- コラム
駄作ビックリ兵器「空母がデカイので大きくてもいいと思いましたッ! 幻の九三式艦上攻撃機」
2017/09/22
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2017/06/24
菅野 直人
南洋の珊瑚礁に囲まれた環礁内に設けられた米艦隊の根拠地。厳重な警戒網に守られて安心しきっているところに、警戒の薄い珊瑚礁に迫る黒い小さな影。それは珊瑚礁を自力で乗り越えると、環礁内の米艦隊に向けて、必殺の魚雷を放つのであった……攻撃方法がどうこうというより、使用する兵器が駄作ではそんなのうまくいくわけない!というのが、今回ご紹介する特四式内火艇です。
By Imperial Japanese Navy – http://forum.valka.cz/viewtopic.php/t/39264/start/-1, パブリック・ドメイン, Link
特四式内火艇の開発開始時期はハッキリしませんが、輸送作戦に使われた大発(大発動艇。小型の揚陸 / 雑用艇)がその任務中に被害を受けたり、せっかく物資を揚陸しても波打ち際で攻撃されて喪失することが多かったという戦訓を経ていますから、ガダルカナル戦以降でしょう。
1942年8月から1943年2月のガダルカナル島を巡る戦いにおいて、日本軍は同島から米軍を叩き出して奪回すべく多数の兵力を送り込みますが、それを維持する兵站輸送に失敗し、島の略称(ガ島)から「餓島」と呼ばれる大惨事になりました。
もちろん幾度となく物資は送り、海岸まで無事揚陸することに成功したこともありましたが、海岸から内陸に引き込むのに間に合わず、夜間見つからないよう揚陸しても、日が昇れば空襲や艦砲射撃で物資を破壊されてしまうのです。
そうして島内の部隊が飢えれば揚陸物資を島内に運ぶ人手も減り、海岸から運べず破壊される物資が増える悪循環で、犠牲が大きい割には実りの少ない作業でした。
そこで考えられたのが、海岸まで水上を自航した後はそのまま海岸に乗り上げてキャタピラで自走してジャングルの中まで進むことが可能な、水陸両用車!
これだけ聞くと、かなりまっとうな計画に見えます。
しかし結局実車は製作されず、設計図は金庫にお蔵入りとなったのですが、思わぬところで日の目をみることになりました。
By Imperial Japanese Navy – http://www.societyofgentlemengamers.org/viewtopic.php?f=28&t=7344, パブリック・ドメイン, Link
魚雷を搭載した車輌
その頃、敵の泊地に設けられた防潜網をかわして魚雷で敵艦を攻撃する奇襲作戦を考えていた人がいました。
防潜網とはその名の通り、潜水艦や魚雷を防ぐために張られた網で、あまり張り巡らしても船が通行できませんから穴はありましたが、そこは当然のごとく厳重な警戒が行われています。
しかし、逆に防潜網の側は警戒が薄いので、ひとたびその中に入り込めば攻撃は可能なのではないか?
そこで目を付けられたのが設計図だけは作られていた特四式内火艇です。
4tの貨物が積載可能なことから、45cm魚雷2本を搭載して珊瑚礁を乗り越え、防潜網の内側から攻撃可能な奇襲兵器として、急遽試作されることになりました。
試作車を動かしてみたところ水陸両用性能は確認され魚雷も発射できたので、これはイケるぞぉ!と極秘で部隊編成まで行われ、「竜巻作戦」と名付けられた奇襲攻撃は、本当に実施される一歩手前までいったのです。
ところが、その輸送方法に問題がありました。
水上航送が可能といってもわずか4ノット(8km/h程度)。
大発も荷物を満載すれば同程度とはいえ、必要とあらば燃料の続く限り広い海を押し渡る大発と違い、「その気になれば水上航送も可能」な水陸両用車に過ぎない特四式内火艇にはそれほど航洋性能は無く、海岸近くまでは何かで運ぶ必要があったのです。
そこで選ばれたのは潜水艦で、目的地近くの海上で浮上した潜水艦からただちに発進、すぐ潜航した潜水艦を尻目に、海岸に向かって一直線…ということを考えていました。
しかし、実際には潜水艦からの発進に20分ほどを要し、レーダーで見張られ、敵の魚雷艇や夜間戦闘機がいつ出没するかわからないような海上で、潜水艦はずっと浮上していなくてはなりません。
おまけに車体から伸びたプロペラシャフトのパッキンから油漏れをするので潜航中も油膜を発見される恐れはありますし、潜水艦の立場からすれば「そんなもの載せたら命がいくつあっても足りない」という代物でした。
輸送艦や駆逐艦から発進するならともかく、そもそも潜水艦での輸送に向いていなかったのです。
しかも、どうにか運んだところでそこから先も大問題でした。
何しろ動力系は水陸両用戦車の特二式内火艇から流用しているので、空冷ディーゼルの爆音が響き渡り、とてもではありませんが隠密作戦には使えません。
しかも、普通の海岸ならともかくゴツゴツしたリーフを走らせると簡単にキャタピラが切れて走行不能になってしまいます。
元々の計画である水陸両用輸送車としてならば、それほど問題にならなかったかもしれませんが…
「ただウルサイだけで何の役にも立たない、責任者出てこい!」
となりそうなものですが、特四式内火艇での奇襲攻撃を提案した人物は特に責任を問われず、後に人間魚雷「回天」で泊地攻撃を行う作戦を指導しています。
なお、竜巻作戦そのものは完全に中止になったわけではなく「延期」だったそうですが、特四式内火艇がどうなったのか、終戦時まであったのかどうかはわかりません。
宮崎県の崎田海軍基地に「特四襲撃隊」という部隊が本土決戦に備えていたという記録もあるので、これが竜巻作戦のなれの果てだったのかも?
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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