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2017/04/3

菅野 直人

総員『ドン』と言え!~軍事の珍命令・珍号令~

戦場での緊迫した命令など、緊張感漂うイメージのある軍隊の命令や号令ですが、時々珍妙な命令が発せられることもあります。今回はその一部をご紹介。

スコールを発見して「ワレ舵故障」

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まだ太平洋戦争前のノンビリした時代ですが、艦隊に随伴する駆逐艦が突然「ワレ舵故障」と信号を発しながら、戦列を離れることがありました。

戦艦などの大型艦ならばともかく、小型艦では風呂など満足になく、真水も貴重なので水浴びも思うにまかせないような環境。

それは駆逐艦などでは艦長以下同じでしたし、小さな所帯ですから規律も緩やか。
そこで、スコールなどを見つけると、「艦隊のオエライさんはともかく、こっちは水浴びくらいしたいんだよ!」とばかりにそこに飛び込んでいったわけです。

凄まじいスコールの中ではもちろん「手空き乗員上甲板」で、たっぷり水浴びや洗濯を堪能した後で、舵機復帰?により艦隊に戻ったのでした。

キンタマニギレ

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1943年11月に、ソロモン諸島ブーゲンビル島に侵攻した米軍を襲撃すべく出撃した日本艦隊は、米第39任務部隊を発見して「ブーゲンビル島沖海戦」が発生。

この時、砲撃準備を整えて緊張の走る重巡洋艦「妙高」の砲術長から、各砲塔に珍命令が出ました。
「キンタマニギレ」

各砲員は股間に手を伸ばして「ダラーンとしております」とニヤニヤ。

この珍命令、この時が初めてというわけではなく、日清戦争の頃には既にあったと言われていますが、海軍だけではなく陸軍などでも戦闘前の緊張で睾丸が縮み上がっていないか確かめていたようです。

と言っても、それで何か支障があるかというより、緊張をほぐすためという目的の方がメイン。
たまに「タマがありません」とうろたえる兵士もいたそうで、それがまた戦闘開始前のひと笑いになりました。

チンタツ・サセコイ

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ついでに似たような話をひとつ。
ある新婚の海軍士官から、KA(妻)にある電報が届きました。
「チンタツサセコイ」

それを読んで、あらあら大変と思ったのか「チンムリニタタスナ スグサセユク」と返電したとか、それを聞いた妻の両親がカンカンに怒ったとかいろいろなバージョンが伝えられています。

もちろん、新妻と離れて欲求不満に陥った若手士官が…という話ではなく、電報の正確な内容は以下。

「鎮海警備府(チンカイ。朝鮮半島にあった根拠地)を出発するので、佐世保まで来なさい。」

しかし、軍隊というところは言葉を惜しむもので、とにかく何でも略します。

「潜水艦艦長」を「セカ」と略するような感覚の海軍用語で電報を打たれた妻は見事に勘違い…というお話でした。

総員、ドンと言え!

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太平洋戦争開戦後、南方へは大勢の陸兵を載せた輸送船がひっきりなしに南下していました。
そこで潜水艦はもちろん空襲も怖いというわけで、いざという時の退避や下船などの訓練も行っていましたが、当然防空演習も行われます。

しかし、空から降ってくる飛行機に対して、歩兵部隊が装備している小銃や軽機関銃のような豆鉄砲では心もとありません。

一応、船舶工兵(日本陸軍の水上担当兵種)が高射砲や高射機関砲を準備していましたが、そんなものが無い船も多いですし、あっても乗船部隊がただ逃げるというのも難です。

そこで、防空演習で集合した兵士に対して、指揮官が空を指差し、こう叫びました。
「総員、“ドン”と言え!」

ドン、あドン、というわけで、竹槍でB29を落とせと言われた本土空襲と同様、要するに気合を入れろという話なわけですが、何もしていないよりはマシだったのでしょうか。

まとめ

「チンタツ・サセコイ」は命令ではないので少し余談でしたが、一見融通やユーモアの効かなそうな軍隊でも、時々茶目っ気のある命令が出る時もあります。

基本的に上下関係が厳しく不条理な組織、そこで極限状態に置かれて精神的に辛い状況だからこそ、こうしたちょっとしたユーモアで救われることがあるのかもしれませんね。

企業にお勤めで部下を持っている方などにも、参考になることがあるのではないでしょうか?

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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