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2017/03/4

菅野 直人

捕鯨戦艦「長門」南極海へ出漁せよ!

太平洋戦争が終わり、平和な海での漁業が再開されるようになったものの、戦時中に特設監視船など軍に徴用されて失われた船も多く、中でも深刻だったのが多くの大型捕鯨船や捕鯨母船を失った捕鯨会社です。旧海軍艦艇の借用を陳情しに行った大洋漁業にGHQが提示したリストの一番上には「BATTLE SHIP NAGATO」の文字が…現実に語り継がれているエピソードを元に、もし「捕鯨戦艦長門が実現していたら」を考察します。

終戦で困り果てた捕鯨会社に提示された「NAGATO」

Japanese Battleship Nagato 1944.jpg
By 不明 (Unknown) – 呉市海事歴史科学館 Kure Maritime City Historical Museum, パブリック・ドメイン, Link

戦争が終わって、続々と帰ってくる旧軍兵士も含め、国民の腹を何とか満たさなくてはいけない、さあ捕鯨を再開しよう!と意気込んではみるものの。

戦前のように、南極海までシロナガスクジラを追いかけるための捕鯨母船は全て海軍にタンカーとして徴用されて撃沈されてしまいました。

ならばせめて、小笠原諸島あたりまでの近海捕鯨を再開しようと、鯨を引き上げるためのスロープを持った「第一号型輸送艦」を借りるため、大洋漁業や極洋漁業はGHQ(連合軍総司令部)に陳情に行ったのです。

おお、そういうことなら貸せるフネのリストを出そうじゃないか、とGHQの担当者が差し出したリストの一番上には「BATTLE SHIP NAGATO」の文字が!

帝国海軍に残された最後の誇りに畏れ多い…というより、借りたいフネでは無かったので普通に一等輸送艦4隻(9号、13号、16号、19号)を借りて、2社で3回にわたり実際の捕鯨に従事しました。

武装こそ撤去されていたものの、二十二号対水上電探(レーダー)はそのまま、出漁の際は軍艦マーチを鳴らしながら出港したと言いますから、何ともノリのいい話です。

そのノリで、本当に戦艦「長門」を借りて捕鯨戦艦に改装していたら…と考えてみましょう。

捕鯨戦艦「長門」改装案1:41cm連装捕鯨砲

Whaling harpoon.jpg
By Stahlkocher from de.wikipedia.org, CC 表示-継承 3.0, Link

写真は捕鯨砲(尖頭銛)
長門を捕鯨に使うならば、どの用途が向いているでしょう?
捕鯨船団の構成にはさまざまな種類の船が含まれますが、向いているのは実際に鯨を捉えるキャッチャーボートと、巨大な鯨を引き上げる捕鯨母船を兼ねたようなフネがいいかもしれません。

となればキャッチャーボートには「捕鯨砲」が必要ですから、艦首の41cm連装主砲塔はそのまま捕鯨砲に流用。
本来の捕鯨砲は75mm級ですから大きすぎると言えばその通りですが、そもそも無茶な夢想をしているのですから、細かいことは気にしない!

75mm捕鯨砲ですと、砲身から大きな銛(モリ)が突き出すような形になっていますが、41cm砲なら砲身内径に収まるでしょう。
しかも、1951年には帝国海軍が開発した秘密兵器、九一式徹甲弾を応用した平頭銛が開発されていますが、これを無理やり先取りして使用します。

発射された砲弾が着水すると砲弾の頭で鋭く尖っているキャップが取れ、平らな頭が現れることで水中を魚雷のように直進、命中する水中弾効果を発揮するのが九一式徹甲弾です。

摩擦抵抗を上げることで真っ直ぐ海底に突進することを防いでいるのですが、捕鯨用の銛でも同じように銛の先端を平らにして抵抗を増やし、鯨に命中はしたもののツルリと滑って刺さらないのを防ぐ効果があるのでした。

Hogeihou.jpg
By 鈴木早智子 – 船の科学館展示, パブリック・ドメイン, Link

写真は捕鯨砲(平頭銛)

そして一番銛が刺さってもなおクジラが抵抗する場合や、狙いを誤って外れた場合は二番銛を素早く発射する必要がありますから、艦首の第一砲塔、第二砲塔は両方使えた方がいいですね。

斉発(いわゆる一斉射撃)は必要無いので、砲塔ごと左右砲どちらかを放つ交互射撃を行います。
捕鯨では特に遠距離射撃は必要無いので、前檣楼(ぜんしょうろう)上部の測距儀は使わず、砲側照準で十分かもしれません。

捕鯨戦艦「長門」改装案2:艦尾にスロープを設けて鯨を解体加工しよう!

後部の第三・第四砲塔まではさすがに不要でしょうから、ここは思い切って撤去
主砲や飛行甲板の跡地は平らにして艦尾にはスロープを設け、獲った鯨を引き上げて解体加工ができるようにしましょう。

前後の重量バランスがかなり悪くなりますから、艦底にはバラストを載せる必要もあるでしょうが、後部はだいぶ広くなりそうですから、鯨油採取工場を設置してもいいかもしれません。

平らな後部甲板の艦首側に工場が建っていると、まるで後のヘリコプター護衛艦のようで、ちょっとカッコイイかも?
20ノットも出ればいいので機関の一部を撤去したり、前部主砲も弾薬庫のスペースはそれほどいらないのと、乗員もだいぶ減るでしょうから、飼料や肥料などの製造設備ですとか、冷凍庫の類も設けられるのでは無いでしょうか?

とにかく燃料代や維持費が結構かかるフネですから、1隻でいろいろな役割を兼ねて儲けに繋げる必要がありますね

前檣楼上部は絶好の見張り台?

Nagato Japanese Battleship LOC 32962.jpg
パブリック・ドメイン, Link

捕鯨砲に転用する第一、第二主砲塔以外の全武装は撤去するとして(元々主砲以外はほとんど撤去されていたようですが)、復旧するのは戦争末期に撤去されていた煙突くらいでしょうか?

前檣楼で爆弾が命中して全壊していた第一艦橋は修理した方がいいでしょうが、それより最上部の防空指揮所は役割もそのまま、空より海面の鯨を探す見張り所兼捕鯨指揮所としてちょうど良さそうです。
高いところにありますから、広い海面の搜索にはうってつけでしょう!

これで小笠原諸島までの近海捕鯨はもちろん、タンカーのアテさえつけば、南極海までの遠洋捕鯨もバッチリです。
軍艦マーチが鳴り響く中、捕鯨戦艦「長門」が出港する様は壮観でしょうね…

そして映画「トラ・トラ・トラ!」出演へ?

現実には一等輸送艦でさえも燃料の捻出に苦労したらしいので、長門を出漁させるのはかなり大変そうですが、ビキニ環礁での原爆実験などに使わず1950年代半ばくらいまで捕鯨戦艦として使われていたら…という夢想でした。

その後も戦争遺構として保存公開などされていたら、1968年に撮影開始された映画「トラ・トラ・トラ!」では、実物大模型では無く本物の長門が使われていたのかも、などと夢が膨らむ話ですね。

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