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2017/02/4

菅野 直人

第三世界空母最大の奮闘!印空母ヴィクラント、ベンガル湾に出撃せよ

先日、ロシアが保有する唯一の空母、アドミラル・クズネツォフがシリア空爆のため出撃して話題になりました。過去に空母を実戦運用したのは日米英仏の4ヶ国に加え、朝鮮戦争で軽空母シドニーが活躍したオーストラリアくらいでしょうが。それが冷戦時代東西どちら側にも属さなかった第三世界の空母では、インドが唯一の例です。

意外と少ない、実戦で空母を使用した国


軍艦や徴用船舶に設置した飛行甲板から航空機を発着させる航空母艦(空母)という艦種が登場してから、100年以上。
現在まで空母を保有した国は数多くありますが、実戦で活用した国というのは意外に多くありません

先日、シリア空爆のために空母「アドミラル・クズネツォフ」を出撃させたロシア海軍にしても、旧ソ連時代の1990年に同空母が就役してから26年目にして「初実戦」であり、それ以前のキエフ級を含め、実戦経験は全くありませんでした。

そのロシアを除き、過去に空母を活用したのは、まず太平洋戦争で空母同士の決戦である空母戦を世界で唯一行った日本とアメリカ

さらに第2次世界大戦中、世界中で船団護衛や上陸作戦支援に大小の空母をフル活用したイギリス。
戦後、イギリスと共に第二次中東戦争(スエズ危機)など、世界各地で空母を活用したフランス。
朝鮮戦争で国連軍の一員として軽空母シドニーが米空母と共に対地支援で活躍したオーストラリア。

これらは太平洋戦争時の活躍に留まる日本を除けば、第2次世界大戦後に西側諸国の一員として実戦を経験しています。
しかし、冷戦時代の西側・東側どちらにも属さない国で唯一、空母による実戦経験を持つ国があります。

それが現在も空母「ヴィクラマーティディア」を運用する、インドです。

インド海軍初の空母、初代「ヴィクラント」

INS Vikrant circa 1984 carrying a unique complement of Sea Harriers, Sea Hawks, Allouette & Sea King helicopters and Alize ASW.jpg
By Arun Prakash, CC 表示-継承 3.0, Link

1984年当時のヴィクラント
現在、インド海軍は耐用年数を超えて運用していた軽空母「ヴィラート」(旧英空母ハーミーズ)を退役させ、ヴィクラマーティディア1隻のみの体制ですが、2隻目の空母として国産の「ヴィクラント」を建造中です。
新空母「ヴィクラント」は2代目で、初代は1961年に就役した軽空母でした。

初代「ヴィクラント」は旧英マジェスティック級空母で未完成だった「ハーキュリーズ」を購入、改装を行ってインド海軍に編入したもの。
艦載機としてはやはりイギリス製の艦上戦闘機「シーホーク」の他、フランス製艦上対潜機の「アリゼ」、さらに汎用ヘリの「アルーエットIII」を搭載していました。

インドはその独立当初からパキスタンを国境問題などで紛争を抱えており、3回に渡って大きな衝突「インド・パキスタン戦争」(印パ戦争)を戦っています。

1965年の第二次印パ戦争では戦場が内陸深くのカシミール地方であり、さらに整備のためドック入りしていたこともあって、初代「ヴィクラント」の出番はありませんでした。

ヴィクラント、ベンガル湾に出撃!

しかし、1971年12月3日に東パキスタン独立戦争(バングラデシュ独立戦争)に介入したインドと、独立を阻止しようとするパキスタンの間で第三次印パ戦争が勃発。

インドを挟んで東に遠く離れた東パキスタン(現在のバングラディシュ)を巡る戦いのため、西のインド洋や東のベンガル湾などで、インド海軍とパキスタン海軍も激しく激突しています。

東パキスタン情勢の急迫を受け、初代ヴィクラントは東洋艦隊の指揮下でフリゲート艦、コルベット艦各2隻、潜水艦1隻と共に機動部隊を編成。
12月2日にはベンガル湾へと出撃し、12月3日の開戦を迎えました。

12月4日から同艦はシーホーク艦上戦闘機を発進させ、チッタゴンやコックスバザールの港湾施設や停泊艦船を攻撃しています。
これに対抗してパキスタン海軍は潜水艦「ガーズィー」(旧米テンチ級潜水艦ティアブロ)を出撃しましたが、インド東岸にあるインド海軍の要港、ヴィシャーカパトナムを目前に機雷に触れて沈没しました。

一方で12月9日にはパキスタン潜水艦ハンゴールがパキスタン本土沿岸でインド海軍の対潜フリゲート艦「ククリ」を雷撃して撃沈、第二次世界大戦後初の潜水艦による撃沈戦果をあげています。

インド海軍もオーサ級ミサイル艇がパキスタン本土のカラチ沖でパキスタン海軍の駆逐艦シャー・ジャハーンとバドルを撃破、同カディスを撃沈するなど、パキスタン本土沿岸では激しい水上戦闘が行われました。

その間にも初代ヴィクラントを基幹とする機動部隊は東パキスタン沿岸を封鎖し、12月14日にはチッタゴンのパキスタン軍兵舎を破壊するなど、シーホークやアリゼによる空爆を続行

哨戒を行っていたアリゼ対潜機がパキスタン空軍機に撃墜されたこともありましたが、シーホーク戦闘機自体はパキスタン空軍機との交戦は無かったようで、空中戦の記録はありません。

まとめ

結局12月16日までの13日間という、2週間足らずの交戦で東パキスタンのパキスタン軍は降伏。
初代ヴィクラントは補給のため東パキスタン沿岸を離れた海域で停戦の報を聞きました。

こうして戦争の期間中、海上から東パキスタンを圧迫し続けた初代ヴィクラント最初で最後の実戦は終わりを告げたのです。
インド海軍に空母による貴重な実戦経験をもたらした初代ヴィクラントは、1983年に改装でシーハリアーを搭載可能となります。1989年からはシーハリアーをより効率よく運用可能にするためスキージャンプ甲板を設置しましたが、老朽化で1997年に退役。博物館船として2001年から2012年までムンバイで公開されていましたが、2015年に解体されました。

現在は2代目ヴィクラントが初の国産空母として、建造中です。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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