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2018/10/18

笹木恵一

G.I.ジョーはどこへ行く?~男児玩具の歴史を変えたミリタリーフィギュアの歴史~

G.I.ジョー』という名前を聞いたことがない人はいないだろう。しかし年代によって何をイメージするかは違うかもしれない。50代より上の世代にとっては30センチの兵隊フィギュア? いやいや10センチぐらいで兵隊もいるけどヘンテコな恰好をしたフィギュアでアニメもやってたよ、って人は今30~40代ぐらい。若い世代にとってはハリウッドの映画で見たことがある人も多いだろう。G.I.ジョーは長い年月の中で様々な形に変化し世界中で愛されてきた。今回はその歴史について紹介しよう。

G.I.JOE







アクションフィギュア誕生!

G.I.ジョーの登場まで、男児向けの人形玩具は存在しないと言っても過言ではなかった(40年代にスーパーマンの木製人形が発売されているので全く無いとは言えないが、男の子が人形で遊ぶ文化は一般的ではなかった)。1950年代の終わりから、着せ替え人形の『バービー』がマテル社から発売されると、女の子に絶大な人気を集める。当然男の子向けのバービーを作れないかと考える者が現れた、彼の名はスタン・ウェストン。スタンはこのアイディアをハズブロ社に売り込み、このアイディアを元に研究開発部門のドン・レヴィーンが、この企画に乗り気でない当時の社長の反対を押し切り、全身の関節が可動する兵隊人形のサンプルを作った。
実際の米軍から銃やバズーカ等の装備品を借りてきて、それを元に精巧な縮尺模型を作り人形に持たせたところ、その高い完成度に社長もついに首を縦に振り、G.I.ジョーは完成した。しかしこの人形をどう呼ぶかが問題となった。そのまま「人形」=“DOLL”では、当時バービーをはじめとした女の子向け玩具のイメージが強く、男児から敬遠される恐れがあった。そこでハズブロは「動く」=“Action”、「人の形をしたもの」=“Figure”という言葉を組み合わせて「アクションフィギュア」という新しい単語を生み出した。1964年にこの30センチの兵隊フィギュアが発売されると、男の子にとって初めてのカッコイイ人形玩具は瞬く間に大ヒットし、ハズブロも急成長を遂げた。

衰退と再生

ベトナム戦争がはじまると、アメリカ国内では反戦運動が活発化し、兵隊フィギュアの人気にも陰りが見え始めた。軍事色の薄いスキューバダイビングや冒険家のフィギュアで一度は盛り返すものの、それでも徐々に人気は落ちていき、オイルショックによる原油高もあり、70年代終盤にG.I.ジョーは一度その幕を下ろす。
G.I.ジョー休止している間、アメリカの玩具業界を変える一大事件が起こってた。77年に『スターウォーズ』が公開されると、ケナー社から発売されていたスターウォーズフィギュアが大ヒット。スターウォーズのフィギュアはすべて10センチの手のひらサイズでコレクション性も高く、何よりこの人形を乗せる戦闘機や宇宙船の玩具が飛ぶように売れていたのだ。
アクションフィギュアのトレンドは10センチになり、各社がこれに倣った。80年代に入りハズブロはG.I.ジョーブランドの復活を試みる。サイズはスターウォーズと同じ10センチだが、一番の違いは初代G.I.ジョーと同じく各関節が自由に可動するということ。当時の10センチフィギュアの多くは、腕と足を前に動かせる程度の可動しか持っていなかったのだ(10センチで関節可動自体はMEGOという会社が先にやっていた)。さらに、ハズブロはこの新しいG.I.ジョーにキャラクター性とバックグラウンドを設定。G.I.ジョーはアメリカ軍に所属する地上最強のエキスパートチームの名前で、そこに所属する兵士たち一人一人に名前と詳細なプロフィールが与えられた。同時にG.I.ジョーと戦う悪のテロリスト集団『コブラ』の設定も誕生し、リーダーのコブラコマンダーをはじめとした個性豊かな悪役たちのフィギュアも発売された。
それだけではない、G.I.ジョーのキャラクターを世に知らしめるべく、マーベルコミックスと契約し、G.I.ジョーのコミックも発行された。当時としては珍しいコミックのテレビCMが流れ、それを見た子供たちがコミックを買い、そこで活躍するカッコいい兵士たちのフィギュアを親にねだるという、マーベルとハズブロの双方WIN-WINの関係が出来上がり、ここにテレビアニメも加わってG.I.ジョーのフランチャイズは80年代の少年たちを虜にしたのだ。

終焉再び、そして現在

世界中で大ヒットした新世代のG.I.ジョーも、90年代半ばには再びその幕を下ろす。その後幾度かの新シリーズが作られ、2000年代に入ると80年代のアニメとコミックを元にした実写映画も公開された。
現在でもアメリカの各地でコンベンションが開催されたり、10センチのフィギュアを現代の技術でリメイクしたマニア向け商品も出てはいるものの、正直なところかつて程の輝きを取り戻しているとは言い難い。特に現在は15センチ(6インチ)前後のアクションフィギュアがメインストリームになっており、10センチフィギュアブームを作ったスターウォーズでさえ、今では6インチのフィギュアが人気を集めている。今のところG.I.ジョーがこのサイズに対応する様子はない(00年代半ばにちょろっと出たことはある)。
アクションフィギュアの原点であり、現在の男児玩具の基礎を作ったG.I.ジョーがいつの日か完全復活する日が来るのを願ってやまない。
YO JOE !”

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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