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2017/01/13

菅野 直人

新世代戦闘艦か、浮かぶモノリスか?米新鋭戦闘艦ズムウォルト就役す

その異様な姿とは裏腹に、一部ミリタリーマニアからは「ズムさん」と何とも愛らしい名前で呼ばれるズムウォルト級駆逐艦のネームシップ、「ズムウォルト」がいよいよ2016年に就役、しかも就役時の艦長から、既に2代目艦長へと受け継がれています。紆余屈折を経てどうにか就役した「ズムさん」ですが、どんなフネなのでしょう?

計画時点から迷走!

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ズムさんの原計画は1980年代までさかのぼり、多数のVLS(垂直発射ミサイルランチャー)からミサイルを撃ちまくるステスル打撃巡洋艦「アーセナル・シップ構想」にその源流が見られます。

そこからタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の後継となる「CG-21計画」、スプルーアンス級駆逐艦とO・H・ペリー級ミサイルフリゲイトを統合して後継となる「DD-21計画」がスタートし、両者は基本的に同じ船体で作ることとされていたのです。
そもそもタイコンデロガはスプルーアンスの船体を流用して作りましたから、同じ手で行こうと考えたわけですね。

しかし、時は既に冷戦も集結して軍縮時代。
冷戦時代に凄まじいばかりの冗長性を持たされて建造され、「これのどこが駆逐艦なんだ」(何しろ8,000トン級)と言われたスプルーアンスのようなフネを作るには問題があります。

確かに後々巡洋艦にするならちょうどいいアンバイなのですが、そのためにでかい駆逐艦はいらない!とされて、結局別々の「CG(X)計画」と「DD(X)計画」、それにフリゲートの後継として「LCS」(沿海域戦闘艦・フリーダム級とインディペンデンス級)の3つに分けられたのでした。

本当はものすごいフネ!…のはずが

USS Zumwalt (DDG-1000) 1.jpg
By U.S. Navy photo illustration/Released – http://www.navy.mil/view_image.asp?id=61727 (080723-N-0000X-001), パブリック・ドメイン, Link

そのDD(X)がズムウォルト級になったのですが、設計を終えてみれば何と14,000トン級!
これでは小回りの求められる戦場では使い勝手が悪いのでLCSが別に作られたのですが、さらに大型艦を計画していたCG(X)などは中止になったのですから、まだDD(X)は見込みのある方だったのです。

そしてズムウォルト級として計画は進み、


●多数のVLSから多様なミサイルを発射して、艦隊防空から対潜戦闘まで可能に

●誘導砲弾も使用可能な新開発の155mm砲で艦砲射撃!

●上部構造物一体でステルス性の高い船体

●そのほかにも進化した戦闘指揮システムや、将来的にレールガンにも対応可能な大電力発揮可能ガスタービン発電機による統合電力推進など、新機軸てんこもり!



と、大元のアーセナル・シップ に海上火力支援任務(こちらはアイオワ級戦艦後継)を付与したような、マルチプレーヤーになるはずだったのです。

完成! ところでこのヘンなフネは何ができるの?

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こうしてズムさんこと1番艦「ズムウォルト」は2011年11月に起工、2013年10月に進水、2015年12月7日には竣工し、試験公開を経て2016年10月15日、正式に就役しました。

ちなみに初代館長の名前は「ジェームズ・カーク」大佐!
トレッキー(「スタートレック」のマニア)なら「エンタープライズじゃないの?」「ジムと呼んでくれ! とか言うのかな? 」などと大喜びする名前ですが、それ以外の人には特に感銘は無いですねハイ。

それはともかく、完成したズムさんはかなり残念なフネになっていました。
艦種記号こそ計画の名残でDDG(ミサイル駆逐艦)だったものの、艦隊防空用のスタンダードミサイルはシステム開発に失敗して搭載見送り。
VLA(垂直発射型アスロック対潜ミサイル)も搭載見送りとなってしまったのです。

結果、80セルもあるVLSには1セルあたり4発セットできる、ESSM(発展型シースパロー)が何と最大320発も搭載・発射できることになりました!

それだけあっても射程は短く、広域防空ができないため、たくさん積んでも大して役に立ちません。
短魚雷発射機も装備されなかったので、対潜戦闘も搭載ヘリ頼み。
対空・対水上戦用の「副砲」のはずだった57mm砲もキャンセルされ、対舟艇用の30mm機関砲のみ。

結局ズムさんは完成してみれば、「155mm単装砲2門で誘導砲弾も撃てて、短距離対空ミサイルを最大320発も積めるけど同時にそんなに撃てない」という、よくわからないフネになったのでした。

弾着観測もできる無人観測ヘリ、MQ-8ファイアスカウトも搭載できるので、ステルス性と個艦防空能力だけやたらと優れた対地火力支援艦…って、それで何ができるのでしょうか?

まとめ

実際、米海軍もズムさんのこの体たらくに満足するわけもなく、ズムウォルト級は3隻で中止になりました。
代わりに何隻作る気なのかという勢いで量産中(60隻以上)のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦(イージス艦)を追加注文しています。

CG(X)がキャンセルされたことでタイコンデロガ級後継巡洋艦もバーク級発展型になると言われていますし、結局ズムさんは予算の無駄遣いによる回り道で終わるかもしれません。
自慢の大電力システムがうまく作動すれば、将来はレールガン試験艦として名を残せるかもしれませんが。

ちなみに、2016年12月20日にズムさんは初代艦長のジェイムズ・カーク大佐から、2代目艦長のスコット・テイト大佐へと受け継がれています。
さすがに都合良くモンゴメリー・スコット大佐はいなかったようですが、それでも愛称は「スコッティ」だったりするんでしょうか?
(最後も「スタートレック」ネタでスイマセン…)

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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