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2017/09/4

菅野 直人

大富豪の道楽から衛星打ち上げ母機まで!巨人輸送機BEST5

戦略爆撃機の巨人機化が一息つくと、続く巨人機は輸送機から生まれるようになりました。ある程度数を揃える必要があるため格納庫や、飛行場の設備などを考えると巨大化が限られる爆撃機と違い、特殊用途の一品モノも多い巨人輸送機は、また爆撃機と違った迫力が!

ミャスィーシチェフVM-T(ロシア)

小型機外貨物ポッド搭載状態のVM-T(2005年 ジュコーフスキー飛行場での撮影)
By Dmitry Pichugin – http://www.airliners.net/photo/Atlant/Myasishchev-VM-T-Atlant/0920727/&sid=f0f38682c1c65528451e54660cec6c62, GFDL 1.2, Link

元々は旧ソ連時代のスペースシャトル「ブラン」やその打ち上げ用ロケット「エネルギア」運搬用に開発された特殊輸送機

「要は重くてデカイものを積んで飛べればいいんでしょ?」とばかりにカーゴスペースは100%機外、それも自身よりはるかに巨大な積載物を背負うという特異な飛行機で、一目見て無事に飛べるのか不安に思うレベル。

実際、用途があまりに限られるためかブランやエネルギアの運搬用には後述のライバル「ムリーヤ」が使われることになりますが、VM-Tそのものも確かにいろいろ積めるのは確かなので、今でも大型・重量物輸送に使われています

ただ、その形状通りに非常に操縦が難しいらしく、ベースとなったM-4爆撃機から操縦系統を大幅に改良しても操縦性は劣悪だそうで、誰でも飛ばせる飛行機というわけではなさそうです。

エアバス・ベルーガ(ヨーロッパ)

A300-600ST、2013年5月トゥールーズにて。
By Laurent ERRERA from L’Union, France – Airbus A300-600ST Airbus Industries (AIB) “Join us” Beluga 3 F-GSTC – MSN 765, CC 表示-継承 2.0, Link

世界中で作られた部品を最終的な組み立て工場で輸送するための大型特殊輸送機
これもベースはエアバスA300-600R旅客機がベースなのでVM-T同様機体そのものが巨大というわけではありませんが、カーゴスペースそのものが非常に巨大なのが特徴です。

かつてはボーイングの旧式輸送機を改造した「スーパーグッピー」が使われていましたが、旧式化により1995年からこのベルーガを後継にしています。

基本的にはエアバス機の胴体部分など大型部品を丸々輸送していますが、チャーターにより他の貨物を輸送することも可能で、大型絵画を輸送するため成田空港に飛来したことも。直径の大きい部品の輸送に適しているため、人工衛星や宇宙ステーションのモジュールなどを運ぶこともよくあります。

なお、エアバスのライバル、ボーイングも同種の機体として747の胴体を太らせたボーイング747-400LCF型を運用中。

ヒューズH-4ハーキュリーズ(アメリカ)

H-4 Hercules 2.jpg
By image http://www.alaska.faa.gov/fai/afss/AcftPhoto-List.htm
https://www.flickr.com/photos/49487266@N07/7881222436, パブリック・ドメイン, Link

第2次世界大戦中、いくら輸送船を作ってもドイツのUボートに沈められるので、巨大な飛行艇を自身の造船所で大量に建造し大西洋を横断して一気に大量の物資をイギリスに運ぼうと、カイザー造船所の社主ヘンリー・カイザーが夢想した巨人飛行艇。

日本で言うとアメリカまで高高度を高速で20tの爆弾落としに行こうという「Z飛行機」(後の「富嶽」の原案)を夢想した中島知久平を思い浮かべますが、カイザー氏の提案はもうちょっと真面目。

ただし、カイザー造船所に航空機開発能力は無かったため、半ば趣味で自分の作りたい飛行機を作っていた大富豪ハワード・ヒューズのヒューズ・エアクラフトに設計は委託され、何となく関わりたくない軍からは協力を拒否。

軍では無く「国防工場公社」なる外郭組織からの発注だったり、金属はもったいないから工場建屋も含め木製で作れと言われ、そのうち戦況が好転すると必要性は薄れて言い出しっぺのカイザー氏もやる気がなくなり。

その中で「面白そうだしこんな飛行機自分しか作らないだろう」と思ったのか、ただひとりやる気マンマンだったヒューズ氏によって、1947年11月、ついに完成してしまいました。

同月2日、ついにヒューズ氏自らの手で「初飛行」に成功しますが、後にも先にも飛んだのはこれっきり。初飛行で生じた不具合などを修復した後は単なる巨大な置物と化し、2001年からはエバーグリーン航空博物館で展示されています。「世界航空史上最大の無駄」といえば、このハーキュリーズこそ最有力かも?

アントノフAn-225ムリーヤ(ロシア)

ブランを積載したAn-225
By Ralf Manteufel – http://www.airliners.net/photo/Untitled-(Antonov-Design/Antonov-An-225-Mriya/1240864/L/, GFDL 1.2, Link

前述のVM-Tと同じ計画で作られた世界最大の輸送機で、それ以前に世界最大の輸送機だったAn-124ルスランをベースにエンジンを4基から6基に増加、垂直尾翼も1枚から、背中にスペースシャトル「ブラン」を運搬できるよう左右2枚に変更

VM-Tと異なり胴体に巨大なカーゴスペースを持つため、公式には250tまで、無理をすれば300t以上の貨物を一度に運べます

一応主翼の翌幅だけなら前述のH-4の方が大きいのですが、マトモに飛んだのがAn-225のスゴイところで、最大離陸重量500t以上のジェット陸上機の記録は全てこのAn-225が持っており、これを上回る巨人機はなかなか出ないでしょう

ソ連崩壊もあって製造されたのはたった1機のみですが、日本にも東日本大震災の救援物資輸送などで飛来したことがあり、世界中を元気に飛び回っています

未完成の2号機があり、メーカーのアントノフはウクライナにあってこれ以上ムリーヤを作る気も無いようで、最近では中国の注文で2号機を完成させるか、あるいは製造権を売って中国で新造する計画もあると言われているようです。

ストラトローンチRoC(アメリカ)

Stratolaunch comparison.svg
By Giant_planes_comparison.svg: Clem Tillier (clem AT tillier.net)
White_Knight_Two_planform.png: Mwarren us
derivative work: Mwarren us (talk) – White_Knight_Two_planform.png
Giant_planes_comparison.svg, CC 表示-継承 3.0, Link

ロックと他の巨大航空機の翼幅の比較
 
航空機から低コストで人工衛星を打ち上げる計画のため開発された、空中発射型衛星打ち上げロケット母機が「Roc(ロック)」で、2017年5月31日に初公開されたばかりの新品ホヤホヤ。

2機のスマートな旅客機を左右の主翼で結合したような形状をしており、その中間にロケット「サンダーボルト」を吊り下げます。大重量打ち上げのため強力な6基のジェットエンジンを装備し、4.5トンの人工衛星を低軌道(高度2,000km)に打ち上げる能力があるとされており、早ければ2019年に最初の打ち上げ実験が行われる予定です。

なお、全長はそれほど長くありませんが、その特異な機体形状から主翼幅はヒューズH-4さえ抜き、「世界でもっとも幅の広い飛行機」となりました。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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