- コラム
北朝鮮最新情勢「日韓対立で問題が複雑化する中、沈黙に近い北朝鮮」
2019/01/4
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2018/08/8
菅野 直人
何となく煮え切らないままダラダラ続いている感のある北朝鮮情勢ですが、北朝鮮もアメリカも『少しずつ進める』ようで、外交的ババ抜きを進めているようにも見えます。良くも悪くも、劇的な変化は当面無さそうです。
もはや米朝首脳会談の頃の熱気はどこへやら、劇的な変化を期待する方が無理とも言える北朝鮮情勢ですが、それでも7月に入ってからは北西部の西海(ソヘ)にある衛星ロケット発射場で、施設の解体開始が確認されました。
これはアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が合意したとみられる内容に基づき実行されていると見られており、北朝鮮の場合は衛星打ち上げロケット=事実上の弾道ミサイルだったことの裏付けにもなります。
この動きに対し、「既にICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験プログラムは終了しているのだから、解体しても何ら意味が無い」という分析も目立ちますが、ひとつだけ言えるのはここからミサイル発射実験や衛星打ち上げが行われる事は、当面無いということです。
実際問題として、発射そのものはトレーラーで運搬される移動式発射機を使えばいくらでもできますし、ミサイル製造施設が北朝鮮のどこにももはや存在しない、と確認されない限りは、アメリカにとっての脅威が去ったとは言えないのですが、どうするのでしょうか。
さらに北朝鮮は、2018年7月27日に朝鮮戦争で行方不明になっていた米兵の遺骨、その一部を返還しました。
ただし変換したのは55柱前後と見られ、他に保管している150柱については「アメリカが今度は譲歩する番じゃないのか?」と出し惜しみしている形です。
これに対しトランプ大統領は「ありがとう。引き続きよろしくね。」程度のサラっとしたコメントしか出しておらず、少しずつでもいいから進展しているなら、別に焦らないしいいや、というスタンス。
これに対して北朝鮮の方がジリジリと焦れているようで、「朝鮮戦争の終戦宣言はどうなった!?」と言い出しています。
北朝鮮としてもどこまで譲歩したらアメリカが動くのかがさっぱりわからない上に、思い切った大盤振る舞いで譲歩しても「ああ、ありがとう」で済まされる可能性があるため、小出しにするしか無いようです。
実際、北朝鮮のことなど忘れた、あるいはもう終わった話だと言わんばかりに中国との貿易問題や人権問題(イスラエルに肩入れしすぎるアメリカも、人権問題は正直中国のことを言えないのですが)に熱中しており、北朝鮮はスルーされて困っているようにも見えます。
あまりアメリカに、というかトランプ大統領に無視されても困る北朝鮮としては、「中国じゃなくこっちを見ろ!」とばかりにまたミサイルの発射準備でも進めればいいように思いますが、今のところそうした動きは見られません。
そんな事をしても経済封鎖をそのまま続けるだけでアメリカにとっては何も困りませんし、北朝鮮の後ろ盾である中国もアメリカとの経済的・外交的論争の中で北朝鮮カードを切ろうにも、アメリカから非難の口実を与えるだけという状態です。
ではアメリカが一方的に押しまくっている状況かと言えば何事にも限度がありますが、少なくとも今は「北朝鮮はよほどゴネ始めない限り放っておいていい」という状況に見えます。
時折、北朝鮮からの強硬的な発言が報じられることもありますが、ここでポイントなのは「北朝鮮当局からはともかく、金委員長からアメリカを非難するようなコメントは何も無い」ということです。
アメリカにとっては金委員長だけを相手にする事として、『北朝鮮当局筋』のコメントは無視することに決めたようにすら思えます。
実際、アメリカが何か譲歩することがあるとすれば、金委員長が訪米を決めるなど、何か決定的なトップ外交が無い限り必要が無いと決めているのかもしれません。
あるいはそれが『米朝首脳会談における大きな成果』だったのでしょうか。
それでは日本への影響はどうかと言えば、ここ数年日本海の好漁場『大和堆(やまとたい)』に大挙して押し寄せては違法操業を繰り返し、海上保安庁や水産庁の取り締まりに公然と抵抗していた北朝鮮の漁船団は、2018年シーズンに関しては見られないようです。
それなら日本漁船は安心して操業できるかといえば、スルメイカ漁が極端な不漁という全く別な問題を抱えていますが、あるいは北朝鮮も不漁とわかって出てこないだけなのかもしれません。
いずれにせよ日本海は静かなもので、日本海沿岸の原発警備を強化したり、秋田県や山口県に設置を目指していた弾道ミサイル迎撃用の『陸上イージスシステム』イージス・アショアの設置も全く盛り上がりに欠けます。
地元住民にせよ、防衛省にせよ切羽詰まったものが無い状況なので、肩透かしを食らって困惑している状況が続いている一方、イージス・アショアを導入できなければ何をもってアメリカとの貿易不均衡を解消すべきか、日本政府当局としても頭の痛いところでしょう。
その一方、北朝鮮は韓国との関係正常化の次は日本との関係修復も視野に入れていると言われており、2018年春には『日本対策室』のようなものが北朝鮮内部で発足したという情報もあります。
積極的か消極的かは不明ながら、隣国のひとつには違いない日本を無視もできず、日本にとってもそれは同様なので、アメリカに譲歩すべきところが無くなって行き詰れば、いずれは日本の出番も来るのでしょうか?
ちなみにアメリカですが、『朝鮮戦争の行方不明者はまだたくさんいるので、国内での共同発掘作業を再開(1996~2005年には行っていた)してくれるなら、今回返還された遺骨の分も含めて金を出す』とコメントしています。
資金を出すということは経済封鎖を解く第一歩にも繋がることなので、北朝鮮がアメリカからの発掘団(だけかどうかは不明)を受け入れるかどうかが、今後のカギとなりそうです。
両国のジワジワとしたやり取りは、まさに『国際外交的ババ抜き』の様相を呈していますが、ババ(経済制裁)を握らされている北朝鮮がポイントを稼ぐ日が来るのか、その結末がどうなるのか、それが見えてくるのにはもう少し時間がかかるかもしれません。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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