• TOP
  • 女スパイにスナイパー!?『イナズマン』はハードな大人のドラマだった!

2019/02/7

笹木恵一

女スパイにスナイパー!?『イナズマン』はハードな大人のドラマだった!

イナズマンと言う名前を聞いたことがあるだろうか。1973年に放送開始された特撮ヒーロー番組で、写真を見ていただければわかる通り、時代を感じさせる風貌、もはやダジャレかどうかもわからないネーミングセンスと、いかにもチープな感じが漂ってくる。71年の『仮面ライダー』から始まった変身ヒーローブームにも陰りが見え始めたタイミングでデビューした彼の名前は、特撮オタクにこそ知られてはいるものの、一般的な知名度は皆無に等しい。しかし所詮一時の子供だあましで終わった番組なのかというとそうではなかった。最初の1クール目こそ他愛もないありふれたヒーロー番組だった。しかし2クール目以降から、物語に深みが増していき、3クール目に入りテコ入れとして番組がリニューアルされた辺りから当時の若くギラギラしたスタッフたちの暴走がはじまる。そして番組は誰も予想しえなかった姿へと変わっていくのだった。それはさながら、サナギマンからイナズマンに変身するかのように……

出典:謎の女その名はデスパー秘密捜査官







■イナズマンの基本設定

イナズマンこと渡五郎はごく普通の大学生だったが、本人も気づいていない潜在的な超能力の才能を見出され、悪の軍団“新人類帝国”と戦う超能力戦士イナズマンに変身する能力を与えられた。
イナズマンは所謂二弾変身するヒーローで、まずは中間形態のサナギマンに変身し、受けたダメージをエネルギーとしてチャージしてから最終形態のイナズマンに変身する。
彼にこの力を与えたのは少年同盟と呼ばれる超能力を持つ少年少女による秘密組織だ。劇中ではあまりの役に立たなさにしばし茫然としてしまう他、制服が異様にダサく、渡五郎に与えられた特別仕様の制服がまた輪をかけてダサい。これはあんまりだと思ったのか2クール目以降制服は無くなり、少年同盟も事実上登場しなくなる。何より1クール目をつまらなくしているのは、主人公の設定のいい加減さ。前述通り、渡五郎は単に超能力の潜在能力があるというだけでイナズマンに選ばれており、それ以外に彼が悪と戦う理由がないのだ。その為ドラマに深みはなく、ただ怪人を倒すだけの人になってしまっているのだ。さらに超能力戦士と言う設定を当時のスタッフがおそらく理解していないのと、技術レベルの問題もあり、生かし切れているとは言い難かった。しかし1クール目の終盤で、原作の石ノ森章太郎氏が脚本監督を務めたエピソードにて、当時で可能な超能力バトルを描き、さらに渡五郎の死に別れた筈の母親が新人類帝国に利用されていた事実が発覚し、五郎は自分と同じ境遇の子供たちを増やしてはならないという明確な戦う理由を与えられ、これ以降ドラマに深みが増していく。しかしそれでも番組の視聴率低下は止めることはできなかったようだ。
ちなみにイナズマンの愛車“ライジンゴー”の人気だけは高かったようで、玩具は飛ぶように売れたらしい。

■テコ入れのリニューアルのハズが、あらぬ方向に大暴走

人気低下に歯止めをかけるべく、番組はテコ入れのリニューアルを決行。番組名も『イナズマンF(フラッシュ)』となり、主人公以外のレギュラーキャラをすべて一新。新しい敵組織“デスパー帝国”が登場。イナズマンの相棒としてインターポールの荒井捜査官も登場する。普通に考えて子供番組のテコ入れと言えばもっと子供が喜ぶような新兵器や、ストーリー展開になるものだが、そうはならなかった。チーフプロデューサーの平山亨氏が他の番組で忙しく、サブプロデューサーの加藤貢氏が実権を握ることとなった。当時若者の間で人気だった芸術志向の作品に影響された加藤氏と若いスタッフ達は、自分たちのやりたいことを思いっきりやっちゃえ! とばかりに、おおよそ当時の、いや今の基準から見ても子供番組とは思えない内容の番組作りをはじめるのだった

■毎回出てくるワケあり女!

レギュラーキャストから女性がいなくなった代わりに、毎回女性ゲストがキャスティングされることになる。しかしそれが単に華を添えるだけにとどまらず、重すぎるバックボーンを持ったキャラクターとして登場し、毎回重すぎる話を展開していくのだ
例えば第18話はデスパーに家族を殺された恨みを晴らそうと、自らデスパーの一員になり、デスパー総統のガイゼルの暗殺を試みる女の話だが、デスパーに入る最初の試練が、共にデスパーに復讐を誓いあったはずの恋人を暗殺することだったというもの。
さらに第12話ではデスパーに支配されたデスパーシティという街が登場するが、そこで密かに反乱を目論むレジスタンスのリーダー格の女性がイナズマンと接触し、共にデスパー幹部たちの暗殺計画を立てる。だがその情報が何者かによって漏れてしまう。その内通者が女の弟だと発覚すると、彼女は弟と二人だけで外に出ると、何かを察して怯えて逃げ出す弟に銃を向ける。「デスパーの幹部になって外の世界を見たかったんだ!」と泣き叫ぶ弟を容赦なく撃ち殺してしまうのだ。
極めつけは第20話。デスパーが送り込んできた謎の女、ケシの花のパワーをそこら中にばらまくというヤバい奴で、そのパワーを浴び続けたイナズマンは突然彼女と精神世界での対話を始めてしまう。その対話の中で彼女と渡五郎は幼いころに友達だったことが発覚。父親がアメリカ人兵士だった彼女は村中の子供達からいじめられ、唯一の友達が渡五郎だったのだ。二人で砂のお城を作る度に、いじめっ子から壊されてしまう。彼女はその後、父親の帰国についていくが、父親が再婚すると次第に疎まれるようになり、ついには家を追い出され、荒んだ生活を続けていた末にデスパーに拾われて怪人にされてしまったというエピソード。時代的に彼女の父親は進駐軍であると思われ、日本での現地妻との間にできた子として、そして米国でも敗戦国での子として差別されるという問題を提起した話なんだろうけど、わかるかーいwww! そして彼女は渡五郎を守るために命を投げ出し、彼の腕の中で死んでいく。悪いのは彼女じゃない、砂のお城を壊したやつらなのだ! ちなみにこの女の相棒としてくる怪人ギロチンデスパーの造形は直視できないぐらいグロいぞ!



この他にもデスパーは憎いが、デスパーに入った兄を裏切れない女スパイ、目の前で友人を殺されて自分だけ生き残り自責の念に捕らわれる女等々。女だけではない、一流アスリートを拉致し、人間サファリパークに放って仮を楽しむデスパー軍団等、ヤバい話が目白押し! そのなかにたまーにサーカス団の少年と協力して敵を倒す話等、普通のヒーローモノをやってお茶を濁す回があってなんだか頭がくらくらしてくる。悪く言えばチープな見た目に騙されることなかれ。イナズマンは大人でも、いや大人だからこそ楽しめるヒーロー番組なのだ!

謎の女その名はデスパー秘密捜査官







笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

この記事を友達にシェアしよう!

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

サバゲーアーカイブの最新情報を
お届けします

関連タグ

東京サバゲーナビ フィールド・定例会検索はこちら
東京サバゲーナビ フィールド・定例会検索はこちら

アクセス数ランキング