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2018/12/26

菅野 直人

多様化する陸上自衛隊各師団/旅団の性格・任務とその種類


かつて、主にソ連軍の北海道侵攻への対処が予想されていたため極端な北方重視編成だった陸上自衛隊ですが、1990年前後の旧ソ連崩壊と冷戦終了、1995年以降一転して緊張を増してきた対北朝鮮・対中国を重視した西方重視にシフトしています。現在では本格的な本土侵攻から離島防衛、都市での市街戦にまで対応するとともに、臨機応変な戦力展開を可能とするバラエティに富んだ部隊編成が行われるようになっています。今回は師団/旅団に限って簡単にご紹介しましょう。







かつての北方重視・正面切った大規模防衛戦の名残を残す『総合近代化師団/旅団』

第2師団(北海道旭川市:3個普通科連隊・1個戦車連隊・1個特科連隊基幹)
第5旅団(北海道帯広市:3個軽普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科隊基幹)
第7師団(機甲型:北海道千歳市:1個普通科連隊・3個戦車連隊・1個特科連隊・1個高射特科連隊基幹)

陸上自衛隊による『本土決戦』の舞台として想定されていた北海道に全て配備され、かつての北方重視の名残を残すのが、正面切った本土侵攻へ対処する重戦闘能力を持つ最精鋭だった2個師団&1個旅団です。

ただしこのうち第2師団と第5旅団は時期こそ未定ながら次期中期防(中期防衛力整備計画)でそれぞれ後述する機動師団/機動旅団に改変されると見込まれており、第2師団は第8師団に、第5旅団は第11旅団にと、それぞれ既存の機動師団/機動旅団に準じた改編を受けると思われます。

変わらないのは総合近代化師団(機動型)の第7師団のみで、陸上自衛隊唯一の機甲師団、つまり最後の予備兵力の主力として、今後も存続する見込みです。

政治・経済の最重要部で市街戦も考慮する『即応近代化政経中枢型師団』

第1師団(東京都練馬区:3個重普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科隊基幹)
第3師団(兵庫県伊丹市:3個重普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科隊基幹)

陸上自衛隊の各師団/旅団の中でも政治・経済の中心である首都圏(第1)、東京に次ぐ京阪神(第3)を防衛するのが『即応近代化政経中枢型師団』です。

通常は師団編成だと4個普通科中隊および重迫撃砲中隊基幹の普通科連隊、旅団編成だと3個普通科中隊基幹の軽普通科連隊ですが、このタイプの師団に配置されている普通科連隊はなんと5個普通科中隊および重迫撃砲中隊が基幹。

つまり普通科連隊の戦闘力および担当可能な正面が増強されており、特科による間接火力支援こそ少ないものの、1個戦車大隊(2個戦車中隊基幹)による直接火力支援は確保しています。

軽快な普通科連隊を増強して市街戦への対処能力を向上させており、有事に巻き込まれた重要都市での対応に特化した師団です。

担当地域に応じたバラエティに富む戦力『即応近代化師団/旅団』

第4師団(地域防衛型:福岡県春日市:3個普通科連隊・1個戦車隊・1個特科連隊・対馬警備隊基幹)
第9師団(ゲリラ・コマンド対処型:青森県青森市:3個普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科連隊基幹)
第10師団(愛知県名古屋市:3個普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科連隊基幹)
第13旅団(広島県海田町:3個軽普通科連隊・1個戦車中隊・1個特科隊基幹)
第15旅団(離島型:沖縄県那覇市:1個軽普通科連隊・1個高射特科連隊・1個ヘリコプター隊基幹)

※以下は機動旅団へ更新予定
第12旅団(空中機動型:群馬県榛東村・3個普通科連隊・1個特科隊・1個ヘリコプター隊基幹)

小規模なゲリラやコマンド部隊への対処(第9師団)、新たに重視されるようになった朝鮮半島に面した正面(第4師団、第13旅団)、離島防御(第15旅団)といった多様な自体への対応、そして空中機動予備(第12旅団)、戦略予備(第10師団)と、まさにバラエティに富んでいます。

それぞれ固有の警備地区は持つものの、状況に応じて予備戦力としての増援、あるいは後述する機動師団/機動旅団や予備戦力からの増援を受けるまでの張り付け部隊的な役割。

かつてのように、重視された正面のみ隊員を定員まで充足させていた陸上自衛隊とは異なり、これらの部隊は即応予備自衛官の招集で戦力化するまでは基幹人員のみとなる普通科連隊『コア部隊』を各方面隊直轄に転出させた結果、平時から充足率が高まっており、有事の即応性はかつてないほど高まりました。
それを可能にすべく隷下部隊もスリム化され、戦車部隊や特科部隊は実情に合わせて縮小されています。

特異なのは離島防衛を担う第15旅団と第4師団隷下の対馬警備隊で、それぞれ担当地域の実情に合わせた戦力を持ち、対馬警備隊はレンジャー隊員を数多く揃えた特殊部隊に近い精鋭、第15旅団は射程の長い中SAMを揃え、宮古島や石垣島のSAM防空も担う予定です。

陸上自衛隊の変化が最も顕著に現れた『機動師団/機動旅団』

第8師団(熊本県熊本市:1個即応機動連隊・2個普通科連隊・1個特科連隊基幹)
第14旅団(香川県善通寺市:1個即応機動連隊・1個軽普通科連隊・1個特科隊基幹)

※以下は2019年3月改変予定のため2018年12月現在の編成。
第6師団(山形県東根市:3個普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科連隊基幹)
第11旅団(北海道札幌市:3個軽普通科連隊・1個戦車大隊・1個特科隊基幹)

2018年3月から編成が始まったばかりで同年に1個師団/1個旅団を編成、2019年3月にまた1個師団/1個旅団を編成し、2020年3月以降でさらに1個師団/2個旅団と、合計3個師団/4個旅団が機動師団/機動旅団化される見通し。

既に機動化された第8師団/第14旅団を見ればわかる通り常設の戦車隊は持たず、16式機動戦闘車と重迫撃砲、高機動車で自走化した近SAMや中距離多目的誘導弾を持ち、普通科隊員も96式装輪装甲車で完全機動化された『即応機動連隊』が中核です。

加えて通常の普通科連隊もヘリで空中機動を前提としているなど、有事にはヘリで普通科連隊を投入後、装輪車両ばかりで高速移動が可能な即応機動連隊が短時間で必要な正面で先頭加入できるよう機動化された、まさに実戦向きの即応戦力となりました。

2019年3月に編成完了予定の第6師団では、既に即応機動連隊化されると思われる第22普通科連隊(宮城県多賀城市)へ96式装輪装甲車の配備が目撃されるなど着々と準備が進行しています。
第6戦車大隊(宮城県大和町)も16式機動戦闘車への改変を終えて、第22即応機動連隊(予定)隷下の機動戦闘車隊になり、第6特科連隊や第6高射特科大隊も第22即応機動連隊へ残す重迫撃砲の中隊や近SAMの高射小隊を除き、東北方面隊直轄部隊へ転出予定です。

いずれ第2師団/第5旅団/第12旅団も同様の改変を受け、前述の即応近代化師団/旅団が『』の第一撃へ対処している中へ真っ先に投入されることとなり、かつてのように『各地へ張り付けられた師団が個別に戦い玉砕していくような本土防衛戦』を、過去のものにしつつあります。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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