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2018/09/24

菅野 直人

縁の下の力持ち!海自艦艇を助ける数々の支援船たち

多数の護衛艦や潜水艦など戦闘艦艇と輸送艦、給油艦、潜水艦救難艦など戦闘力を持つ、持たないに関わらず支援艦艇も豊富な日本の海上自衛隊ですが、その運用は多数の支援船によって支えられています。今回はそんな地味ながらも非常に重要な縁の下の力持ち、自衛艦籍に無い『支援船』の紹介です。







自衛艦の出入港には欠かせない『曳船』

船舶の中には比較的小型で入出港時に桟橋や埠頭につけるにも自力で可能なものもありますが、ある程度以上の大きさになれば曳船(タグボート、えいせん)が狭い港内で押したり引いたりと、細かい動きを助けてあげるのが普通です。
それは海上自衛隊の大小さまざまな自衛艦でも同様で、純粋に民間のみで使用されている港へ親善訪問する時はともかく、海上自衛隊の護衛隊が配備されている港では自前の曳船を使います

JMSDF YT-01 right front view at Maizuru Naval Base July 27, 2014.jpg
By Hunini投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

現在の海上自衛隊で運用されている中でもっとも大型なのは260t型の『曳船58号型』で、その他、小型の50t型タグボート『75号型』も就役中。
58号型は1978年に就役した1番船『曳船58号』から40年たった今でも建造は続いており、2012年に就役した曳船99号以降は100番台を使わず2013年就役の『曳船1号』から番号は戻りました。

海上自衛隊では護衛艦や潜水艦の数を増やしており、周辺情勢の変化で寄港する海外艦艇も増えている事から、今後ますますその重要性は高まります。
なお、単にタグボートとしての役割に留まらず、放水銃も備えていざという時には消防船としての役割にも担うほか、2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の際には汚染水容器となる分割されたメガフロートを現地に曳航する災害派遣も行われました。

真水や物資補給に自衛艦の支援のみならず災害派遣でも活躍する『水船』

水船20号
By Hunini投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

自衛艦にはもうガスタービンやディーゼルに置き換えられて無くなりましたが、主機関が蒸気タービンの船が多かった頃には『真水』の補給が重要でした。
もちろん飲用水など他にも真水の用途はあるので今でも『17号型』8隻が維持されているのが310t型の水船(みずぶね)で、水のほか多少の物資を運ぶ用途にも使われます。

災害や渇水などで水道が使えなくなった地域に真水を運ぶ災害派遣用途にも重要な船なので、蒸気タービン艦が無くなった現在でも維持されているわけです。

小型タンカー『油船』

JMSDF Towada AOE422.jpg
By Yasputin投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

海上自衛隊では『とわだ』級や『ましゅう』級の大型給油艦5隻を保有していますが、それらの任務は洋上給油。
それでは港ではどこかの給油桟橋に横付けして給油するのかといえば、そういうケースもあるものの基本的には数の限られる給油桟橋の順番待ちをするより、『油船』と呼ばれる小型タンカーで給油してしまうことも多いのです。

そうした任務の必要性に応じた給油のほか、ドック入りする自衛艦から燃料を抜いたり入れる役割もあり、他の多くの支援船同様、港内だけでなくある程度の外洋航行能力も持っています。

現在は490t型の『25号』型18隻が艦艇燃料用に、270t型の『203号』型5隻が艦載ヘリなど航空燃料用、2隻が艦艇燃料用に配備されていますが、将来の海上自衛隊がF-35B戦闘機など燃料を食う飛行機を『いずも』級護衛艦などに常時搭載するようになると、増勢が必要になりますね。

なお、蒸気タービン艦が多かった頃は『重油船』もあり、他に航空燃料用の『軽質油船』もありましたが、現在は『203号』型5隻の軽質油船を除き全て退役し、『油船』に統一されています。

現代の大発? 『運貨船』と『交通船』

船首の板を倒すと海岸に直接物資や車両を下ろせるバウ・ランプを持つため揚陸艇のような見かけをしており、実際その能力を持つため旧軍の『大発(大発動艇)』の現代版とも言えるのが『運貨船』。
現在就役しているのは50t型の『9号』型7隻で、クレーンで艦艇と港を結ぶ物資の積み下ろし船として利用可能なほか、必要とあれば災害派遣などで海岸に直接揚陸を行うことも可能となっています。

運貨船14号
By Hunini投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

そのほか、人員輸送に特化した『交通船』も25t型の『2121号』型が9隻就役しており、9号型は少々大きすぎるものの、『2121号』型は『おおすみ』級輸送艦のウェルドック(艦内注水ドック)に収容して上陸用舟艇にも使用可能です。

ただ、直接人員を揚陸可能な兵器として水陸両用装甲車のAAV7を陸上自衛隊が保有しており、将来的には国産モデルがその後継になるであろうことや、災害派遣も含めた重装備や物資輸送にはホバークラフトの『LCAC1号』型がある事から、これら運貨船や交通船が『おおすみ』級で使われることは、実際にはそうそう無いでしょう。

なお、交通船にはもっと小型で6t型の『2088号』型や12t型の『2123号』型などもあります。

飛行艇を保有する海上自衛隊ならではの『設標救難船』

海上自衛隊では世界的にも珍しい救難専用飛行艇US-2を配備していますが、その運用に欠かせないのが『設標救難船』で、現在は60t型の『1号』型2隻が就役しています。

飛行艇が岩国基地へ離着水する際の着水路標識の設置や海面警戒、事故を起こした時に消火活動を行うなど運用支援全般を担い、任務が任務なので支援船としては珍しく最高速力19ノットと港内用船舶としてはかなりの高速航行能力を持つのが特徴です。

未発見機雷や爆発物の処分、墜落事故時の捜索などに活躍する『水中処分母船』

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By Yamada Taro投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

今では話題になることも少なくなりましたが、1970年代までは第2次世界大戦時に日米いずれかが設置した機雷がまだ残っており、その処分で海上交通路の安全を図るため海上自衛隊の掃海部隊が活躍しました。
その後も残置機雷は全く無くなったわけではなく、それとは別に不発弾など爆発物が海中から見つかることもあり、海上自衛隊各基地には『水中処分隊』と呼ばれる部隊が今でも常設されています。

かつては現役掃海艇が、その後は老朽化した掃海艇が水中処分母船として活躍してきましたが、掃海艇の大型化や高機能化、旧式艇を回すにしても使い勝手の良い専用船を建造した方がよいという考え方もあって、2000年から300t型の『1号』型水中処分母船6隻が就役しました。

なお、機雷や爆発物だけでなく、その水中捜索機材を活かして飛行機の墜落事故などで捜索に駆り出されることも多々あります

小さくとも航海用機器は護衛艦並な『練習船』

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By Brian Burnell, CC 表示-継承 3.0, Link

専門の練習艦『かしま』や旧式護衛艦を格下げした練習艦、練習潜水艦を保有している海上自衛隊ですが、それらは『本物』で兵器などを習熟するための艦艇であり、単に航海訓練だけならそこまで大型の艦は要しません。
そんなわけで、航海に関わる操舵、見張り、信号、通信、電測(レーダー)などの設備は護衛艦と同等のものを揃えた170t型練習船『13号』型2隻を保有しています。

その他目立たない小舟も多数

ここまで紹介したのは、支援船の中でも『いかにも海上自衛隊』とわかるような船ばかりですが、もちろん他にも手漕ぎ船の『カッター』や、航海訓練用の小艇から特殊部隊の特別警備隊(SBUまたはSGT)用ゴムボートも含めた機動船』など多数あります。

これらは純粋に『縁の下の力持ち』以外の用途で使われているものもあり、また民生用をそのまま使って軍用と見分けのつかないものもありますが、カッコイイ護衛艦ばかり目が行きがちなところ、海上自衛隊の保有船舶は多種多様なので『』な目線を養ってみてください。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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