味深い。1954年以降、東宝が生み出した多くの怪獣たちは、皆戦争や核の恐怖、そして戦争で犠牲になった人々のメタファーとして描かれてきた。特にゴジラは、原爆を受けた日本に、当時盛んだった水爆実験で生まれた怪獣として、一度ならずに度までも核の恐怖が訪れるという内容だった。そうした中で、今作はある意味最も直接的に戦争と原爆を描いた怪獣映画と言えるのではないだろうか。今作のフランケンシュタインが誕生したのは、その後の核実験ではなく、あの“ヒロシマの原爆”によるものだ。さらに生まれた怪物は人間に近い姿で、行き場を失った浮浪児として現れる。劇中でも語られる通り、今作から10年ほど前にはよく見られた光景だったのだ。まさにフランケンシュタインは原爆と、その被害者の負の側面を背負った「人間」なのだ。そして彼が戦うのは何か? バラゴン=ゴジラ、水爆の申し子である。つまり今作は、戦後の水爆の恐怖に対し、原爆の怨霊がぶつかり、これを殺すというものなのだ!
時は60年代、原子力が豊かな未来を創ると信じられていた時代。まるでもう核に怯える時代は終わろう、これからは核に希望を抱こう、未来は明るいんだと言わんがごとく、原爆の怨霊が水爆の恐怖を殺し、自らもどこかへ消え去ってしまうのだ。

この時代、もう核は恐怖の対象ではなく、希望の象徴だったのだ。同年のゴジラ映画「三大怪獣地球最大の決戦」でも、これまで人類の敵だったゴジラは、地球の守護者という立場に変わっている。
現代の我々は、再び原子力の是非を問われる時代に生きている。フランケンシュタインが命を懸けた希望は幻だったのだろうか?







笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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