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2018/01/29

菅野 直人

日本周辺の軍事的対立は朝鮮半島や尖閣以外にも!限定的ながら無視できない戦力を誇る台湾軍

ロシア、中国、北朝鮮、韓国それに在日米軍と強力な軍事力を内外に抱える日本ですが、それらに負けず劣らずの軍備を持ちつつ意外と話題になりにくいのが台湾軍です。中国とのバランスを取るため兵器の輸出などがアメリカにコントロールされていながらも、日本以上の「不沈空母」として東シナ海と南シナ海の境界線という重要な場所に存在し続けています。今回はその台湾の軍事力をご紹介。

F-16やミラージュ2000、国産戦闘機「経国」も配備する台湾空軍

待機中のF-CK-1A
By 王常松 Chang-Song Wang – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link

元々は国共内戦で中華人民共和国(現在多くの国が認める「本家中国」)が勝利する以前、中華民国(現在も存続する政府が台湾を統治する、「もと中国」)の軍隊がそのまま中華民国軍、通称台湾軍として存続しているわけですが、その中でも歴史が浅いのが台湾空軍。

国家の正式な軍隊とは言えない軍閥やら何やらがゴチャゴチャする中、正式な発足は1929年頃のようで、内戦や第1次上海事変など日本との戦争で実戦を経験、かの零戦が初陣を記録した相手も中華民国空軍です。

1949年12月に中華民国政府が台湾に仮移転してからも正式に国共内戦は集結しておらず、その後も1950年代まではしばしば中国空軍との航空戦を経験、さすがにその後は直接的な軍事衝突はほぼ皆無になったものの、高度な戦闘能力を維持しています。

現在保有しているのはアメリカ製のF-16A(複座型F-16B含め約145機)、フランス製のミラージュ2000-5(複座型含め約55機)、アメリカの援助を得た国産戦闘機F-CK-1経国”(約130機)の合計約330機の戦闘機が主力。その他、退役が進むアメリカ製戦闘機F-5E(複座型F-5Fを含む約30機)もあり、数字上は約350機を保有する航空自衛隊に負けていません。

ただし、台湾軍が安易に中国軍と戦闘状態に陥らないよう、あるいは中国を刺激しないようアメリカが武器輸出をコントロールしているため、攻撃任務に投入可能な戦闘機はその保有を制限されている状態で、いずれも現在の視点では1~3世代前の戦闘機。

電子装備の更新などで戦闘力を保とうとはしているものの見た目ほど強力な戦力では無く、中国の空軍や海軍航空隊に本気で殴り掛かられた場合は、相当な苦戦を強いられるのが必然です。

なお、台湾は日本の最西端、与那国島と非常に近いことから防空識別圏は隣接しており、航空自衛隊機と台湾空軍機が相互にスクランブルすることも時々あります。

かつては旧日本海軍艦艇も在籍、現在は旧米海軍艦艇が中心の台湾海軍

日本が太平洋戦争で敗北した時、残存していた日本海軍艦艇が戦勝国に賠償艦として引き渡されましたが、米英に渡された多くは資料的・軍事的価値が無いとして日本に払い下げられて資材として戦後復興の役に立ち。ソ連に引き渡されたものも、当時のソ連太平洋艦隊の基地、ウラジオストクの造修能力が貧弱だったこともあって、実際にはほとんど運用されずに終わりました。

唯一、旧日本海軍艦艇を再武装して有効活用したのが中国、現在の台湾海軍で、旧日本駆逐艦“雪風”を編入改名した“丹陽(ヤンヤン)”を旗艦として、アメリカ製の駆逐艦やフリゲート艦ともども戦力の中核としています。

現在は米海軍を退役したキッド級ミサイル駆逐艦を“基隆”級として4隻、同O・H・ペリー級ミサイルフリゲートを“成功”級として8隻+4隻を追加調達中、同ノックス級フリゲートを“濟陽”級として6隻(“成功”級の就役とともに退役が進むと思われる)。さらにフランスのラファイエット級を改良した新造フリゲート艦“康定”級6隻があり、これら24隻+沿岸用コルベット艦やミサイル艇などが主力です。

現在でも中国大陸への逆襲作戦が生きている……というより、台湾に近い澎湖諸島や、中国大陸福建省厦門(アモイ)市と目と鼻の先にある金門島を防衛するための揚陸艦艇も20隻程度が現役。

これらの中でもっとも強力なのは、イージスシステムこそ持たないものの、タイコンデロガ級イージス巡洋艦初期型のベースシップとして、それに近い戦闘力を持つ“基隆”級(旧キッド級)で、最新鋭の“康定”級(ラファイエット改級)とともに主力を為しています。

ただし、2000年代後半以降から始まった中国海軍の大増勢には全く対応できておらず、空母やイージス巡洋艦、イージス駆逐艦を続々と就役させている中、対抗する新戦力の予定が無い台湾海軍の戦力は時間がたつほど陳腐化しているのが現実です。

中でも潜水艦は近代潜水艦と言えるのが1980年代後半に就役した2隻の“海龍”級のみ、もう2隻に至っては1945~1946年に就役したアメリカ製第2次世界大戦型潜水艦を近代化改修した骨董品で、訓練用以外には使い物になりません。

大陸反攻能力を制限された台湾陸軍

総兵力27万人(うち予備役を覗くと13万人)、機甲部隊や対戦車ヘリ部隊、防空ミサイル部隊を正面装備とした台湾陸軍の現在の任務は中華民国統治領域の防衛と災害救助が主になっており、かつてのように大陸反攻まで考慮したものにはなっていません。

空軍や海軍同様、数はともかく最新兵器の導入はアメリカによって大きく制限され、例えば主力戦車はM60A3スーパー・パットンという2世代は前の古い戦車。さらに古いM48パットンの主砲や射撃式装置を換装、M60A3より強力な戦闘力を持たせたCM11 / CM12戦車はM60A3より数多く配備されています。
近代的な最新鋭戦車が増えてきた中国陸軍相手には、地形を活かして隠れつつ、換装された射撃式装置で有利な形の待ち伏せ戦法を対戦車ヘリや歩兵の対戦車ミサイルと連携で行う以上の能力は持ちません。

島嶼防衛部隊は持つものの、大規模な空挺部隊を持たないので、防衛戦力としてはともかく、攻撃戦力としては海空以上に限定的な能力しか持たないと言えるでしょう。

縮小傾向の台湾海軍陸戦隊(海兵隊)

中華民国が事実上、台湾とその周辺の島々に押し込められてからその防衛を主任務としているのが台湾海軍陸戦隊で、その名の通り海軍の指揮下にある地上戦闘部隊なものの、アメリカなどであれば「海兵隊」と呼ばれるべき戦力。

戦車や水陸両用装甲車、野砲などを保有し、揚陸艦による上陸戦闘力も持っているものの、人員わずか9,000人程度と能力は極度に制限されており、現実には海軍基地の防衛や島嶼防衛における増援としての能力しか持ちません。

そのため、同じく上陸戦能力を持つ陸軍と統合した方が効率的ではないかという意見も多いものの、現在のところはまだ「海軍独自の地上戦闘部隊」としてのポジションを守っています。

尖閣問題の第3極、行政院海岸巡防署

日本でいえば海上保安庁に相当する組織で、主任務も救難や取り締まりなど海上での警察活動がメイン。戦時には軍の指揮下に入るという点でも海上保安庁と同じ(ただし海保はあくまで防衛大臣の指揮下)ですが、これまた海保同様に巡防救難艦(海保の巡視船に相当)や巡防艇(同・巡視艇)の戦闘力は極めて限定的、あるいは皆無なことから、積極的な軍事作戦にはつきません。

1,800t級や2,000t級の大型艦や、ヘリコプター甲板さえ持つ3,000t級大型艦も保有しており、中華民国政府が台湾および周辺の広大な海域で警察力を行使しています。

日中の緊張が高まる尖閣諸島問題でも、「公式には全中国が自らの領土」である中華民国政府が領有を主張している関係で台湾の海岸巡防署艦艇が接近することもあり、海上保安庁の巡視船艇と「放水合戦」を行うことも。

ただし、中国海軍艦艇が尖閣諸島に接近する際には台湾軍なり海岸巡防署からの情報が日本に流されることもあるようで、尖閣への領土的野心はあくまで「ポーズ」という見方もあります。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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