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2017/03/20

菅野 直人

民間版エリア88? 旧世代機好きにはたまらないATACとドラケン・インターナショナル

国籍や経歴もさまざまな傭兵が、最新鋭機から旧式レシプロ練習機までそれぞれの得意な機体を駆使して戦う寄せ集め空軍部隊の活躍を描いた飛行機漫画の傑作「エリア88」(新谷かおる作)。それを思わせる航空集団として今話題になっているが、軍の飛行訓練支援を請け負う民間航空会社、ATACやドラケン・インターナショナルです。

訓練支援を行う仮想敵

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かつて映画「トップガン」で有名になり、さらに航空自衛隊にも「飛行教導団」という凄腕中の凄腕が集まることでも知られる仮想敵部隊

多くは「アグレッサー部隊」、米海軍では「アドバーザリー部隊」とも言われるこれらの部隊では、主に想定される敵(仮想敵国)が使用する戦闘機などに近い飛行特性を持つ飛行機を運用し、その戦術までを真似ることで、コンピューターシミュレーションではできない「生の実戦」を体験させます。

昔から友軍戦闘機同士の模擬戦や、捕獲・整備した敵機を使った模擬戦は行われていましたが、一時期「ミサイルで撃ち落とすので、過去のような空戦は不要」というミサイル万能論が台頭して、空戦技術が低下した時代がありました。

それが表面化したのがベトナム戦争で、「実戦ではいつでも好きなようにミサイルを撃っていいわけではないし、近距離でミサイルを撃つために空戦起動訓練は必要」という結論に至ります。

要するに、当時の交戦規則では視認して敵機と確認してからでないと攻撃できず、そうなるとクルクルと軽快に旋回しては機関砲を撃ちかけてくる北ベトナム空軍のMig17やMig19、後にはMig21に対して、アメリカ軍の戦闘機は少々分が悪かったのです。

そうしてMig17役にA-4スカイホーク、Mig21役にF-5タイガーIIやノースロップT-38タロンが使用され、搭乗するベテランパイロットが「敵機」との空中戦で同じ米軍の戦闘機をキリキリ舞いさせてきたのでした。

今や空中戦の相手は民間会社

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しかし、1990年頃の冷戦終結で状況は変わってきます。
旧東側諸国は次々に崩壊して西側に加わったり、あるいはソ連から受けていた援助が止まって古い戦闘機を使い続けることも無くなりました。

何より米国をはじめとする西側諸国も軍事費が削減されたので、専門の仮想敵部隊を維持する必要性も薄れてきます。
その頃に台頭してきたのが、昔なら傭兵と言われたであろうPMC(民間軍事会社)の空軍版です。

その初期から対艦ミサイルの発射母機役などを「演出」面から担当するのを役割としており、実際に電子妨害などの回避手段を行いながら接近する「敵機」に対して、どのような対応が可能なのかを実験、あるいは訓練するには最適でした。

そして1990年代後半になると、空中戦で演じる敵機役も民間軍事会社に委託されるようになり、現在ではATACやドラケン・インターナショナルといった米の民間軍事会社に委託されています。

マッコイじいさんはどこ?

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そうした次第で、民間軍事会社における機材編成は「多種多様」とまではいかないまでも、それなりにバラエティに富んでいます。

一番多いのがチェコ製の練習/軽攻撃機で、ATACが旧式のアエロL-39アルバトロスを、ドラケンがその発展型のL-159を使用しています。

いずれも旧東側の傑作練習機で安価に入手できて部品供給なども安定しているため、アメリカでは民間登録の軍用ジェット機としてかなりポピュラーな存在であり、有名なリノ・エアレースのジェットクラスでも定番です。

ほかにATACではイスラエルのIAI社超音速戦闘機「クフィル」とイギリスのホーカー社製亜音速戦闘機「ハンター」、ドラケンではA-4Kスカイホークを使っています。

クフィルとスカイホークと言えば「エリア88」では定番中の定番機種でしたから、これにF-5E「タイガーII」が加われば、まんまエリア88の世界です。

実際、クフィルなどエンジンこそアメリカのJ79ですが、機体や電子装備の構成部品はイスラエル製が多いため、部品の調達には苦労しているそうで、裏ではエリア88に機材や部品を供給していた武器商人、マッコイじいさんのような人がいるかもしれませんね。

なお、ドラケンのA-4Kは旧ニュージーランド空軍機で、レーダーなどを換装して電子装備の面ではF-16の初期型に匹敵するほどの戦闘力を持っているアップデート型のため、かつての「トップガン」所有機などよりよほど強力です。

日本に飛来することも

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なお、これら民間軍事会社の機体は米国内に限らず、世界中で米軍が活動しているところには訓練支援などのため飛来します

もちろん日本にも飛来することがしばしばあり、厚木や嘉手納でATACハンターが目撃され、写真に収められることも。

いずれは「イスラエル製戦闘機日本初飛来」などととしてクフィルの飛来にも期待したいところですが、聞けばATACの機体は空中給油や途中の基地経由などを経て長距離飛来するわけではなく、分解されて輸送機で運ばれてくるとのこと。

旧式でも小型で、それでいて増加燃料タンクや電子戦ポッドなど搭載力に余裕のあるハンターはうってつけではありますが、クフィルは当面(この先も?)来そうに無いのが残念です。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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