- コラム
軍事学入門「行けたら行くわ」では困る!?予備自衛官の招集
2018/06/6
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2018/01/17
菅野 直人
「軍用戦闘車両」と言えば広く一般にイメージされるのは履帯(キャタピラ)で走る装甲車や戦車、自走砲のたぐいかと思いますが、実際には高速移動やメンテナンスの容易さ、コストの問題でタイヤで走る軍用車両も多いものです。自衛隊でも最近はコストパフォーマンスや機動性のためタイヤ走行の「装輪車両」が増えており、今回は代表的なものを5台紹介します。
By Hunini – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link
かつて自衛隊の戦車といえば対ソ戦でT-62やT-72に対抗するものとされ、演習の利便性や現実的に運用可能な地形などを考慮して、北海道にその多くが集中配備されていました。
もちろん本州以南にも1個師団ごとに戦車大隊が配備されてはいたものの、油圧アクティブサスペンションで傾斜地などでも車体の水平を保てる74式戦車をもってしても、「現実的に戦車を使える地形が少ない」とみなされていたため、実質移動トーチカのように使うしかありません。
しかし、時代は変わってソ連はロシアになり、北海道へロシアが積極的に攻めてくる理由は薄く、離島防衛や海外派遣など想定される戦場が多様化する中で自衛隊も多様な兵器を装備する必要が生じ、戦車の数を減らしてそれに対応しなければいけなくなります。
そうした環境の中、高速機動や空輸、海上輸送を容易にした迅速展開で数を減らしつつ有効な防衛力を整備する目的で開発されたのが、16式機動戦闘車です。
基本的には74式戦車同様の打撃力と10式戦車譲りのFCS(火器管制装置)を持ち、敵味方とも移動している状況でも照準・射撃が可能な走行間射撃能力を持った、105mm戦車砲装備の「装輪戦車」。
ただし空輸や海上輸送を容易にするための重量制限で走行防御は貧弱で、あくまで10式戦車が到着するまで普通科(歩兵)に火力支援を与えるための対戦車能力を持った自走砲、という性格の車両です。
車体後面の弾薬搬入用ハッチからの乗降が可能なため、弾薬を減らせば少人数なら装甲輸送車としての能力も持つほか、タイヤによる8輪駆動で、戦車のようにタンクトランスポーター(輸送車)に頼らず、高速道路を100km/hで自走可能など、高い運用柔軟性を持ちます。
105mm戦車砲による打撃力を除けば見た目ほど強力ではありませんが、タイヤを1つ2つ吹き飛ばされても走行可能で、かつ戦場まで高速で自走できるのは戦車に真似のできない芸当であり、道路網が整備されている場所ではむしろ戦車より有効性が高いかもしれません。
敵の戦車と正面切って戦い戦線を維持するというよりは、「まず駆けつけて有効な火力を提供するのが第一」という、新時代の戦闘車両です。
By JGSDF – 96式装輪装甲車, CC 表示 2.0, Link
16式機動戦闘車同様、「とにかく早く展開」を目的とした、過去の軍事思想とは異なる「即応機動連隊」に指定された部隊に配備、普通科部隊の迅速展開を行うのが96式装輪装甲車。
既にイラクへの海外派遣など実績があり、装甲強化やワイヤーカッターなどを追加した実戦向きの「国際貢献仕様」もあり、東日本大震災など災害派遣でもその機動性の高さがいかんなく発揮されています。
これも8輪装甲車で、16式機動戦闘車とともに公道を高速走行して戦場への迅速展開や空輸、海上輸送が容易なうえ、16式の26tに対し14.5tと重量も軽いため走行可能な道路も多いのが特徴。
武装が12.7mm重機関銃または40mm自動てき弾銃とさほど強力では無いものの、重武装の89式装甲戦闘車があまりに高価すぎて末期には年1~3両しか生産できずに2004年度で生産終了したため、73式装甲車の更新は最盛期31両、現在も年8両ペースで生産される本車で行われています。
まだ2013年度予算で開発が始まったばかりなので、2018年1月現在では実車は公開されていませんが、陸上自衛隊が装輪戦闘車の運用支援用に開発した「重装輪回収車」をベースに、99式自走155mm榴弾砲と同系列の砲を搭載する予定。
自走砲を持たない特科(砲兵)部隊に配備されていた155mm榴弾砲FH70の後継とされ、同砲がフォルクスワーゲン製のエンジンを搭載して舗装路なら低速で移動可能だったのを、トレーラーに搭載してさらに機動性を高めようというもの。
装甲こそ持たないものの8輪で十分な機動力を持ち、96式や16式同様の高速走行性能を持つため、即応機動連隊の火力支援中隊に配備されるものと見られています。
By Los688 – 投稿者自身による作品, CC0, Link
国産装輪戦闘車の元祖、82式指揮通信車をベースに戦闘能力を与え、主にオートバイを装備する偵察隊に火力支援を与える目的で開発されたのが、87式偵察警戒車。
陸上自衛隊の車両としては唯一の25mm機関砲を持ち、同じ砲を持つ米軍のM2装甲戦闘車などとの弾薬互換性はあるものの、陸上自衛隊の89式装甲戦闘車や87式自走高射機関砲が持つ35mm機関砲ではないため、自衛隊内での弾薬互換性が無いのがネックです。
古くからの偵察隊用装輪戦闘車として高い機動力を持ち、高速道路での目撃例も多い同車ですが、25mm機関砲1門および同軸の7.62mm機関銃だけでは敵に長射程兵器や戦車が出てきた時に威力不足。
そのため、即応機動連隊以外では16式機動戦闘車を偵察隊に配備した上で偵察大隊に改変、限定的な応戦も含む威力偵察にまで対応した偵察部隊へと変わりつつあります。
後継として「近接戦闘車」の計画が進んだものの、具体的な開発にまで至っておらず、しばらくはこの87式が使われる予定です。
厳密には「戦闘車両」とは言えない「自走発射機」ですが、11式短距離地対空誘導弾(11短SAM)も戦場に同行して防空を行う機動兵器。
第15旅団など即応機動連隊の編入された部隊の高射特科連隊や高射特科大隊に優先配備されるほか、即応機動連隊の高射小隊にも配備されるものと思われます。
3 1/2tトラック2台にそれぞれ発射機と射撃管制装置が搭載されますが、航空自衛隊の基地防空隊では発射機を高機動車に搭載しているほどコンパクトで、即応機動連隊でもこのタイプの採用が進むかもしれません。
誘導方式は旧来の81式短距離地対空誘導弾が赤外線およびアクティブレーダーホーミングの併用だったのに対し、11式ではアクティブレーダーホーミングのみとなり、低空を飛来する航空機や巡航ミサイルへの対処能力を高めています。
採用初年度以降、年間1~3セット程度の調達にとどまっているため、87式からの更新にはまだ時間がかかる上に、今後は陸上自衛隊でイージス・アショアを担当するようになるため、即応機動連隊以外への配備はさらに遅れるか、その後継を待つしかないかもしれません。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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