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2018/05/10

笹木恵一

ストリート・オブ・ファイヤー~80年代ロックの寓話~

ストリート・オブ・ファイヤー』は1984年のアメリカ映画。監督はウォルター・ヒル。主演は主人公トム・コーディをマイケル・パレ、ヒロインのエレンをダイアン・レインが演じる。サブキャラたちも個性豊かで、マイケルの相棒となる元軍人マッコイをエイミー・マディガンが、ちょっとウザいとっちゃん坊やのビリーをお馴染みリック・モラニス。そして一度見たら忘れられないビジュアルの悪役といえばこの人、『スパイダーマン』(2002年作品)のグリーンゴブリンで有名なウィリアム・デフォーが敵役レイヴェンを演じている。ちなみに今作の主人公コーディはカプコンの名作ゲーム『ファイナルファイト』の主人公の元ネタでもある。そしてこっちはあまり関係ないとは思うが、ウォルター・ヒルの監督デビュー作は1975年のチャールズ・ブロンソン主演作でタイトルが『ストリートファイター』なのも面白い。
出典:ストリート・オブ・ファイヤー (字幕版)

ストーリー

いつか、どこかの街で、若者に大人気の歌姫エレンが暴走族軍団“ボンバーズ”にさらわれてしまう。そんなとき、かつてこの街を去ったコーディが帰ってきた。かつて彼はエレンと愛し合っていたが、エレンは歌手としての道を選び二人の愛は終わったのだ。その為一度はエレンを見捨てようとするコーディだが、姉の強い願いとエレンのプロデューサーで今の恋人ビリーから1万ドルでエレン救出を依頼されたことから、酒場で出会った女で元軍人のマッコイと共にボンバーズの根城へと殴りこむ。救出には成功したがメンツをつぶされたボンバーズのリーダーレイヴェンはコーディに一対一の決闘を申し込む。一方再会を果たしたコーディとエレンの愛は再び燃え上がり、ボンバーズが来る前に二人で街からの逃亡を図るも、コーディはエレンをマッコイに任せ街に戻り、レイヴェンと最後の戦いに挑むのだった。

レビュー

80年代のアメリカでは古き良き50年代から60年代の懐古ブームが起きていた。映画でも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ぺギースーの結婚』では50年代、60年代にタイムスリップし、89年の『バットマン』も今作と似たようなどこかレトロなアメリカを描いていた。アメリカ人にとってその時代は第二次世界大戦に勝利し、ベトナム戦争が始まるまでのつかの間の平和と繁栄を謳歌し、誰もが明るい未来を信じることができた良き時代だったのだ。もっともそれは2000年代半ばに日本でも昭和30年代を懐古するブームが起こったときのように、記憶の良い部分だけを掻い摘んで漂白された“古き良き時代”だったわけだが。
そんな中で制作された今作の街並みのセットがレトロチックなのはもちろんのこと、そのほとんどが武骨で薄汚れて、建物も走る車もほとんど色が無いようにも見える、これではほとんどモノクロ映画でも差し支えない。そして随所に立ち籠める煙、蒸気。この映画が描く世界は50年代に流行したフィルムノワールの世界観そのものだ。その殆ど色の無い世界の中でエレンが歌うクラブハウスのネオンと主人公たちの乗る真っ赤なオープンカーがくっきりと浮かび上がり、観る者に誰がヒロインかだれがヒーローか? 無言で語りかけてくる。悪役も同様。薄汚れた灰色や黄土色の街を走る真っ黒なレザージャケットのバイカー集団は何物にも染まらない、目に入ったその瞬間からこいつらが悪役だと訴えかけるようだ。ストーリーも古典的な、悪党に襲われた街とヒロインを流れ者が救い出すという西部劇お決まりのパターンの舞台を近代的な街に置き換えたものだ。
この古典的な現代の寓話は当時のアメリカでは興行的な成功は収めることができなかったものの、日本においては大ヒットを記録した。

以前紹介した『コブラ』は80年代当時良かったかもしれないが今見るとカッコ悪いもの紹介したが、今作は同時代ながら今見ても文句なしにカッコイイ。当時としても古典的であったストーリーかもしれないが、それは同時に普遍的であるといえるのかもしれない。

関連記事:『コブラ』80年代ってカッコわ……うるせースタローンはかっこいいんだよ!

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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