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2018/09/28

菅野 直人

2018年9月の軍事トピック「さよならの日も近い?スペシャルマーキングが目立つ日の丸ファントム」

毎月起きる中で注目したい軍事的な出来事を紹介する『今月の軍事トピック』。2018年9月はいよいよ退役間近い航空自衛隊の戦闘機F-4EJ改ファントムのスペシャルマーキングがちょっとした話題になっているようで?







1973年以来40年以上日本の空を守ってきた戦闘機、F-4ファントム

JASDF F-4EJkai.JPG
By 100yen投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

航空自衛隊の戦闘機といえば、最近は最新鋭ステルス戦闘機F-35Aの納入も始まり最初の実戦部隊も発足間近、これでわが空自の備えも盤石よフハハ……という話題が増えてきています。
そのF-35Aですが、現時点では航空自衛隊の主力戦闘機F-15J『イーグル』の後継というわけでは無く、もう1世代古い戦闘機、F-4EJ改『ファントム』の後継機として2個飛行隊分の導入が決まりました。

間もなく退役が確定したファントムは空自初期の主力戦闘機F-86F『セイバー』後継として1969年に導入決定、1971年から1号機の納入が始まり、1973年10月に最初のF-4EJ部隊が正式発足します。
9年後の1982年には空自第2世代の戦闘機F-104J『栄光(アメリカ名スターファイター)』の後継としてF-15J『イーグル』の配備も始まり、日本の空はファントムとイーグル、そして支援戦闘機(戦闘爆撃機)の三菱F-1によって守られる時代が到来したのです。

同時期、ファントムは既にイーグルに対する能力不足の差を埋め、生産数が予定より少なく終わったF-1の穴も埋めるべく改修が決まり、電子装備を更新して導入時には外されていた戦闘爆撃機としての任務もこなせる『F-4EJ改』が1989年から配備開始。
従来からの迎撃戦闘機としてはもちろん、F-1では2発しか積めない対艦ミサイルを4発搭載可能な対艦攻撃機としても有力な戦力となりました。

その後F-1およびF-4EJ改、高等練習機T-2の後継としてF-2戦闘機が配備されると戦闘爆撃機としての役目を終えますが、現在でも首都圏の防空を担当する百里基地(茨城県)に2個飛行隊、予備機も含め約50機程度のファントムが未だに配備されています。
さらに戦闘機型のほか、同じ百里基地に偵察型ファントムのRF-4E/EJが約13機程度配備中です。

漫画では『ファントム無頼』や『エリア88』ウィスキー・ファミリーでも活躍

濃いミリタリーファンは元より、そうでない人にもファントムの名声を大いに高めた漫画が『ファントム無頼』(1978-1984年・策:新谷かおる)です。
同時期に新谷かおるが連載していた中東のアスラン空軍外人部隊の活躍を描いた『エリア88』ともども、近代ヒコーキ漫画の金字塔的作品になった『ファントム無頼』。

本来は『ファントム無頼』が女性向けに熱い男を描いた作品、『エリア88』が男性向けに冷酷な外人部隊の世界を描いたはずが、実際には『ファントム無頼』に男性ファンが、『エリア88』には女性ファンが多数ついてしまったとも言われます。

『エリア88』の方では、爆撃任務で大活躍し、地上空母へもとどめを刺した『ウィスキー・ファミリー』編隊がファントムで地味に活躍したり、殺し屋チャーリーの乗機になったりもしましたが、やはりファントム大活躍といえば『ファントム無頼』。

百里基地ファントム部隊の奇想天外コンビ、『カン・クリ』(神田・栗原)ペアが何かというと大暴れ、空母に着艦するくらいは楽勝で、何かというとトラブルで不時着したり、東京湾で巨大タンカー消化に活躍したりとファントムらしからぬ活躍を見せます。

しまいにはマッハ2.6(本当の最高速はマッハ2.4)で飛行するなどF-4EJの限界を超えた性能すら発揮しますが、共通するのは『演習や威嚇、災害派遣任務以外で決して実弾を使わないこと』。
抜かずの剣』を誇りとする空自ファントムの姿に、当時は多くの少年・青年が共感したものでした……今の右傾化した日本なら『何してるんだよ領空侵犯したら撃墜しないとおかしいだろう』とか、普通に叩かれそうなのが寂しい世の中です。

小ネタとして『ファントムおじいちゃん無頼』も外せません。アニメ化希望!

なお、『ファントム無頼』は特に続編が作られることもありませんでしたが、最近になって同人活動をしている方がファントムなど陸海空自衛隊現用機や米軍機その他も含め擬人化した『ファントムおじいちゃん無頼』というコミカルな漫画を描いています。

すっかりご老体になって要介護(笑)のファントムおじいちゃんのほか、常識的苦労人のイーグル兄さん(F-15J)やイケメンのバイパーゼロさん(F-2)、まだ日本語に慣れないライトニングくん(F-35A)やペットのチヌーク(CH-47J)など楽しい仲間が勢ぞろい!
ちなみにベレンコ中尉亡命事件(1976年)は未だにトラウマらしく、未だに家出してきたフォックスバットさん(Mig-25)の夢を見るほか、節分にはアグレッサー(飛行教導隊)が鬼の仮面をかぶって出てきます。

メインは4コマ漫画ですが一発ギャグ的に炸裂する大爆笑ネタもあり、通もうなる小技も効いていますから、是非とも検索してみてください。
筆者は割とマジで『ファントムおじいちゃん無頼』のアニメ化希望です。

『だんだら模様』のファントム320号、ラストフライト!

ところで『ファントム無頼』には主役の神田・栗原ペア用の680号機(2代あり、初代の機体番号47-8680、2代目は07-8680で、いずれも機首に末尾3桁『680』が大きく書かれる)と、途中からレギュラー出演に昇格した西川・水沢組の320号機が登場しています。

現実の空自ファントムには『680』号機は存在しない(機体番号が301から440までのため)ものの、『320号機』(機体番号37-8320)が現存することは知られていました。
その320号機が2018年9月5日に百里基地を離陸した時、それを見ていたファンは息を呑みます。
だんだら模様!! ファントム無頼仕様だ!!

かつて2010年の百里基地祭でも、『ファントム無頼』登場機に準じてエアインテークにだんだら模様を施したファントムが飛行、ファンを沸かせましたが、その時は320号機ではありませんでした。
しかし、漫画と同じ320号機がだんだら模様を施したのは初めてで、twitterなどネット上では「ただならぬ事が起きた」と大騒ぎになったのです。

結局、真相は『用途廃止前のラストフライトのため、最初で最後に施すことができたスペシャルマーキング』だったらしく、既に空自から国の管轄下に置かれたため百里基地航空祭(2018年12月2日)での展示も難しいのではないか……との事。
残念な話ですが、9月5日にたまたま百里基地を訪れて『西川・水沢ペア仕様』を目撃した人は幸運でしたね。

西へ東へ、白いオジロワシ・スペシャルマーキングファントムは飛ぶ

ファントム無頼仕様320号ファントムはもう飛ぶことはありませんが、変わって各地の航空祭を回って気を吐いているのが302飛行隊の純白に鮮やかなマーキングを施した通称『オジロファントム』。
同隊のシンボルとして通常は垂直尾翼に描かれているオジロワシを白い機体の機首から大きく描きこんだもので、2018年度中にはF-35Aへの機種転換を完了、三沢基地に移動する同隊は今年がファントムで最後に参加する航空祭のため、派手なサヨナラフライトを行っています。

よって『オジロファントム』も今年各地で行われている航空祭が見納めとなりますが、2020年度には垂直尾翼にマフラーを巻いた『ケロヨン』マークの301飛行隊もF-35Aに機首転換予定です。
再来年にはどのような『ケロヨンスペシャルマーキング』が飛び出すのか、今から楽しみやら嬉しいやら?

なお、偵察501飛行隊のRF-4E/RF-4EJも同時期に退役と言われていますが、F-15J用偵察ポッドの開発に失敗した空自では偵察用ファントム退役後にどうやって同様の任務を継続するのか未だ不透明です。
偵察専用の後継機は作らず偵察飛行隊を解散することまでは決まっていますが、それがいつになるかはまだ不明なため、案外『ファントムおじいちゃん』はまだまだしばらく飛び続けるのかもしれません。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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