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2019/03/27

菅野 直人

北朝鮮最新情勢「北朝鮮のフェイントと、安易に動かないアメリカ」

2019年3月は特別に2回お届けする北朝鮮最新情勢。必ずや3月前半には多少積極的な動きが、後半には今後を占う動きが出るかと考えてみたのですが、どうも早計だったかもしれません。全般的には軽いフェイントで様子を伺う北朝鮮と、それをほとんど身じろぎもせず見守るアメリカ、あるいはトランプ大統領という構図が続いており、各メディアも第2回米朝首脳会談以降の『決裂』ムードを薄めています。

前回記事:北朝鮮最新情勢「実際は米朝ビジネスショー!?第2回米朝首脳会談は『話のできる金委員長』というイメージが最大の成果」







第2回米朝首脳会談後:北朝鮮の動き


2019年2月28日の第2回米朝首脳会談後、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が帰国した北朝鮮では、飛び抜けて大きな動きはなく、アメリカの様子を伺うフェイント的な動きが見られる程度です。

・ミサイル実験場や核関連使節に一部復旧の動きが見られる(3月上旬)
・崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が非核化協議の中止を示唆(3月15日)
・昨年秋は行われなかった春と秋の定例防空訓練が平壌で行われた(3月中旬)
・開城工業団地の南北共同連絡事務所から、北朝鮮の職員が引き上げ(3月22日)
・かと思うと、一部職員が復帰し運営再開(3月25日)
・日本独自の制裁措置延長に関し、北朝鮮国営メディアが日本の安倍総理を名指しで批判(3月25日)
・金正恩の執事役と呼ばれる高官がロシアを訪問(3月25日)

この中で注目すべきはやはり北朝鮮外務次官による「アメリカは絶好の機会を棒に振った非核化協議は中止されるかもしれない。」というコメントですが、これには続きがあって、金委員長とトランプ大統領の個人的友誼に変更はない、とも述べたようです。

結局のところ、米朝間の協議について実務者レベルはともかく大筋では米朝両首脳の個人的なつながりで続けられているため、いかに外務次官と言ってもそのコメントに大きな影響力はありません。
むしろ『外務次官に喋らせた』ことで、一種のリップサービス、これは北朝鮮そのものの総意ではありませんよ、ちょっと様子見しているだけです、という意図が透けて見えます。

ミサイルや核関連施設に関しても、第2回米朝首脳会談を『決裂』と報道した直後ゆえにセンセーショナルに伝えられましたが、単に歴史的合意の予測が外れ、浮足だっているメディアの姿が目立つだけでした。
平壌の防空訓練も、『南北関係筋』から漏れ伝わった情報と言うだけで、これが北朝鮮国営メディアの大々的な報道であれば注目すべき点もありますが、単に国内の引き締めが目的であろうと考えればそれまでです。

少々慌ただしくなってきた3月下旬、一番気になるロシアとの関係。

それでも3月下旬になれば、当記事で期待しているような『決定的な動き』があるのでは……と待っていましたが、南北共同連絡事務所から北朝鮮が職員を引き上げてみたり、戻してみたり、それも一部のみと、慌ただしいものの『フェイントで注目を集めている』程度ですから、肩透かしもいいところです。

連絡事務所に北朝鮮の職員が戻った日には、北朝鮮国営メディアが日本の安倍総理へ激しい批判を行っていますが、日本側の発表に対して反応してみた、というある意味『様式美』に近いものですから、そう真に受けることはありません。

どのみち反対または緩和を求める立場にあるロシアや中国、直接国境を接した同族の隣国、しかし仮想敵国という立場ゆえ旗色を鮮明にしにくい韓国を除けば、各国は割と遠慮なく経済制裁を加えていますから、むしろ日本は意識されている、忘れ去られていないだけ今後の展望が持てます。

ひとつ面白いのは同日、ロシアから帰国した金委員長の執事役、金昌善(キム・チャンソン)
国務委員会部長で、露朝首脳会談のための段取り固めのため訪ロしていたと思われ、第2回米朝首脳会談以来冷え込んでいると言われる中国との関係から、ロシアとのパイプも改めて確認しておきたい意向があるようです。

中国が貿易摩擦でアメリカと衝突しているのに続き、ロシアもINF(中距離核戦力全廃条約)を破棄したばかりでアメリカとの関係を悪化させているので、ロシアも新たに北朝鮮を通した『代理戦争』に名を上げようとしているのでしょうか。
もっとも、こうした『代理戦争』は超大国同士が直接火花を散らさないのに効果的な事を考えると、北朝鮮は非核化交渉とはまた別に、国際的なパワーバランスを調整する上で、案外重要な役割を持ち始めたのかもしれません。

バランスが取れているうちはいいのですが、反面火がつくと止まらない火薬庫のようなものなので、日本のそばでやられると物騒な話ではありますが。

『動かぬこと山のごとし』なアメリカ

チョロチョロと動いている北朝鮮とは対照的に、アメリカ側、ことにトランプ大統領はどっしりと構えていて動きません。
そもそもアメリカのような超大国の親方ですから軽々しく動くべきではないのですが、大統領としての立場が人を作る形で風格が増したのか、あるいは大統領選挙からプライベートに至るまでの各種疑惑、メキシコ国境との壁問題で対立している議会対策などもあり、北朝鮮にばかり関わってばかりはいられないだけでしょうか。

ともかくトランプ大統領の北朝鮮に関する主な発言と言えば、ミサイルや核関連施設に復旧の兆候が見られた時の「本当なら残念だ。」と、経済制裁に関して中国の企業へ制裁を課した後、北朝鮮そのものへの追加制裁がないことを改めて伝えたくらいです。

北朝鮮が何かフェイントをかけてきても動じない、あるいは予定調和だと言わんばかりの態度で、北朝鮮当局や国営メディアがトランプ大統領への批判をしないのには変わりない、外務次官などむしろ賛辞と受け取っても構わないコメントをしているくらいですから、『今は何もする必要がない』ということだと思われます。

既に第2回米朝首脳会談でアメリカからは『自己申告だけじゃなく、ウチで把握してる分も含めた非核化作業も発表しないとダメだよ』と、あるいはトランプ大統領からタイミングすら指定されていそうな状態ですから、時期が来るまではアメリカも北朝鮮も大きな動きはなし、と見るべきです。

いわば今は、おそらくは劇的な展開が見られる『劇場型』の第3回、あるいは第4回米朝首脳会談で成果を発表するための、下地作り、根回しという段階に見えます。
未だに『緊迫・朝鮮半島情勢』という表現を使うメディアもありますが、今はその段階にない、というのが当記事の見解です。

金委員長と側近の対立を予想する向きもあるが?

他に以前から金委員長の指導力に対して疑問を持つ勢力からは、「第2回米朝首脳会談で実績を残せなかった金委員長に対し、側近が離反を図っているのではないか」という指摘もあります。
しかしこれは今に始まった話ではなく、南北首脳の直接対話が実現した頃から見られる見解で、北朝鮮指導部内の穏健派と強硬派が対立しているという前提を必要としている以上、少々根拠としては弱いと言わざるをえません。

いかに強硬派でもアメリカを相手に戦争すれば身の破滅になるのは理解できていないはずもありませんから、金委員長の外交力をサポートしなければいけません。
これが穏健派ともなると、金委員長抜きではトランプ大統領との対話がマトモにできる『クリーンな人物』(北朝鮮当局や指導部高官はともかく、イメージチェンジに取り組み神格化を否定する金委員長自身のキャラクターは大事)がいなくなってしまいます。

もちろん、中国かロシアあたりが息のかかった人物を金委員長の後釜に据えるという陰謀論を展開してもよいのですが、そうそう簡単に『首のすげ替えが成功する国』など、アメリカや日本、韓国は元より、北朝鮮の国民や軍部ですら信用せず、かえってクーデター合戦になりかねません。
その時に戦火に巻き込まれるのはゴメンだという意味では中国もロシアも同様ですから、金委員長の立場はかえって盤石だと言えるでしょう。

唯一の不確定要素は、どうも最近北朝鮮から冷遇され、日本との関係は悪化し、アメリカからも中国からもあまり期待されていない韓国の文政権が何をするかよくわからないという点ですが、その文政権も韓国メディアにいよいよ愛想を尽かされたのか、近頃は批判的な論調で報道される事が目立ちます。

ここにきて文大統領も身動きがままならないようですから、トランプ大統領に弾劾などの一大事が起こらない限り、遅くとも夏の間に米朝間で大きな進展が見られるであろう、という当記事での主張は、今のところ変わりがありません。







菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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