- コラム
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菅野 直人
すごいー! たーのしー!
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菅野 直人
現代の視点から見ると奇異なことですが、1970年代生まれまでの人なら、
子供の頃に「いつかソ連が攻めてくるかもしれない」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか?
想像力をたくましくさせるような創作モノもあったあの時代、ただ日本が守られればいいと思っていた時代を懐かしく感じる人も多いかもしれません。
昔の同人特撮戦隊モノ「愛国戦隊大日本」では、当時の戦隊モノ「太陽戦隊サンバルカン」(1981~1982年)の替え歌で、思い切りソ連(ロシア)の脅威を歌い上げていたものでした。
ANIMEX 1200シリーズ113 太陽戦隊サンバルカン MUSIC COLLECTION
後にエヴァンゲリオンなどで有名になる庵野秀明氏が特撮を担当し、後にアニメ制作会社ガイナックスへと発展する同人集団「ダイコンフィルム」による傑作で、実際にミンスク仮面が登場する「びっくり!!君の教科書もまっ赤っか!」が制作・公開されています。
当時の平和主義な人が見たら怒りのあまり卒倒しそうな内容でしたが、インターネットも無い当時では製作者の個人情報漁りやtwitterが炎上するわけでも無く、つまりのんきな時代だったわけです。
それだけ「ソ連軍による日本侵攻」は身近であり、脅威でもあり、格好の話のタネでした。
筆者は1970年代前半生まれですが、ものごころついた頃には1960年代からの戦記ものブームは落ち着き、ガンダムやマクロスの初回放送を見たり、宇宙戦艦ヤマトの劇場版大ヒットを横目で見ていた、「現在につながるSF作品」の最先端にいました。
「エリア88」など近代軍事ものの漫画作品も始まっていましたが、幼稚園や小学校低学年の頃だと、もう少し子供向けの「戦闘機大百科」などがメインになる頃です。
そんな子供でも、いや子供だからこそ戦争の話なども無邪気にしていたもので、戦争の残酷さよりは、兵器のカッコよさの方に注目していて、戦争になればそこでカッコイイ兵器が活躍するんじゃないか、その程度の想いでした。
そうなると、どんな時に兵器が出撃するのか、戦争で出撃するならソ連が攻めてくるんじゃないか、いやせめてくるに違いない!情報化社会など存在しない時代でしたから、子供から大人まで、程度の差こそあれそんな認識だったと思います。
そんな時代でも「戦争になったら大変だから、人殺しの道具を持って訓練している自衛隊なんてとんでもない!」という人はいました。
というより、自衛隊とはそういう組織だと多くの国民は思っていたと言って良いかもしれません。
もしもソ連が攻めてきたら、ソ連軍が日本を滅ぼすというよりも、反撃する自衛隊のせいで日本は滅茶苦茶なことになる!とんでもない!と真剣な顔で言う大学生を前にして、中学生当時の筆者は大いに困惑したものでした。
また、小学校の授業で「戦争とは何か」といったテーマで、祖父が沖縄戦に従軍したというクラスメートが発表した時。
「僕のおじいさんは、突撃!と言って立ち上がった瞬間に機関銃で撃ち殺されました。」
その瞬間、僕を除く教室の中の全員が大爆笑です。クラスメートはともかく、先生まで腹を抱えて。
既に10歳から「丸」(軍事情報誌)などを購読しており、クラスメートの祖父がどういう状況にあったかを理解していた筆者は、その光景に寒気を感じたのを忘れられません。
戦争の悲惨さを伝えるより、「戦争なんてする人間がバカなのだ」という意識を煽っていたのか、ともかく1980年代当時の学校教育における戦争とはそのようなものでした。
それでも1980年代半ば、ソ連の書記長に新世代の若手指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏が就任し、グラスノスチ(情報公開)やペレストロイカ(改革)が進んだことで、世界には雪解けムードが広まります。
それでも子供の頃に覚えたものはなかなか直らないもので、当時からいっぱしのミリオタだった筆者は「軍事に詳しいなんて、お前は共産主義者に違いない」と、同級生から妙なレッテルを貼られたことも。
また、ボーイスカウトに所属していたことが知られた時は、「ソ連が攻めてきたら頑張ってくれ」と、妙な励ましを受けたことがありました。
ボーイスカウトは自然の中での集団活動という観点から青少年教育に役立つとされていた活動で、その草創期にイギリスで自警団的な役割を果たした以外は、およそ戦争と無縁な団体です。
野営地への機材搬入や食事の準備(まだアウトドアという言葉が無かった時代です)が活動における最大の課題なのに、いざ有事には銃を取って戦うと思われていたのは、滑稽そのものでした。
さらに、子供でも読めるような「第三次世界大戦」ものの小説やアニメ、さらにソ連・キューバ連合軍により占領されたアメリカでレジスタンスが戦うアメリカ映画「若き勇者たち」など、悪者・ソ連が攻めてきて世界中を蹂躙する仮想世界にはコト欠きません。
ただ、1986年に刊行された「レッドストーム作戦発動」(著:トム・クランシー)をはじめ、大抵の第三次世界大戦創作モノでは、資源問題など何らかの問題を抱えたソ連が、それを打開するためヨーロッパや中国、極東で戦端を開く…というパターンが多かったと思います。
悪逆なる赤い帝国が世界を蹂躙しようとする一方、その国家基盤に問題を抱えているのがそもそもの開戦理由なので、大抵はその問題が原因で敗北するパターンばかりでもありました。
「ソ連は攻めて来るけど、最後は我々が勝つ!」
というのは、愛国心や正義の防衛戦争という意識を刺激はしたものの、冷静に考えると「それだけ不利な側が戦争しようと思うかな?」という疑問が湧いてきます。
そうして、「もしかしてソ連の内情は火の車?」と思い始めた頃に東欧で革命が起き、バルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)の独立を止められなかったソ連は1991年12月、アッサリと言って良いスピードで崩壊しました。
「長年の冷戦が西側の勝利で終わり、もうソ連が攻めてくることは無くなった!」
と歓迎すべきところでしたが、その過程でソ連が何ら影響力を及ぼせないまま湾岸戦争(1991年)が始まって終わったことからも、何となく1990年頃にはもう「アメリカ一強時代」が始まっており、ソ連崩壊とロシアなど各共和国の独立も、当たり前のことと受け止めていたのかもしれません。
結局、ソ連は一度たりとも攻めてくることの無いまま、勝手に「対岸の火事」を起こして燃え尽きてしまいました。
しかし、やれやれ平和の時代が来たか、と息つくどころか、それ以来日本も含めた世界中が戦争ばかりしているような気もします。
竹島を韓国から奪還せよ、尖閣を中国から守り抜け、もちろん武力行使も否定しない!
そんなことを声高に叫べる時代になったのを目の当たりにすると、「いつかソ連が攻めてくる」と思っていたあの頃が、一番平和だった。
そんな気がしますね。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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