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2018/10/11

笹木恵一

現代やくざ 血桜三兄弟~モグラはぼくらのお友達~

最近やくざ映画ばかり紹介していますが、今回もやくざ映画です。その名も『現代やくざ 血桜三兄弟』。監督は実録路線の名匠中島貞夫。主演は菅原文太兄ぃなんだけど今回はちょっと影薄め、でも決めるところでやっぱり決めてくれるからむしろカッコいい。その弟役でストーリーの中心人物となるのが、いまだに水戸黄門の格さんと言えばこの人って感じの伊吹五郎。さらにその弟分をエネルギッシュに演じるのが渡瀬恒彦。タイトルの“三兄弟”っていうのは、実の兄弟と弟分で合わせて三兄弟という意味なのだ。そして個人的に一番大好きなのが荒木一郎演じるボンクラ青年。挿入歌として野坂昭如の『マリリンモンロー・ノーリターン』が使用されている。これがまた一度聴いたら耳から離れなくなるぞ。

出典:現代やくざ 血桜三兄弟







ストーリー

岐阜の街に大阪の巨大組織『誠心会』の組員川島がやってきた! この男、人の女を寝取るわ、賭場は荒らすわ、純粋可憐な花売りの少女のバージンを奪うわ、もうやりたい放題。しかし地元ヤクザの『広道会』は戦争になることを恐れて何にもしない! 戦争が始まったら始まったで、最初こそ意気込んでいたものの、援軍に来るはずの関東の組織が来ないとわかるや否や急に尻すぼみ。そして責任を組員である邦夫とその弟分武に擦り付けて、2人は追われる身に! これには邦夫の実の兄で、今はカタギとなった武もブチキレ。バー店員のボンクラ青年も加わって、3+1人はなんか馴れ合ってる誠心会と広道会のお偉いさんをブチ殺しに出撃する。彼らこそ人呼んで血桜三兄弟

レビュー

冒頭でも言ったけど、今回の文太兄ぃは出番は少ないけどまぁカッコいい。というのも文太兄ぃの演じる武は、元ヤクザではあるが今はカタギでバーを経営していて、中盤のあるシーンとクライマックスまでは話の中心からは外れている。しかしそこが、一線は引いたものの、いざっていうときに頼りがいのある一面がより一層目立つ演出になってむしろカッコいい! ストーリー上でも邦夫にとって、親分親分と慕っていても、いざというときに何もしてくれないどころか、自分たちに牙を剥く組織の上役達との対比にもなっている。しかも邦夫のキャラ造形も、学がないとはいえ真面目一直線で、常に仁義を重んじる性格であるがゆえに、後半信じていた組織に裏切られた悲しさが引き立っているからこそ、それを守る兄の正義漢っぷりが際立つというもの。渡瀬恒彦演じる宏もなんかやんちゃで良い。

そして何よりも今回注目のキャラクターは荒木一郎の怪演が光るモグラこと信男だ。武の経営するバーの店員だが、こいつのボンクラっぷりが見ていて胸が痛い。26歳童貞で、年下の宏にすらオドオドと下手にでる情けなさ。店の興行でストリップショーの照明係をやれば、興奮しすぎて終わったら別のストリップ小屋に行き、そこで片思いしている花売りの少女を妄想しながら自慰行為にふけるのだから見てらんない。しかもその好きな子はおっさんに寝取られちゃうし(ちなみに今回は文太兄ぃも同じ男に女を寝取られるぞ!)。

今までいろんなヤクザ映画を見てきたが、これほど共感できるキャラがいただろうか。ヤクザ映画なんて出てくる人は基本犯罪者だけど、それでもどこか男として憧れるし、というか絶対にこんなにはなれないような人ばかり出てくる中で、これほど僕らボンクラの胸を打つキャラがいただろうか。いや、俺もボンクラだがここまで落ちぶれちゃいないと思いたいが、自分に嘘はつけないよ! しかしこの男、劇中である展開を左右する重要なキャラでもあるのだ。しかしそれを知る者は誰もおらず、友達も恋人も失い、ただ窓ガラスにほっぺたをくっつけているしかできないというのがなんかもう悲しすぎるのだ。でもそんなもんだよね人生って。悩もう、悩もうよみんな悩んで大きくなったんだから

現代やくざ 血桜三兄弟

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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