- コラム
デッドプール-新時代の映画キャラクターの在り方-
2018/06/7
笹木恵一
すごいー! たーのしー!
2018/08/23
笹木恵一
今回紹介するのは以前紹介した『デッドプール』の続編で、今月からデジタル配信がスタートし、ブルーレイとDVDも来月発売となる『デッドプール2』だ! 主演はもちろんライアン・レイノルズ。原作ではデッドプールとの凸凹コンビでおなじみケーブルを演じるのは、同時期にアベンジャーズシリーズでラスボスのサノスを演じているジョス・ブローリン、今回は未来から来た一応正義の戦士だ! 日本からも『3年B組金八先生』やドラマ版『名探偵コナン』で毛利蘭を演じた忽那汐里がキュートな日本人少女役で出演。監督は前作のティム・ミラーからデビット・リーチに交代し、ギャグのハチャメチャ度は前作以上になっている。
出典:http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/
前作から2年。デッドプールことウェイドとその恋人ヴァネッサはいまだにイチャラブしまくっていた、リア充爆発しろ! ところがデッドプールに恨みを持つ麻薬商人からの報復に合い、その巻き添えでヴァネッサが死んでしまった。ショックのあまり自らを爆破するウェイド、リア充爆発しろなんて言ってゴメンね。しかしその特異体質故に死ぬことすらできないウェイドを見かねて、X-MENのコロッサスはデッドプールを正式にチームに招き入れ更生させようとする。しかし最初の任務で早速やらかす。ミュータント専用孤児院でグレて暴れる14歳の少年ラッセルの暴走を食い止めるために出動するも、孤児院の職員による虐待を知ったウェイドは大勢の人の見守る中有無を言わさず職員を殺害。これが大問題となり、ウェイドとラッセルは共にミュータント刑務所に送られるが、さらにそこへケーブルというサイボーグ戦士が未来からやってくる。彼の目的は未来の世界でさらにグレて最強最悪のテロリストとなったラッセルを子供のうちに殺してしまうことだった!刑務所を脱出したウェイドはラッセルを守るために自らの新チーム“Xフォース”を結成すべく、求人広告を出すのだった!
前作の監督ティム・ミラーは制作サイドと目指す方向性の違いから降板し、デビット・リーチが新たにメガホンをとった今作は、前作以上にコメディ路線に舵を切っている。ギャグの密度は計測不能なほど高くなり、常に画面上のどこかでギャグが発生しており、カッコいいアクションシーンですらつねにお笑いに徹している。あまりにもギャグの密度が高すぎてラストの一見感動的なシーンですら、もしかしてこれもギャグなんじゃないだろうかとまで思えてくる。その他にも現在の社会問題やコミック、映画、その他大衆文化をおちょくるセリフが常に挟まれていて、おそらく見る側の知識が深ければ深いほどこれほど笑えて、人によっては疲れてしまうことだろう。
あまりにもふざけ過ぎていて映画全体としてのバランスが崩れてしまっていると評されることもあり、たしかにその通り。前作のデッドプールのキャラクター性が気に入って、ひたすらに彼の悪ふざけを見たい方にはおススメ。一方で前作のストーリーやバランスが好きな人には厳しいかもしれない。
今作で興味深かった部分として前作から引き続き登場するネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(長い名前だなぁ……)と忽那汐里演じるユキオは同性の恋人同士という設定だ。現在世界中で多様性を受け入れる流れが活発となり、ハリウッド映画でも当たり前のように同性愛者が登場するようになったのだが、一方でこのユキオの黒髪に紫のメッシュの入った日本人の女の子というビジュアルが議論の的となっている。というのも、近年のとくにアメリカにおける日本人の描写として“ピンクや紫の髪をした女の子”が新しいステレオタイプとなっているのだ。日本人からすると、そんな髪色の子自体結構珍しいのでピンとこないが、海外から見るとアニメや一部のアーティストの映像から日本人の新しいイメージとして定着しているらしい。かつての出っ歯でメガネと比べれば大分マシだし、このユキオ自体には悪意を全く感じず、むしろKAWAII日本の女の子として非常に魅力的だと思うのだけどね。しかし問題は悪意の有無ではなく、一部の国、文化圏の人々の描き方が単一化されてしまうことが懸念されているのだ。日本にいるとこの辺の問題はあまり身近に感じないので、すこし簡単に考えてしまいがちだ。
この新しい価値観と古い価値観が同居している今作は、ある意味世界が意識改革の途上にあった作品としても後世で語られることになるかもしれない。
幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。
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