- コラム
ランペイジ 巨獣大乱闘~今年最高の脳筋バカ映画!~
2018/06/14
笹木恵一
すごいー! たーのしー!
2018/10/25
笹木恵一
都会の喧騒を離れて悠々自適な田舎暮らしを、とか考えている人はいませんか? 田舎の人はみんな親切。田舎の料理はみんなおふくろの味。ちょっと不便だけど田舎に行けば心はポカポカ。田舎に行けばこの世は天国。なーんて考えてる、甘ちゃんな都会人たちに田舎のダークサイドをこれでもかと叩きつけるべく、1971年にサム・ペキンパー初の長編現代劇として制作されたのが今回紹介する『わらの犬』だ! 主演はみんな大好きダスティン・ホフマン。ヒロインのスーザン・ジョージが超かわいい。これさえ見れば、田舎へは銃を持って行くべしという教訓を得られるはずだ!
出典:わらの犬 (字幕版)
アメリカの都会生活に嫌気がさした数学者のデイヴィッド・サムナーは、妻のエイミーの故郷であるイギリスの田舎町に引っ越し、穏やかな生活を送ろうとしていた。ところがどっこいこの田舎の住人達は仕事もせずに毎日飲んだくれていて、よそ者と見れば陰口をたたいて小ばかにし、おまけに妻のエイミーにいやらしい目線を送るクソ野郎ばかり!
しかしデイヴィッドは良く言えば争いや暴力を嫌う平和主義者、悪く言えば腰抜けなので、文句の一つも言えずにエイミーからも呆れられ、夫婦関係も悪化していく。村人たちの嫌がらせは日に日に過激になっていき、飼い猫が惨殺され、しまいにゃ近所の若者に狩りに行こうと誘われて、ノコノコついていくがこれは罠で、デイヴィッドがのんきに鳥を撃っている間に、一人留守番のエイミーは若者たちに輪姦されてしまう。エイミーはそのことを夫に言い出せないままトラウマで統合失調っぽくなってしまう。
そんなある日、教会のパーティに呼ばれたサムナー夫婦だったが、先の事件のトラウマでエイミーの体調が悪くなったので一足先にお暇するが、その日は霧が深かったこともあり、道すがら人を撥ねてしまう。とりあえず家に連れて帰り医者に見せるまで看病するが、その男は精神薄弱の青年ヘンリーで、どうも過去に性犯罪を犯したことがあるらしい。以来大人しくしていたが、この夜は逆ナンされて女の子と一緒にいるところを見られ、ブチキレたその娘の父親(もちろん飲んだくれ)と取り巻きの若者たちから追われている最中だったのだ。
ヘンリーをリンチすべくデイヴィット宅へ向かう荒くれ田舎者軍団。エイミーはヘンリーを引き渡そうというが、ここでデイヴィッド信念を見せる。怪我人を見捨てるなんてできない! ここは僕の家だ、暴力は許さない! デイヴィッドはただのヘタレじゃなかった! 村で唯一の友人スコット少佐が仲裁に入るも、もみ合いの末に殺されてしまう。それを見たデイヴィッドの心に眠る虎が目覚めた!
このクソったれの田舎者どもめ! テメェらいままで好き勝手やってくれたが、もう堪忍袋の緒が切れた!皆殺しにしちゃるけぇのぉ! ヒャッハー! と、雄たけびを上げ銃をバンバン撃ちまくる暴徒と化した田舎者相手にデイヴィッドは一人立ち向かう。暴力の世界に飛び込んだデイヴィッドは、もう元の世界には戻れなくなっていた!
古い作品なのでなかなかテレビでかかることはないが、もし本作が今地上波で流れたら、すぐにチャンネルを変えられてしまうだろう。というのも前半は殆ど何も起こらない。起こらないだけではなく、ただイライラする場面が連続するだけなのだ。
よそものとして嘲笑される主人公たち、その主人公も理屈っぽくて、ヘタレで見ていくうちにフラストレーションが溜まっていく。ヒロインにしたって旦那にかまってもらえないからと、書斎の黒板に落書きする、ガムをくっつける、読書の邪魔をする等、お前は中学生かと言いたくなるほど精神年齢が低く、夫婦仲に徐々にひずみが生まれていく。しかし何も起こらない、ただイライラするだけなのだ。
この塩梅がまあ上手い。下手な監督ならここでやりすぎてしまう、怒鳴りあいの夫婦喧嘩や、もっと大きな事件を起こしてしまう、もっと状況を悪くしてしまう。いきなり悪い状況がドーンとくると、一度観客の怒りが発散されてしまう、しかしそれは最後の最後まで見せない。発散できない程度のイライラだけを募らせていくのだ。名匠サム・ペキンパー流石である、いかに観客にもどかしさを与えるかがわかっている。
このイライラの段階があるから、途中の猫の死体からの妻レイプに至ってもなお観客はイライラを温存させている。そして最後の最後に一気に爆発させる。だからこそクライマックスが際立つ、暴力が際立つ。あんなにイライラさせられても、ここに至るまでモヤモヤしていても何もしなかった主人公がついに暴力に訴える。現在の大衆向けられた見やすい映画、丁度いいイライラ、ちょうどいい溜め、ちょうどいい発散とは正反対である。
面白くなかったら即別のものへ飛んでしまうテレビやネット動画にはない演出。映画ならではの面白さ、これが映画、これこそ映画だ。映画が映画たりえた時代の映画だ。
この世界に魅了されたら、主人公の言う通り“帰り道がわからない”なんてことになってしまうのかもしれない。
リメイク版もあるらしいけどあんまりいい評判は聞かない。今度見て見る。
幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。
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