- コラム
北朝鮮情勢・トランプ歴訪騒ぎと米空母パフォーマンス、そして不気味な兆候
2017/12/20
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2019/02/4
菅野 直人
2019年に入ってから第2回米朝首脳会談がどうやら決まりそうな雰囲気になる一方、北朝鮮の金委員長の年頭への挨拶ではアメリカに対する「融和と警告」双方の構えを見せるなど、相変わらず北朝鮮外交の巧みさが健在な北朝鮮情勢。しかしそれとは全く斜め上の方向から出現した問題が『韓国による対日軍事強硬路線』で、一歩間違うと毎月掲載しているこの『北朝鮮情勢』でたびたび警告してきた「韓国の仮想敵国化」が、現実になりかねなくなっています。
長年アメリカに対する瀬戸際外交を続け、国家体制存続を実現させてきた北朝鮮の外交センスは本当に大したものだと思いますが、現在の金正恩(キム ジョンウン)委員長による北朝鮮独裁体制は父(金正日 キム・ジョンイル)や祖父(金日成 キム・イルソン)とは違ったソフト路線へと転換も話題になっています。
2011年に急逝した父を継いで3代目指導者となってしばらくは「この若造」扱いでしたが、さすがに7年以上も独裁者をしていると自分のスタイルも身についてきたようです。
2018年は長年『北朝鮮TV界のピンクレディ』として君臨してきた、)ベテラン女性アナウンサーに代わって若い女性アナウンサーを起用、服装も民族衣装のチマチョゴリから洋装に代わり、政府当局の報道官はともかく、報道姿勢自体がソフト路線となりました。
さらに2019年の年頭、国民へ新年のメッセージを発した金委員長は人民服を着て人民会議場の壇上から演説スタイルではなく、何とスーツにネクタイで執務室から国民へ語りかける方針へ転換。
案外、2018年6月にシンガポールで行われた米朝首脳会談で、トランプ大統領から「キミんとこの国はちとカタい! こうすると近代国家っぽいから、ちょっとやってみてよ!」とアドバイスを受けたのではないか、そんなことまで考えてしまいます。
しかもアメリカはじめ世界各国からテロの首謀者扱いされていたはずの金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長は、今や気軽に訪米して米朝交渉のプロフェッショナルと化しており、場所こそまだ決まらないものの、2月下旬には第2回米朝首脳会談が実現する見通しも出てきました。
その一方、北朝鮮軍が2018年12月に『弾道ミサイル発射前の兆候だった周波数の信号』を発信してみたり、2019年1月に日本も射程に収めた準中距離弾道弾の『ノドン』新基地が衛星写真で見つかったりと、『ちゃんと見返りもらうまでは戦力増強続けます宣言』も欠かしません。
アメリカのトランプ政権もそこは心得たもので、第2回米朝首脳会談では具体的な非核化に向けたスケジュールや、それに対するアメリカからの見返りが話し合われると思われています。
反面、目立ってきたのが韓国メディアによる「第2回米朝首脳会談への警鐘」で、各種メディアがアレコレ書いているのを要約すると『期待しているとバカを見るぞ!』という警告です。
2018年前半はむしろ『ウチ(韓国)が戦場になっちゃかなわん!』とばかりに米朝融和に心くだいて文大統領も精力的に動き、南北首脳会談や文大統領の平壌訪問も実現させた韓国。
トランプ大統領がなかなか決まらない第1回米朝首脳会談の予定に業を煮やして会談中止を一度は決めた時など、板門店で緊急南北首脳会談を開いて米朝首脳会談を実現させるフットワークの軽さでした。
しかし、第1回米朝首脳会談以降にアメリカと北朝鮮が直接やり取りするようになると、2018年後半になってから北朝鮮問題に関して韓国の影が急に薄くなり、南北鉄道連結事業は起工式のみで進みませんし、金委員長の年内ソウル訪問も実現しません。
そのためか韓国、というより文政権は非常に焦りを強めているようで、アメリカが直接対話している北朝鮮や中国との間に何とか割り込みたいものの入り込めず、ヤキモキしている様子が明確になってきました。
北朝鮮に配慮したアメリカが米韓合同軍事演習の中止や大幅縮小を続々決めているのも韓国には国威発揚にも何もならないので面白くないようで、ひたすら北朝鮮との対話を続けようと、あるいは続けてもらおうとメッセージを送っています。
それに対して金委員長も「2019年は韓国と頻繁に南北首脳会談を開きたい」と言ってくれましたが、実現するまでは「はいはいそうだね、またよろしくね?」程度にしか受け取れないため、どうも妙な具合になってきました。
韓国の焦りが表面化したのは2018年12月、難破でもしたのか日本海で北朝鮮漁船を救助していた韓国海洋警察庁の警備艦と、周辺にいた韓国海軍の駆逐艦を監視していた海上自衛隊の哨戒機に、駆逐艦が突然『連続波』を発信。
捜索レーダーなら断続的な音が鳴るのに対し、砲やミサイルの照準のため連続的にレーダー波を浴びせるのは明らかに射撃管制レーダーなのですが、意図を確認した哨戒機に無返答だった挙句、後から「射撃管制レーダーは漁船の搜索に使っただけだ!」「やっぱり射撃管制レーダーなんて使ってない!」「そもそも日本の哨戒機が低空で接近して脅してきた!」と、もう支離滅裂です。
「ちょっとした事故だ済まない」で済む話をなんでそんなムキになっているのか? と誰もが不思議に思う中、2019年1月23日午後に上海と済州島の中間海域にいた韓国海軍の駆逐艦を監視していた海上自衛隊の哨戒機が「また低空飛行で脅してきた! 動画で撮影するから公開する!」「やっぱり画像にした! それ見ろひどいのは日本だ!」と、支離滅裂ぶりが加速しています。
そもそも、韓国海軍の妙な行動の前には第2次世界大戦時の韓国人徴用工への補償問題に関し、日韓基本条約(1965年)で韓国政府が日本の支払った保証金を国庫に入れてインフラ整備に使ってしまったのを、「日韓政府の取り決めはともかく、改めて日本の企業が補償しろ」と、これまた支離滅裂な韓国最高裁判決が出たばかりです。
しかも、判決後には以前の最高裁長官を「日韓関係に配慮して徴用工訴訟を遅らせた」と見せしめのため逮捕する暴走ぶりで、とにかく日本に関する全てが自国民ですら親のカタキのようになっています。
ここまで続くと日本国民としては「警察24時とかでよくやっている、繁華街の泥酔者の言い分を聞いているような感覚」として、もはや娯楽として捉える風潮すら出てきています。
しかし、これが北朝鮮問題と絡む可能性が出てきて、また妙な話になってきました。
2018年12月の『韓国艦レーダー照射事件』初期から「そもそも北朝鮮漁船と韓国海洋警察と韓国海軍は、あそこで何をやっていたの?」という話は出ていました。
表向きの理由としては、『遭難した北朝鮮漁船を、たまたま近くにいた韓国海洋警察の警備艦と韓国海軍の駆逐艦が、救助していた』というものですが、その通りなのであれば、レーダー照射云々はともかく通常の救助活動です。
しかし妙な事に『海上保安庁は北朝鮮漁船からの救難信号を受信していないらしい』という話が出てきました。
これは2019年1月7日、日本の国防部会・安全保障調査会合同会議において明らかになった事実のようで、なぜ当初からこの話が出なかったのか不明ですが、ともかくその通りであれば妙な話になってきます。
・少なくとも海上保安庁がモニターしている救難信号などは出していない北朝鮮漁船と、韓国海洋警察庁の警備艦がどうやったのか洋上でコンタクトした。
・その周辺になぜか韓国海軍の駆逐艦もいた。
・事情が不明なれど、海上自衛隊の哨戒機がとにかく監視していたら、いきなり駆逐艦から射撃管制レーダーで連続波を浴びせられた。
・何が何だかわからないので哨戒機が理由を問い合わせたが、誰も応えない。
どうも妙な話で、「救難信号も出していない漁船を、どうやって救助したの?」と疑問が持たれているほか、韓国海軍が2019年1月に入ってから「また海上自衛隊機が低空で威嚇してきた!」という日そのものやその前後には、北朝鮮の瀬取り行為が発見されています。
韓国海軍が必要以上に血圧を高めている裏には、説明が面倒な事態が起きている……と思われても仕方ないのですが、ともかく日本としては困惑するしかないのが現状です。
一番恐ろしいのは、世の中には『手段と目的を簡単に逆転させてしまう人がいる』という事実。
韓国側としても何か知られたくないことがあるのだとしたら、それ自体はもうちょっとバレないようにうまくやるか、静かに知らぬ存ぜぬで話題にならなくなるのを待って再開すれば良いのです。
しかし、目的を忘れて「バレるとマズイから、もっとオオゴトにして何がなんだかわからないことにしてしまおう!」としているのが現状で、しかも相手が大事件だと認識するまでエスカレートさせ続けかねません。
この韓国の動きに対し、北朝鮮もアメリカも「所詮は日韓関係、この混乱からどう利益を得るかが大事」と思っているうちはいいのですが、次第に日本から相手にされなくなった韓国が、次はどこに混乱の元を作り出すかとすれば。
前にも書きましたが韓国という国はまだ若い上に政治や外交面で成熟した国とは言えず、日本の植民地支配を受けるよりはるか大昔からの歴史的経緯からくる民族的コンプレックスにより、外部からのコントロールに対して免疫がある国ではありません。
どう考えても韓国が得をするとは思えない現状から、漁夫の利を得るのは一体誰なのか?
北朝鮮かアメリカか、あるいは中国か、まさかのロシアか。
北朝鮮情勢が落ち着いている今、わざわざ韓国を支離滅裂にさせて不安定要因を作り出しているのは誰なのかを、そろそろ考えた方がいいかもしれません。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
2018/01/2
Gunfire
1
2018/03/31
Gunfire
2
2018/01/11
Gunfire
3
2018/05/29
Sassow
4
2018/12/4
Gunfire
5
2017/07/26
Sassow
6