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2017/08/19

菅野 直人

これだけ覚えれば戦車はバッチリ撃破? 対戦車弾頭5選

敵戦車現る! 対戦車戦闘用意! テッ! バカモーンそれは榴弾だァー!… というわけで、戦場に戦車が登場してからというものの、それなりの装甲を持った戦車を撃破しようと思えばよほどの大口径砲を直撃させない限り、専用の対戦車砲弾が必要になりました。

今回はそんな砲弾で主なもの+オマケで1つ、計5種類を紹介します。

徹甲弾(AP)


アーマーピエシング弾、略してAPとも言いますが、日本語だと徹甲弾というのが一般的で、戦車に限らず装甲車両やトーチカなど、とにかく硬いものを貫通するにはこれが基本。

弾の芯まで鋼鉄から劣化ウランまで硬い金属を詰め、ひたすら貫徹力に特化したものから、貫徹後に中の炸薬が爆発して被害を拡大するものまであり、対戦車用だと前者がメインです。

純粋に砲弾や弾丸自体の硬さと、その質量、大小の砲から与えられた発射時、そして着弾時の運動エネルギーが貫徹力の全てですが、例えば装甲板に対して斜めに命中してしまった場合には滑って弾かれやすいなどの欠点があります。

それに対処するにはひたすら硬さと運動エネルギーを増大させ、なるべく大きな砲で撃ち出す必要がありますが、それでは戦車砲や対戦車砲が際限無く大きくなりますし、それ以外の砲ではよほど弱点を狙わない限り対抗できません。

何より誘導装置や燃料のため弾の硬さは限られ、速度も砲弾に及ばない誘導ミサイルではどう頑張っても徹甲弾では貫徹力が不足します。そこで、徹甲弾以外の砲弾が登場するわけです。

成形炸薬弾(HEAT弾)

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By 100yen投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

徹甲弾が砲弾や弾丸の硬度や質量、そして最終的にはその速度に依存した「運動エネルギー弾」なのに対し、弾頭が炸裂した際の化学効果を利用して装甲を貫徹する「化学エネルギー弾」の一種が、この成形炸薬弾またはHEAT弾を呼ばれるものです。

その名の通り炸薬を整形して命中炸裂する部分を凹ませてあり、そこに金属板を貼り付けてあります。

命中すると爆発エネルギーで崩壊して溶けた金属板がメタルジェットとして一点集中するモンロー/ノイマン効果を活かし、メタルジェットの圧力で装甲を貫くのです。

理論上、命中さえすれば砲弾である必要すらなく、速度の遅いミサイルや地雷でも同じ効果を発揮し、弾頭が大きいほど装甲貫徹力は高くなります。もちろん、射程が短い兵器は近づく必要があり攻撃側のリスクは非常に高くなりますが、対戦車ライフルや手榴弾、火炎瓶、あるいは自爆用の布団爆雷しか対抗手段の無かった歩兵にとってはもっとも有効な攻撃手段です。

欠点としては、単純に装甲貫徹に特化しているため「装甲に穴を開ける」という以上の効果が薄く、メタルジェットのほとんどは装甲貫徹のみで威力を失うため、貫徹した先に可燃物や爆発物が無い限り、戦車を爆発炎上させるほどの効果はありません。

また、装甲を二重にして内側の装甲までメタルジェットを届かなくなるようにしたり、命中と同時に外側に爆発して弾頭を吹き飛ばす爆発反応装甲など、防御側の対策も容易なため、万能とは言えないのも確かです。

粘着榴弾(HESH)

105mm HEP typeB.JPG
By 100yen投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

装甲を貫徹するのではなく、破壊する効果を狙ったのが粘着榴弾、HESH弾です。

もともと、運動エネルギーが不足している戦車砲や対戦車砲の場合、徹甲弾ではなく命中と同時に炸裂する榴弾を一点に集中射撃すれば、爆発エネルギーでその装甲を叩き割ることが可能なのは知られていました。

そこで、その効果をより高めるため弾頭が命中と同時に装甲表面で潰れてから炸裂、その時に生じた衝撃波で装甲を内側から剥離させ、内部に飛び散らせる効果を狙いました。

成形炸薬弾よりも内部に与えるダメージが大きく、榴弾ほどではありませんが命中爆発した周囲へのダメージも期待できるのが特徴です。ある程度の射程と威力のある戦車砲や対戦車砲、無反動砲で使われることが多く、今でも一部の戦車では使っています。

装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)

Obus 501556 fh000022.jpg
By David Monniaux投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

HEAT弾やHESH弾の登場で、徹甲弾の運動エネルギーに頼る戦車砲の価値が低下した時期もありましたが、前述のように対策が練られるようになると「やはり運動エネルギー弾が最強」ということになり、装甲貫徹に特化した新型徹甲弾が生まれます。その究極系が装弾筒付翼安定徹甲弾、APFSDSです。

弾体そのものは中心にある羽根のついたロケット弾のようなもので、周りにある筒状のものは戦車砲から発射する時の爆圧を受け止めるだけ、砲口を出た後は分離して弾体だけが目標に向かいます。

弾体の芯は非常に硬いタングステン合金などが使われているため、命中と同時に高圧で装甲と共に先端が流体化し、そのまま装甲にめり込んでいって貫通し、内部で跳ね回って大きな損害を与えるのです。

HEAT弾と違って貫通後に与える被害が大きく、粘着榴弾のように遠距離の目標にも使えてなおかつ高い貫徹力を誇るため、現代の戦車の対戦車砲弾はほとんどこのタイプになっています。

ゲルリッヒ砲弾(口径漸減弾)

最後はちょっとオマケですが、ゲルリッヒ砲という特殊な対戦車砲です。普通はどんな砲でも弾を込める砲尾から先端の砲口まで内径は同じですが、ゲルリッヒ砲の場合は砲口に向かって内径が小さくなっていき、砲弾に発射時の爆圧を最大限与えることができるというもの。

砲弾も外周に軟鋼などを巻いた柔らかいもので、矢じりのように変形しながら通常の方より高初速、つまり大きな運動エネルギーを得られます。

これにより小口径の対戦車砲でも重装甲の戦車を撃破できますが、欠点として砲身の摩耗も激しいので頻繁な交換が必要なことがあり、第2次世界大戦でドイツやイギリスが使って以降は、新型砲弾の開発によってゲルリッヒ砲の必要性が無くなりました。

実際にドイツ軍が28mmゲルリッヒ砲で重装甲のスターリン重戦車を撃破した例もありますが、今となっては新規に開発されることは無いでしょう。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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