- コラム
パシフィック・リム~怪獣を倒すなら巨大ロボで殴るしかない!~
2018/03/22
笹木恵一
すごいー! たーのしー!
2018/04/19
笹木恵一
巨大ロボが大怪獣軍団に立ち向かうという男の子の妄想を具現化して世界中の精神年齢小学生男子を大歓喜させた傑作映画『パシフィック・リム』の続編がついに日本上陸! 前作をはるかに上回るスケールで怪獣軍団の大逆襲にロボット軍団が立ち向かう!
前作のデルトロに代わり、主にドラマの脚本などで活躍中のスティーブン・S・デナイトが監督を務める。彼が過去に関わった作品は、『ヤングスーパーマン』、『デアデビル』、『トランスフォーマー』等、コミックやアニメ原作のものが多く、この手の映画においては信頼のおける監督といえるだろう。主演はスターウォーズの新作で主人公の一人を演じるジョン・ボイエガ。もう一人の主人公アマーラ役は、今作が初のメジャー作品デビューとなるケイリー・スピーニー。最近の怪獣映画ではすっかりお馴染みとなったジン・ティエンや、前作で主人公の一人を演じた菊地凛子も登場。また、千葉真一の息子、新田真剣佑も新人パイロット役で出演しているぞ! お父さんを譲りの強さを見せられるか!?
怪獣との戦いから10年。世界中が徐々に復興しつつあったが、一部の地域では治安が悪化し、犯罪を伴った経済活動がほとんど黙視されている状態が続いていた。かつての環太平洋防衛軍(PPDC)司令官ペントコストの息子ジェイクは優秀なイェーガーパイロットだったにもかかわらず、ある事件により軍籍をはく奪され、犯罪に手を染めて荒んだ暮らしをしていた。廃棄されたイェーガーのパーツを盗みに入った廃棄場で、盗品からイェーガーを自作していた少女アマーラと出会い、二人そろって警察に逮捕される。ジェイクにとっての義姉で先の戦争で英雄となった森マコの手配により二人は保釈される代わりにジェイクは教官として、アマーラは訓練生としてPPDCに入隊することとなる。だが時を同じくして中国のシャオ産業が、パイロット不要の量産型ドローンイェーガーの世界への配備を推し進めており、一部のパイロットからは不満の声が漏れる。シドニーでのドローンイェーガー採用の会議に向かうシャオ産業の女社長リーウェンの護衛の為ジェイクと彼のパートナーであり腐れ縁のネイサンはイェーガー:ジプシーアヴェンジャーで出動する。そこで彼らを待っていたのは海から現れる正体不明のイェーガーによる奇襲攻撃だった!
前作の公開直後から続編の製作を望む声が上がっていたが、大人の事情で制作が難航し、デルトロは『シェイプ・オブ・ウォーター』の製作の為に降板、スティーブン・S・デナイト監督の元遂に完成した今作。物語は前作よりスケールアップし、何よりクライマックスは怪獣映画のお家元日本を舞台に怪獣とロボットが画面狭しと暴れまわる。前作に多く寄せられていた意見として、主役以外のロボットの活躍ももっと見たかったというものが多かったが、今回はそれに応えるかのように、数多くのロボットが登場し、最終決戦では4体のロボットそれぞれの活躍を拝むことができる。また前作の戦闘シーンは夜間や海底など暗いものが殆どだったが、今作では日中の明るい場面が大半を占めており、よりヒロイックな印象を受ける。過去のアニメや映画作品へのオマージュもふんだんに盛り込まれており、あるシーンではまんま某有名アニメのわりとショッキングだったシーンを彷彿とさせる。登場怪獣も大幅にパワーアップし、特にラスボスの凄まじい「ああ、これは勝てない」感に圧巻。
監督はガンダム好きを公言しており、あるシーンに意外な形で登場しているので決して瞬きしないように!
さて、今回も存分に怪獣とロボットの迫力バトルを楽しませて貰ったわけだが、個人的には前作ほどの感動があったかといえば、そうでもないというのが正直なところ。いうなれば、前作はビールが好きで世界中のビールを飲み歩いた店主が完成させた究極のビールで、飲んでみるとこれがまた最高に美味いといった感じ。一方今作は同じ店に行ったら店主が休みで、代わりの店員が彼もまた世界中のビールを飲み歩いたビール好きで、とはいえ色々飲んでは見たけどやっぱりこれが一番だよねと言って出されたアサ●スーパード■イ、といった印象。十分に美味しいのだけどそれ以上でも以下でもない。前述した主人公以外のロボットやそのパイロットに関しても、今回の方が明らかに登場時間は多いものの、短い活躍しか描かれなかった前作のキャラクター程の強い印象は残らなかった。ある意味一作目の『パシフィック・リム』という作品はギレルモ・デルトロという強烈な個性と表現力を持った作家がなすものだったのだ。今作はその作家性が失われ、一般的なヒーロー映画になった印象だ。それは今作がつまらないという意味ではない。一本の映画としてはちゃんと面白くできている。本作には一作目との決別ともいえるシーンも存在しており、今後のシリーズ化においては一人だけの強い作家性は諸刃の剣ともいえるので、「脱・デルトロ」として成功しているといえるのではないだろうか。以降は様々な監督の手による『大人のロボットフィギュア遊び』が描き易くなったと言えよう。今後はまた新しい監督の強い作家性というものも観てみたいものだ。
幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。
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