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2018/07/12

笹木恵一

劇場版 銀河鉄道999~中二少年よ戦士の銃をとれ!~

今回紹介するのは松本零士原作の大人気漫画『銀河鉄道999』の劇場映画版だ。出演は主人公星野鉄郎を野沢雅子、謎の美女メーテルを池田昌子、999の車掌を肝付兼太。監督は今作が長編初となるりんたろう氏で、監修として市川崑が関わっている。

出典:銀河鉄道999







ストーリー

富裕層が金に物を言わせ機械の体を手に入れ永遠の命を得ることが当たり前になり、一方生身の貧困層の命は軽んじられ、事実上人権の無い最悪の格差社会となった嫌な未来が訪れた。主人公の星野鉄郎は最愛の母を機械伯爵によって殺害され孤児となるが、いつか自分も機械の体を手に入れ母の仇を討つことを誓う。その為に惑星間を行き来する銀河鉄道999の切符を手に入れようと仲間と共に盗みを働き、警察に捕まりそうになったところを謎の美女メーテルに助けられる。メーテルは鉄郎に999の定期券を与え、タダで機械の体をくれるという惑星まで自分のボディーガードとして同行することを要求する。かくして鉄郎とメーテルの旅は始まった。行く先々で出会う人々、生と死、幾多の困難を経て、少年は男として成長していく!

レビュー

今作は1979年に公開されるや否や、特に当時思春期の少年少女から絶大な支持を集め、原作者松本零士の人気は頂点に達し70年代後半から80年代前半にかけてのアニメブームの大傑作となった。それもそのはず今作には思春期の、大体中二ぐらいの少年の心をガッシリつかんで離さない内容がてんこ盛りだ。自分を全否定する社会に抗う主人公の前に現れる絵に描いたような絶世の美女、しかも彼女は常に主人公を温かく包み込み、全てを肯定してくれる。それでいて彼女を守るのが自分の使命だなんて、そんな妄想男の子なら一度はしたことあるだろう? さらに行く先々手出会う歴戦の戦士、渋いおっさんたちも主人公を全肯定し、救いの手を差し伸べてくれる。待ち受ける巨大な悪に立ち向かいそれを打ち倒し世界を救う! そう、これは中二の男子の妄想をすべて盛り込んだ一大中二スペクタクルなのだ! というとまるで、思春期の少年に都合のいいだけの作品に聞こえてしまうがそうではない。鉄郎のピンチに駆けつけたハーロックをはじめオジサンたちのなんと楽しそうなことか。なぜなら主人公鉄郎は“青春”の象徴であり、同年代の少年少女から見れば自分たちの代弁者だが、年配者から見れば過ぎ去りし日の自分、二度と帰れない思い出の姿なのだ。だから劇中で鉄郎の協力者となるオジサンたちは鉄郎に協力しているのではなく、かつての自分自身に対しエールを送っているのだ。

もし子供の頃に銀河鉄道を見たことがあるというかとも、久しぶりにご覧になってみてはいかがだろうか?そこには“少年の日の心の中にいた青春の幻影”が待っているのかもしれない。

銀河鉄道999

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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