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2018/08/9

笹木恵一

仁義の墓場~狂気と暴力の馬鹿騒ぎ~

仁義の墓場』は石川力夫という実在のヤクザの半生を綴った同名小説を原作に『仁義なき戦い』シリーズの深作欣二監督によって製作された。渡哲也の東映初主演作で、梅宮辰夫、ハナ肇、成田三樹夫に田中邦衛、安藤昇等々、豪華出演陣による実録ヤクザ映画の大傑作だ!

出典:仁義の墓場







ストーリー

終戦直後の混乱期、新宿を拠点とする河田組石川は兄弟分の今井達と、三国人の愚連隊や、池袋から新宿進出を狙う池袋信和会の連中とやりあったりと大暴れの毎日。

ところが時代が進みヤクザ社会も暴力よりも金儲けや事なかれ主義がまかり通るようになり、信和会との抗争も進駐軍に金を渡し鎮圧して貰うなど、石川の望む暴力の世界とはかけ離れたものになっていった。ついには選挙に出馬するような「俺たちは愛されるヤクザになろうってわけだ」な奴まで現れる。

かつては共に暴れていた今井も中野今井組を興し、すっかり保守的になってしまった。度重なる石川の暴走に目をつぶってきた組長河田も堪忍袋の緒が切れるが、石川は逆に河田を刀で切りつけ重傷を負わせて逮捕される。1年6か月の懲役の後、河田からは十年所払いを言い渡され大阪へ移るも、飽くなき暴力への欲望を抑えきれずにヘロインに手を出し彼の体はボロボロになっていくが、それでも抑えきれない暴力衝動から1年で東京へ戻る。

ついに石川はの自身を最後までかばい続けた今井を射殺。全てを敵に回した石川を追い詰めるべく、河田組、今井組、そして警察からも包囲されるが、それでも石川は抵抗をやめずに拳銃一丁で立ち向かっていくのだった。

レビュー

今作を見て最初に思ったのは、これはまるで以前紹介した『狂い咲きサンダーロード』じゃないか。いや製作年代的にはこちらの方が先だが。大まかなプロットはほぼ一緒。大きく違うのは主人公の性格が、『狂い咲き』の仁さんは決して口が上手いわけではないが、思ったことをすべて口に出し、自分の行動に迷いがない。

一方今作の石川は口下手どころではなくハッキリ言ってコミュ障といっていいぐらい自分の気持ちを言葉にすることが全くできない。それでいて自身の行動に対しどこかうしろめたさを感じている節もあるが、それでもなお胸の中にたぎる暴力への渇望を抑えきれずに最悪の形で爆発させてしまい、結局はその為に大事な人を失ってしまうのだからやりきれない。

遂にはヘロインに手を出しさらに身も心もむしばまれていく姿はおぞましくもどこか美しく、まさに滅びの美学と言わざるをえない。壁に「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」と残し、屋上から飛び降りて自らを葬り去った石川。彼を最後に止められたのは彼自身でしかなかったのだ。愛する者達を犠牲にしてきた彼に仁義等全く関係が無いようにも思えるが、その墓石には「仁義」の二文字が刻まれている。安定と共に次第に自由を失っていく社会の中で、唯一彼だけが自分自身に対して仁義を突き通していたのではないだろうか?

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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