- コラム
ランペイジ 巨獣大乱闘~今年最高の脳筋バカ映画!~
2018/06/14
笹木恵一
すごいー! たーのしー!
2018/11/1
笹木恵一
男たるものデカいことしたいじゃないですか。いい女を抱きたいじゃないですか、金も欲しいじゃないですか! 力が欲しいじゃないですか! でも身の丈に合わない力を手に入れてしまったら? 本当はヘタレ野郎なのに、自分イケてるじゃんと勘違いしちゃったら? あなたも、あなたも、そうあなたもこの映画の渡瀬恒彦みたいになっちゃうかもしれませんよ?
出典:鉄砲玉の美学
うだつの上がらないヘタレチンピラの小池清はロクな稼ぎもなく、風俗嬢の彼女のヒモのくせ、その彼女に八つ当たりするようなダメ人間。そんなある日、清の所属する広島暴力団天佑会は九州に進出するきっかけ作りの為の鉄砲玉を探していた。百万円とハジキを目の前に二つ返事で買って出た清。九州のM市に着くや否や、金に物を言わせ傍若無人に遊びまわる。ところが地元ヤクザの南九会は全く反撃の気配を見せないどころか、ぺこぺこと頭を下げ、これに歯向かうものがあろうものなら清の目の前で袋叩きにする始末。
それもそのはず、清に手を出せば天佑会に進攻の理由を与えることになるのだ。南九会幹部である杉町の情婦で元モデルの潤子も清になびいた。徐々に自分が鉄砲玉ではなく本当に大物になったと錯覚していく清。今までどんなに足掻いても掴めなかったモノをすべて手に入れた清は、いつしか穏やかな表情を浮かべ、当初の目的も忘れて満ち足りた日々を送っていた。
しかしそれも長くは続かなかった。清が女に現を抜かしている間に、南九会は関西連合会の後ろ盾を付け、天佑会も進攻を断念、今や清は敵からも味方からも追われる身となっていたのだ。いままで清になびいていた女たちも皆いなくなってしまった。行き場のない清は警察にも追われ、独りゴミ溜の中に逃げ込んでいく……
それまで東映で任侠モノ映画を撮り続けていた中島貞夫監督が、ヒーローヤクザ路線に行き詰まりを感じ、低予算ながら作家性、芸術性を重視するATGで撮影した一本。同じ年には東映から深作欣二の『仁義なき戦い』が発表されており、やくざ映画にとっては転換の年だった。
なんといっても今作の主人公、渡瀬恒彦演じる小林清のキャラクターの何と素晴らしいことか! すばらしい? うーん……とは言え、ちっともカッコよくないし、なんなら見れば見る程情けない。見てらんないといった方がいいか。使い捨てられる鉄砲玉として送り込まれ、貰った金とハジキで高級スーツに身を包むも、着ているというより着られている、鏡の前で何度もカッコいい名乗り方を練習する、罠とも知らずに女に煽てられて鏡の前でニヤつく。それでいていざ人を撃ち殺そうとすれば、ビビって一発も撃たないまま逃げ出す始末。
この清というキャラクター、やくざ映画の主役にしてはあまりにも等身大すぎる、あまりにもメンタルが普通過ぎる。元々はコックを目指して修行していたが、金も女も無く、毎日エロ本と自分で描いたエロ絵で手淫にふける日々を思い出しながら、目の前にいる最高にいい女を這いつくばらせてワンと鳴かせるその姿に、こっちの方が泣けてくる。ヤクザとしてギラギラしているときは悲壮感しか漂わせていなかったのに、旅行先で彼女の為に手料理を作ると、元コックとしての腕を振るっているときの方が輝いているではないか。周りの料理人たちも清の腕前に感心しているぞ。ああ、こいつコックとして生きているほうが本当に幸せになれたんじゃないのか? 自分が本当に大物になったと勘違いした挙句、結局悪い大人の手の中で踊らされていただけと気づいて、しまいにゃベソかきながら死んでいくあまりにも悲惨すぎるラスト。しかしなぜかこの主人公に惹かれてしまう自分がいる。身の丈に合った生き方しろよって思うだろ? てめぇはコックがお似合いだぜって思うだろ? けど誰が文句を言える? 誰だって金が欲しいさ、いい女を抱きたいさ、力が欲しいさ。それを求めて飛び出したコイツは何も間違っちゃいねぇ。誰がこいつに手錠をかけられるっていうんだ、ふざけるんじゃねえよ! 動物じゃねえんだぜ!?
幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。
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