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2018/06/27

菅野 直人

仮想戦記に登場!作家のセンスのバロメーター的存在だった『変わり種零戦』の数々

今は紙の本の出版が低迷しているので昔ほど『量産』されなくなりましたが、ブームだった頃は週刊誌かと思うくらい出版ラッシュの続いた仮想戦記。戦艦大和と零戦が登場する話が圧倒的に多かった印象ですが、この両者は作者の好き勝手な独自改造型が登場することも多かったものです。今回はその中から『変わり種零戦』をいくつか紹介します。







仮想戦記に多い「零戦がこうなっていたら」

ソロモン諸島上空を飛行する西澤飛曹長搭乗の零戦二二型 (A6M3)
By IJN – Source: photo from english wikipedia [1]; Original source: perso.orange.fr, パブリック・ドメイン, Link

日本海軍の零式艦上戦闘機、略して零戦(れいせん)、あるいは通称ゼロ戦として知られる戦闘機は、日本のレシプロエンジン搭載戦闘機(※飛行機や自動車の場合、レシプロとはガソリンエンジンだと思えばいいです)の中でも随一の知名度を誇ります。

極端な話、エンジン1基で機体前部のプロペラを回して飛び、翼が一枚の単葉機なら全部『ゼロ戦』だという人が日本人には多いかもしれません。

陸軍には隼や鍾馗もあるし、海軍にだって紫電改とか烈風とか……」と口を出したくなるかもしれませんが、ゲームをする機械が全部『ファミコン』と言われていたのと同じで、アレコレ種類があると言っても「あーなんだかわかんない!」と面倒くさがられるのがオチです。

ですから、単なる流行というだけで有象無象の名作珍作駄作が『量産』された仮想戦記には、とにかく零戦の登場が多いものでした。
もちろん、現実の太平洋戦争でも後継機不足で零戦は多用されましたから、太平洋戦争を舞台にした作品で零戦ばかり登場するのは無理もありません。

しかし、そればかりでもマンネリというわけでは無いのでしょうが、零戦は作者のオリジナリティを発揮する格好のキャンバスでもあり、ある意味ではオリジナル零戦を見ると、その作者のセンスがわかるという目安でもありました。

木製零戦『木零戦』(紺碧の艦隊)


紺碧の艦隊×旭日の艦隊 Blu-ray BOX スタンダード・エディション 1

仮想戦記ブームの火付け役、荒巻 義雄作『紺碧の艦隊』シリーズ初期に登場した『木零戦(もくぜろせん)』は文字通り木製の零戦。
紺碧の艦隊』および派生作『旭日の艦隊』シリーズでは、「日本には木の資源が豊富で木工職人もたくさんいたんだから」という理由で木製機を出したり、後には木製のダミー戦艦『八咫烏(やたがらす)』すら登場させています。

木零戦もそうした『日本にある資源の有効活用例』で、登場人物は『後世から魂がタイムスリップした』という設定ですから零戦の限界と後継機不足をよく理解しており、零戦が通用するうちにサッサと後継機を作ろうとしました。

ただし、技術力のみならず大量生産に必要な工業力の限界も理解していましたので、工場での生産を新型機に転換したり、その部隊配備が進むまでのつなぎとして零戦を何らかの形で継続しなければいけないのもまた事実。
そこで、金属資源や生産設備などを圧迫せずに木工所でも作れる木製零戦を『木零戦』として、しばらく使い続けたのでした。

全金属製の零戦に比べれば多少性能は落ちるものの、強力な連合軍機が登場する以前なら何とかなる……というわけで、そこそこ合理的な考え方ではあります。
もちろん、木製機というのは単に素材を木にするだけではなく構造も結構変わりますし、加工法や接着剤なども航空機向けのものを開発しなくてはならず、史実の大日本帝国ではちょっと無理な話でした。

おそらくこの世界では他の新技術と並行して航空機用木工技術や、計画的な製材業や木工業者の育成も行われていたと考えられます。

唸れDOHC VTEC!『零戦四三型』(青き波濤)

小惑星の衝突により現代日本の関東地方が丸ごとタイムスリップ、1942年初頭、太平洋戦争開始直後の関東地方と入れ替わった……という設定の羅門 祐人作『青き波濤』。

太平洋戦争初期の日本の軍事力に現代日本の技術や頭脳を合わせて、太平洋戦争を戦い抜き戦後まで長く続く仮想戦記ですが、零戦も出版当時1994年以降の日本が持ち得た最新技術を使ってチューンナップされます。
それも、戦後日本で大きな技術的貢献を為した人物を知っているわけですから、タイムスリップに巻き込まれなかった地域からその人物(もちろん若き日の)を連れてきて、とにかく好き勝手やらせました。

そんなわけで若き日の本田 宗一郎(ホンダ)などが最新技術を身につけながら零戦をああでもない、こうでもないといじくり回し、ついに完成したのが『零戦四三型』。
二一型~二二型あたりの零戦のエンジンをホンダDOHC VTEC採用の液冷エンジンに載せ換え、それに合わせて機体各部もリファインしたほとんど別機です。

もちろん零戦譲りの運動性能はそのままに、抜群の加速性で(同じくタイムスリップしてアメリカに逃亡した)在日米軍のF-14トムキャットにすら対抗可能と整備士が太鼓判を押すほどの名作でしたが、実際の実力は所詮プロペラ戦闘機としては高性能程度。

ただ、実際に信頼性や耐久性の問題を押してまでそのメカニズムを採用する意味があるかはともかく『VTEC零戦』は単純明快なカッコ良さがあります。

落とされない零戦を目指した「零戦四二型乙」(ラバウル烈風空戦録外伝)

史実とホンのちょっと違う大日本帝国と太平洋戦争』により、少しはマシな戦いぶりを見せるとともに、新兵器も続々登場する日本を描いた川又 千秋作『ラバウル烈風空戦録』シリーズの外伝に登場。

タイトル通りの烈風(零戦後継になるはずだった新型艦上戦闘機)が登場するのはもちろん、その後継となるジェット戦闘機すら登場する同シリーズですが、新型機開発が次々に成功する一方で生産が間に合うわけもありません。
ジェット機の配備が始まる一方で、内地のそれほど重要では無い基地だとまだ九六艦戦すら並んでいるという状況ですから、前線の一部では零戦を使っている部隊があるのも当然でした。

パイロット養成にも時間がかかるので、旧式ではあっても操縦しやすい零戦はそうした未熟で技量優秀というわけでもないパイロットを早期戦力化するにも最適。
とはいえ、強力になる連合軍の戦闘機に全く対抗できないのも問題なので、アレコレ考えられた末に開発されたのが零戦最終型(この世界では五二型以降は無い)の四二型乙でした。

基本的には二二型をベースに主翼の武装を20mm砲2門から7.7mm機銃6丁に換え、機首上面の2丁と合わせて8丁装備。
一見すると武装劣化、しかも『四二型乙』は『しに・おつ(死に・墜つ)』とも読めるため、パイロットからは「装甲を強化した連合軍機相手に、しかもこんな縁起の悪い型式の機体で戦えるか!」と忌み嫌われるのでした。

しかし、このエピソードの主人公はベテランでありながら負傷上がりで新米パイロットばかりの部隊指揮官を押し付けられた上に、この誰も乗りたがらない四二型乙を割り当てられ、すっかり不貞腐れてしまいます。
それでも命令あらば仕方ないと出撃してみると、新米でも敵機の攻撃を楽々かわす運動性を持ち、ベテランが攻撃してみれば、多数装備された小口径機銃の乱射で小穴だらけにされた敵グラマンはあっさり落ちていくのでした……。

そう、『零戦四二型乙』とは、その旋回性能で未熟なパイロットの生残性を上げ、ベテランなら楽に攻撃位置へつけるという基本コンセプトだったのです。
ちなみに、小口径多銃装備型零戦で同様のコンセプトは、横山 信義作『八八艦隊物語』などにも見られます。

驚異の日独合作! クルト・タンク博士が改造した『ヌル(0)』(第五航空戦隊奮戦録)

英国艦隊撃滅す―第五航空戦隊奮戦録 (ケイブンシャノベルス)
もっとも異色の変わり種零戦は、青山 智樹作『第五航空戦隊奮戦録』シリーズに登場する『ヌル(0)』かもしれません。

史実よりちょっと早く、対イギリス・オランダ限定で始まった太平洋戦争で、日本海軍きっての猛将、角田 覚治提督率いる第五航空戦隊がインド洋、地中海を経てドイツ軍と合流、大西洋でも戦い続ける仮想戦記。

地中海に入った段階でドイツ占領下にあった南フランスの軍港で休養と修理、整備補修を受ける第五航空戦隊ですが、エルヴィン・ロンメル率いるドイツ北アフリカ軍団への航空支援で艦載機を酷使したため、ドイツ空軍の手で艦載機もオーバーホールを受けます。

その中でエンジンの消耗が激しかった零戦の一部を、フォッケ・ウルフ社の名設計者クルト・タンク博士が改造することになり、中島『』空冷エンジンをユンカース『ユモ』系液冷エンジンに換装。
冷却系追加で機体バランスを取るため、重くて大型、しかし高性能の無線機を搭載した結果として編隊空戦に不可欠な空中電話の性能が飛躍的に向上し、空戦性能だけでなく空戦法にすら革命を起こしたこの戦闘機は、零戦の『』のドイツ語訳した『ヌル』と名付けられました。

さすがに航続距離こそ減少したものの、陸上攻撃機や戦略爆撃機の長距離護衛をするわけでもないヨーロッパ戦線では問題無く、むしろドイツ空軍の主力戦闘機メッサーシュミットBf109より長いほど。
後に日本から補給されたものの、現地調達すべしとエンジン無しで送られてきた零戦三二型へ、より強力なダイムラー・ベンツDB605を搭載したヌル』も登場します。

第2次バトル・オブ・ブリテンに勝利したドイツ軍の、イギリス本土上陸作戦開始を見届けた第五航空戦隊が日本に帰国、マリアナ沖海戦に第1機動艦隊主力として参戦するまで『ヌル』は活躍を続けました。

数ある『仮想戦記オリジナル零戦』の中で、飛行性能は元より通信性能の向上で戦力底上げを狙ったという意味でも異色の『ヌル』は、バランスに優れた零戦最高傑作かもしれません。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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