- コラム
究極の一発芸! 一芸軍艦BEST5
2017/07/29
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2017/03/1
菅野 直人
「ラバウル快晴、ブカ小雨。ブイン、バラレは弾の雨」とは、ラバウル航空隊など現地で戦った将兵による「天気予報」ですが、そのブインがあるブーゲンビル島やバラレ島よりさらに南東で、ガダルカナル撤退後の最前線となっていたのが、ムンダ飛行場のあるニュージョージア島と、その隣のコロンバンガラ島でした。
その両島を巡る戦いで最大の海戦であり、旗艦が犠牲になりながらも傘下駆逐艦の突撃で二水戦(第二水雷戦隊)の勇名を高めた、コロンバンガラ島沖海戦です。
By 不明 – Official U.S. Navy Photograph, now in the collections of the U.S. National Archives. Photo #: 80-G-342763, パブリック・ドメイン, Link
砲戦中のセントルイスとリアンダー
1942年2月のケ号作戦(ガダルカナル島撤退)により、日本軍はガダルカナル島を完全に喪失しました。しかし、日本海軍は最前線基地として、同地域の要衝ラバウルとガダルカナル島の中間にあるニュージョージア島などの保持を決めており、ここで連合軍を食い止める戦略をとります。
そのニュージョージア島にも連合軍は当然進撃し、6月30日には隣のレンドバ島へ、7月5日にはニュージョーシア島に上陸、同島を重視していた日本軍は隣のコロンバンガラ島から兵力を移送しました。
その結果減少したコロンバンガラ島守備隊増援のため、ラバウルから陸軍部隊を派遣することになり、輸送隊援護のため第二水雷戦隊(二水戦)は7月12日にラバウルから出撃させます。
パブリック・ドメイン, Link
軽巡洋艦 神通
二水戦の陣容は軽巡洋艦「神通」以下、駆逐艦5隻。
駆逐艦三日月を先頭に、神通が続行、それに雪風、浜風、清波、夕暮が続行していましたが、この時雪風には、6月に呉で改装時に搭載されたばかりのE27電波探知機、通称「逆探」が搭載されています。
電波探信儀(電探。いわゆるレーダー)の装備が遅れていた日本海軍にとり、それまでの夜戦では夜間でも最大2万mまで視認可能な夜間見張り員が頼りでした。
敵レーダー波を探知して警戒を強化できるE27逆探には、大きな期待が寄せられていたのです。
7月12日22時57分、米海軍のエインスワース少将率いる軽巡洋艦3隻、駆逐艦10隻からなる水上戦艦隊からのレーダー波を補足したのも、雪風の逆探でした。
「敵電波!感3!出力増大中!」
30ノットに増速して針路を変更、砲雷撃戦準備に入った二水戦を米艦隊旗艦・軽巡洋艦ホノルルのレーダーが補足したのは同22時59分。
雪風の逆探が、米軍のレーダーに勝ったのです。
先制攻撃を狙っていたエインスワース少将の耳に飛び込んだのは、攻撃のため速力を上げ、こちらに向かってくる日本艦隊を探知したという報でした。
23時3分、ほぼ同時に互いの艦影を視認した日米両艦隊はさらに接近し、23時8分に二水戦旗艦・神通が探照灯で米艦隊を照射、ただちに砲撃を開始します。
おそらく傘下の駆逐艦の照準を助ける行動でしたが、米艦隊からはその光源が格好の射撃目標となり、猛烈な砲撃を受けました。艦橋を含む上部構造物が吹き飛ばされ二水戦司令部および艦首脳が全滅。神通は、全艦が炎上しながらも雷撃開始(魚雷発射)。
前後を進む駆逐艦も相次いで雷撃、退避行動に移りますが、舵が故障してその場で旋回した神通は反対舷の発射管からも魚雷を発射。この日本側の雷撃で軽巡洋艦リアンダーが大破離脱した米艦隊でしたが、魚雷を撃ち尽くした駆逐艦が離脱し、脅威は去ったと判断して神通への射撃を継続しました。
同艦は主砲が次々に沈黙する中、奇跡的にただ1基生き残った艦首の1番砲が狂ったように急射撃を行い、敵中に孤立してたいまつのように炎上してなお、奮戦を続けていたのです。
立て続けに米艦隊からの魚雷が命中して停止、23時48分には真っ二つになって後部は沈没したものの、1番砲の射撃が止むことはありませんでした。
しかし、米艦隊には混乱が発生していました。
“レーダーで探知した新たな目標を、砲雷撃戦の前に分離して先行したはずの前衛駆逐艦群だと判断。しかしそれは、再装填魚雷を持たないため離脱した三日月を除く、魚雷を再装填した二水戦の残存駆逐艦4隻だったのです。”雪風を先頭に旗艦の復讐に燃える残存駆逐隊は、日付が変わった0時5分に再度の砲雷撃戦を開始。
日本海軍の最新駆逐艦に魚雷再装填能力があるのを知らなかったエインスワース少将はようやく事態を悟って反撃と魚雷回避を命じたものの時既に遅し。
軽巡洋艦ホノルル、セントルイスに魚雷が命中して大破、駆逐艦グウィンにも命中して大破炎上(後に沈没)、同ブキャナンとウッドワースは衝突事故を起こして損傷、米艦隊は事実上壊滅したのでした。
コロンバンガラ島沖海戦で米艦隊は大損害を受け、日本側の輸送作戦も阻止できませんでした。
米艦隊は夜戦で1隻に集中射撃を行うため、それに気を取られる間に他の艦から反撃を受けて大損害を受ける傾向があり、コロンバンガラ島沖海戦もその典型的な例です。
なお、神通は再突入を行った残存駆逐艦が見事に仇を打って離脱した後も砲撃を続行し、その模様は上空援護していた日本海軍の水上偵察機にも目撃されています。
後に戦史研究家サミュエル・E・モリソンは同艦を「太平洋戦争でもっとも激しく戦った日本軍艦」と評価、軽巡洋艦「神通」は火焔をまとった不動明王のような軍艦として、今も人々に記憶されています。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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