- コラム
機体が溶けるか記録が先か?有人機最速のロケット実験機、ベルX-15
2018/08/3
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2017/01/20
菅野 直人
沖縄でオスプレイが空中給油トラブルにより基地にたどりつけず、沿岸に近い海面に降下して大破。「それみたことか!」という話になっていますが、感情論はともかく、オスプレイのような飛行機は本当に危険な飛行機でしょうか?
配備当初から基地の周りで凧を上げられたりと妨害騒動まで起きたアメリカ軍の新型垂直離着陸多用途機「ベル V-22 オスプレイ」。
沖縄沖で空中給油訓練に失敗、大破喪失した事で、反対派は勢いづいているかと思います。
ところでオスプレイ以前にも似たような反対運動がありまして、それが岩国基地(山口県)にA-4Mスカイホーク攻撃機に代わって、AV-8BハリアーIIが配備された時です。
あの時も、こんな危険な飛行機を配備するなんてトンデモ無い!とばかりに、反対ビラが配られていたのをよく覚えています。
結局、人間はただ鉄の塊が飛ぶというだけで気色が悪いと思う生き物ですから、そこからさらに、ワケのわからない動きをして水平飛行から垂直飛行に転換して降りてくるVTOL(垂直離着陸機)を直感的に「危ない飛行機だ!」と思うのは仕方が無いのかもしれません。
ところでそのオスプレイですが、実用化までにはかなり長い年月がかかりました。
初めて飛行機のプロペラの向きを変えようとしたのは1908年にスイスのデュフォー兄弟が作った「デュフォー三葉機」です。
もっともかなり重量オーバーで300mの滑走が必要という計算だったらしく、今で言うVTOL(垂直離着陸)の概念まではまだ無かったのかもしれません。
ともあれ凝ったメカニズムのせいなのか元々の設計が悪かったのか、そもそも離陸できなかった飛行機なので効果を確かめる事はできませんでしたが。
こうしてオスプレイの一番古いご先祖様は失敗作で終わったのでした。
By U.S. Army – United States Army Historical Aircraft Photo Gallery (online)
URL: http://www.aviation.army.mil/aircraft/xv-3.jpg
File: Xv-3.jpg, パブリック・ドメイン, Link
画像はXV-3
結局、色々と計画はありながらも、現在まで明確に記録が残っている中で初めてマトモな飛行に成功したのは、米ベル社が1955年に初飛行させたXV-3で、1958年以降垂直離着陸と水平飛行の転換飛行を110回成功させています。
このベル社が現在のV-22のメーカーですから、プロペラの方向を変えるティルトローター機としては老舗中の老舗、という事になります。
By NASA – Dryden Flight Research Center Photo Collection – http://www.dfrc.nasa.gov/Gallery/Photo/XV-15/HTML/ECN-13850.html, パブリック・ドメイン, Link
画像はベルXV-15
その後もプロペラの方向を変えるVTOL実験機はいくつも開発されています。
その中には1957年初飛行のバートルVZ-2に始まる、プロペラだけでなく翼ごと向きを変える「ティルトウイング機」もあり、この方式は米海軍の艦上VTOL輸送機、ヴォートXC-142として実用化一歩手前までいきました(ベトナム戦争激化などを原因とした予算削減で中止)。
しかし翼を立てるティルトウイング機は風に弱いという欠点があり、結局行き着いたのはベルXV-3で成功したティルトローター機です。
1977年に初飛行したベルXV-15は、XV-3が胴体内のエンジンから伸ばした延長軸でプロペラを回していたのに対し、主翼端に装着したエンジンでプロペラを回し、エンジンごとプロペラの向きを変える、後のオスプレイと同じ方式でした。
このXV-15でようやく技術的確立を見たと判断した米軍は1985年にV-22オスプレイの開発を決定。
その後試験中の事故や予算削減で計画中止の危機もありながら、14年かかってようやく1999年に初期量産初号機が初飛行し、部隊運用試験が始まったのでした。
By Airman 1st class Xavier Lockley, U.S. Air Force – www.defense.gov, パブリック・ドメイン, Link
それから17年、軍用機でそれだけの期間激しい訓練をしていれば事故もおきようもので、何度も墜落事故を起こしています。
逆に言えば、それだけ実用に供されて大量に飛び回っているという事です。
極端な話を言ってしまえば、軍用機ならば激しい訓練を行うのが当たり前。戦場でも災害派遣でも極限下での飛行を可能としているわけですから、事故が起きるかより、問題が起きてもいかに被害を抑えるかが、現在もそして、これからも課題となるでしょう。
何しろオスプレイは輸送機や救難機としてパイロット以外が搭乗する事も多いので、大事故を起こせばどうしても犠牲者が増えます。
ヘリコプターと違って実用の歴史が浅いオスプレイのような飛行機では、そこがまだ経験の浅いところですから、事故率低下はもちろんですが、安全性の向上にも努めてほしいですね。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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