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2019/03/4

菅野 直人

北朝鮮情勢『今年は本気でノーベル平和賞狙いか?トランプ大統領の野望』

2019年2月27・28日の2日間にベトナムの首都ハノイで開かれた第2回米朝首脳会談。既にアメリカのトランプ大統領が「これが最後ではない」と明言しているように、第3回以降も引き続き開かれるための布石に過ぎないと思われますが、2019年はトランプ大統領にとって特別な年でもあり、何らかの大成果を上げようと焦りの出る年化もしれません。







突然飛び出したトランプ大統領の「安倍首相がノーベル平和賞に推薦」発言

Donald Trump official portrait.jpg
By Shealah CraigheadWhite House, パブリック・ドメイン, Link

アメリカのトランプ大統領は常々世界を驚かせる発言と、確固たるというべきか頑固な意思貫徹が特徴的な大統領です。
最近も不法移民を防ぐべくメキシコとの国境に『メキシコの壁』を築くべく、2018年の中間選挙で下院の過半数を野党・民主党に奪還された議会と対立、連邦予算執行を止めてみたり、それでも議会が屈しないと非常事態宣言まで発令して壁の建設を強行しようとしています。

もうひとつトランプ大統領が熱心なのが北朝鮮問題ですが、驚いた事に2019年2月15日の記者会見で、こともあろうに日本の安倍晋三首相から「トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦した最も美しい手紙を贈られた」と発表してしまいました。

大統領曰く、「今の日本には、もう上空を弾道ミサイルが飛んで警報が鳴り響くこともなくなっただろう日本は私に感謝する理由があるんだ」ということらしく、なるほど確かに2018年に入って、第1回米朝首脳会談の可能性が取りざたされていたことからJアラートは鳴っていないのは確かです。

仮に一国の首相が他国の元首をノーベル平和賞に推薦するのが事実として、推薦される側の元首がそれを喜々として報告するというのは、いかがなものかとは思いますが、何事も『控えめ』という言葉が全く似合わないトランプ大統領らしいとも言えます。

もっとも、これには各メディアも疑問を持っており、「韓国の文大統領が推薦したのを混同したのでは?」「いや、実はホワイトハウス側がご機嫌取りで安倍首相に依頼したのだ」という説まで飛び交っているのが現状です。

トランプが北朝鮮問題でノーベル平和賞を狙いたいのは事実

しかし、トランプ大統領自身が積極的に『2019年のノーベル平和賞獲りを狙っている』のは、おそらく事実です。
というのも、2020年11月にはアメリカ大統領選挙を控えており、当然出馬するであろうトランプ大統領(近年、アメリカ大統領が自らの意思で1期のみの勇退で終わった例はありません)にとって、2019年12月に授賞式が行われるノーベル平和賞は、大統領選挙前に受賞できる最後のチャンス。

2019年に大きな実績を上げて年末にノーベル平和賞を受賞し、2020年は年明け早々選挙戦に向け弾みをつけたい……という目論見があると思われます。
メキシコの壁にせよ米朝首脳会談にせよ、何事もリップサービスで終わらせず剛腕を振るう大統領にとって、唯一欠けているのが『権威のある客観的な組織から贈られる最大限の賛辞』であり、ノーベル平和賞はまさにうってつけ!

あらゆる機会を捉えて受賞にまい進するとすれば、何をしたら終わりになるかわからないイスラム諸国の内戦や、世界のどこかの民族紛争にタッチするよりも、「何をすれば終わりなのかわかっている」北朝鮮問題にもっとも力を入れるのが当然と言えるでしょう。
そして何より、ノーベル平和賞を受賞した大統領を、アメリカ国民が選挙で落とそうとするでしょうか?

タイミング的に第2回米朝首脳会談は「まだまだ除幕」

思い返せばシンガポールでの第1回会談は何の成果も出さないパフォーマンスに見えましたが、その後の北朝鮮、というより金正恩(キム・ジョウンウン)委員長や、対外的なパフォーマンスに大きな影響を与えているように思えるのです。

まず金委員長自身が無駄に工場や農地、軍事施設などを視察する事が減り、対米批判は政府レベルではともかく指導者レベルではなくなり、2019年の年初の挨拶に至っては金委員長がスーツにネクタイを締めて、人民大会議場ではなくオフィスから行いました。

その放送内容が対外的な印象に大きな影響を与える朝鮮中央テレビのアナウンサーも、ピンクのチマチョゴリを着込んで張り叫ぶ高齢の女性アナウンサー(通称ピンクレディ)、李春姫女史が引退し、若手女性アナウンサーが西側ナイズドされたニュースを放送するようになっています。

第1回米朝会談で、トランプ大統領から「まず普通の国に見えるようにしてくれ、そうでないと誰も納得しないんだから」と金委員長がアドバイスを受けた結果、と考えると面白いところで、何より形から入るのは確かに重要です。
そうした北朝鮮の「形から軟化」が伝わるにつれ、実は北朝鮮の弾道ミサイル部隊は健在で、ちょっとやそっと視察したくらいでは全貌すらよくわからないというニュースも、かつての「不気味な帝国が何かやっている」という印象ではなくなってきました。

それが第1回会談の成果だとすると、第2回会談の成果は、いよいよ「普通の国同士が対話した」という、北朝鮮が決して野蛮な国ではなく、ちょっと危ないところもあるけど結局は話の通じる文明国の1つなのだと印象付けるところまでかもしれません。

一足飛びに朝鮮戦争の終戦宣言や北朝鮮の非核化宣言まで期待する向きもありますが、ノーベル平和賞向けのアピールとしては、トランプ大統領が既に開催を示唆している第3回以降の会談、おそらくは夏頃に大きな変化が生じるのではないでしょうか。

不安定要因なのか計算づくなのか? 奇妙なほどの韓国の対日強硬策

北朝鮮の対米軟化とともに印象的なのが韓国の対日強硬路線で、第2次世界大戦中の慰安婦問題、労働者問題で強硬な姿勢をとった(そして相変わらず1965年の日韓基本条約は無視)のに続き、海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射、その後も接近するだけで激怒。

さらに植民地時代の行為について天皇陛下の謝罪を求め、両国関係が悪化しているからと国際共同訓練にも国際観艦式にも海上自衛隊を招待しないなど、このまま戦争でも始めるつもりなのかという勢いで対日姿勢を極端に硬化させています。

もちろん、歴史的経緯からして少なくとも韓国政府が日本へ好意を持っておらず、あるいは持つ事を許されないのは従来通りと言えますが、さりとて急にここまで強硬路線に転じるキッカケがあったわけでもなく、正直ワケがわかりません。

とはいえ何か理由はあるはずですが、それが米朝直接対話により外交的存在感が希薄になっている危機感なのか、これで北朝鮮が開国したとして、トランプ大統領が約束する援助はどうせ韓国持ちだろうという焦燥感か。
あるいは中国に接近しようとしたものの米中貿易摩擦で板挟みになり、米中どちらへもつきにくいので外交的成果を対日強硬策で得ようとしているのかもしれませんが、どうも米朝関係がスムーズにいくほど日韓関係は悪化する法則でもあるのかもしれません。

第2回米朝首脳会談についても、韓国メディアは「拉致問題を棚上げにされかねないと日本は焦っている」という論調で、なぜか日本を心配しているような、そうでもないような姿勢でちょっと不思議です。
米朝会談の結果も気になりますが、それに連動して韓国(というより文政権)がどのような動きをするのかも、注意深く見守る必要があるでしょう。







菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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