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2017/11/18

菅野 直人

軍事学入門「選挙結果が軍事に与える影響」~2017年衆議院選挙が与えた軍事的影響~


第48回衆議院選挙の投票が2017年10月22日に行われましたが、投票に行かれた皆さんは、自分の想いが通じた結果になったでしょうか? もっとも、開票結果のみで国の行く末が決まるわけでは無いので、今後の政治も注視していきましょう。さて、今回はその「選挙が軍事に与える影響」についてのお話です。

選挙と軍事に関係はあるのか? そもそも軍事と政治の関係は?


選挙の時期になると、インターネットでは普段にも増して選挙や政治に関しての話題が盛んになり、中には全然関係無い場所で政治演説を始めてしまう人も。そのターゲットになりやすいのが軍事関係で、特に近年は日本周辺で大小の軍事的緊張が続いていることから、それに政治の話を絡めて考えたがる人が多いものです。

では、軍事はどれくらい政治に影響があるのでしょう?

これはその国の政治形態によりけりであって、例えば軍事政権の国ならば軍事=政治と言っても良く、何か不満があるたび軍隊がクーデターを起こして政権に就こうとする国もありますが、日本はそうではありません。

日本の場合はシビリアン・コントロール、つまり軍事力が完全に政治の下にあり、予算の決定や、正当防衛を除く力の行使は政治決定無しにはありえないのです。

その意味で、日本の場合は「政治が軍事に影響することはあっても、軍事が政治に影響を与えることは無い」と断言できます。

「軍事が政治に影響を与えている」の勘違い


「そうは言っても、現実に他国の軍事力が政治に影響を与えているじゃないか!」
そういう意見もあり、現実に2017年10月の衆議院選挙では北朝鮮の軍事的脅威が高まる中でそれも争点の1つ。

そもそも選挙の前提となる衆議院解散自体が、北朝鮮有事で身動きの取れない可能性を考慮して早期に行われた、と観測する向きもあります。

では、それをもって「軍事が政治に影響を与えた」とするのは早計で、内戦ばかりやっている国でも無い限り、軍事力とは「国際政治の手段の一環」であり、駆け引きのため利用されているにすぎず、逆に言えば「他の手段で解決すれば何もしない」わけです。

皆さんは、北朝鮮が最高指導者、金 正恩(キム・ジョンウン)氏の政治的決断抜きにミサイル開発や発射実験、あるいはその先の事態を発生させると思っていますか?もちろん不幸な事故や突然の政変でもなければありえない話で、軍事独裁国家のように見える北朝鮮ですらそうですから、他の国でも「軍事の影響で政治が決まる」のではなく、「政治の影響で軍事が決まる」のが通常の状態です。

もし軍事が政治に影響を与えるとすれば、実際に弾が飛び交う戦争に発展してからの話になるでしょう。

2017年衆議院選挙は軍事に影響を与えるか?(1)憲法問題


さて、そのような前提で2017年10月の衆議院選挙の結果を振り返りますと、軍事に関係ある内容では「自衛隊の存在を容認する憲法改正」、そして北朝鮮の脅威を訴えた保守勢力の与党(自民党と公明党)が勝利しました。
北朝鮮問題に関しては次の項で述べるとして、まずは自衛隊と憲法問題です。

よく話題にのぼる日本国憲法第九条は、要約すれば以下の3要素で構成されています。

・戦争の放棄

(九条第1項「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」)

・戦力の不保持

(同第2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」)

・交戦権の否認

(同「国の交戦権は、これを認めない。」)

これを単純に解釈すれば「戦争しないし軍隊もいらない」ですが、「そもそも戦争とは? 戦力とは? 交戦権とは何か?」と考えれば、いかようにも解釈できます。
例えば「攻撃から守ってはダメとは言っていない、守るのはむしろ国の義務、守るのは自衛行動であって交戦では無い。」といった具合です。

問題は「どちらが正しいか」ではなく、「どちらとも解釈できてしまう」ことですが、今となってはどこの政党でも「自衛隊を無くそう」という非現実的な話はしていません。

与党は「自衛隊の存在を否定する余地が無いよう改正しよう」という立場、野党の憲法反対派は「新しく過激な解釈でバランスが崩れるかもしれないから、今のままでいい。」という立場だと思えば、わかりやすいかもしれません。そして今回、憲法改正に積極的な自民党と、少なくとも否定はしない公明党が勝利したことで、国会での憲法改正手続きは大きく前進しました。

ただし、それで決まるのは「憲法改正のための国民投票を行う」だけで、次は国民が改正を選択し、天皇により公布されないと憲法は改正されません。

しかも与党の中でもさまざまな思惑があり、軍事的に何が変わるかどうかは、今後も政治次第です。現状では「国会で与党が強気になる根拠を得た」程度で、後の国民投票を考えれば「憲法を変えても戦争になるわけじゃないよ?」とソフトに印象付けるのが肝心なところでしょう。

2017年衆議院選挙は軍事に影響を与えるか?(2)北朝鮮その他、軍事的に緊張した国際情勢への影響


最後に軍事的に緊張した国際情勢への影響ですが、2016年の参議院選挙、2017年の衆議院選挙と自民党と公明党が続けて勝利したことで、「国会の両院で意見が統一できず、決まるものも決まらない」という最悪の事態は回避されました。

ただし、国際問題に関しては相手もあり、選挙だけでは何も変わりませんが、防衛のみにせよ、ある程度攻撃も可能にするにせよ、防衛力強化のための予算は通りやすいでしょう。相手国にとっても「誰を相手に交渉したらいいか」が定まり、戦争への発展から緊張緩和まで、何か起きた時の対処はしやすくなったと言えます。

もちろん有権者の多くは「戦争は困るけど、まずは目先の生活」が最も重要ですから、「今はヘタに革新的なことを言い出す与党が誕生するより、多少愚策でもいいから安定した勢力に与党でいてほしい。」という国民の本音が反映した選挙だった、ということでしょう。
そういう意味では、国民は生活さえ何とかなるなら少なくとも今は軍事力(自衛隊)を否定しない、ということです。

そうした日本の雰囲気に、アメリカは間接的に支持を得たと解釈するでしょうし、中国やロシアも当面は自分たちへの政策は激変しない、と分析すると思われます。
これら超大国以外だと、北朝鮮は軍事的にも経済・外交的にも自分たちに厳しい勢力の基盤がより強化されたことを念頭に置くと思われますが、これも大きく変わりません。

問題は政治的安定を失っている韓国で、経済制裁下の北朝鮮に「人道的援助」を始めたかと思えば、日本と領有権問題を抱えた竹島の防衛強化に乗り出すなど、誰が敵で味方か決めかねているように見えます。

2017年10月の衆議院選挙の結果、日本でもっとも強硬で保守的な勢力が基盤を強化したため、「朝鮮戦争の再開(現状は休戦)」の可能性が高まり「戦後」まで見据えることになった韓国は、日本との軍事的緊張を現状より高める唯一の国かもしれません。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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