- コラム
オスプレイは危険な飛行機か? 軍用ティルトローター/ティルトウイング機の歴史
2017/01/20
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2018/04/23
菅野 直人
森林火災などにさっそうと飛来し、大量の消火剤をブワ~っと撒いてはまた近隣の飛行場に引き上げる“ウォーターボマー”。日本では水を入れるバケット(大きなバケツ)を吊り下げたヘリくらいであまり一般的ではありませんが、海外では多くの飛行機が活躍しています。それも余剰になった中古航空機、軍用機も数多く、ウォーターボマーといえば飛行機と思う人にはビックリな機体も?
By USN – U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1985.048.081.007, パブリック・ドメイン, Link
まずは順当に、ウォーターボマーとしてイメージされがちな飛行艇からです。
マーティンJRMは1942年7月に初飛行したアメリカ海軍の四発長距離哨戒爆撃飛行艇で、B-29より巨大なまさに「巨人飛行艇」のひとつ。
ただし、初飛行した頃には既にB-17やB-24が洋上哨戒にもバンバン飛んでる頃ですから、わざわざ飛行艇でそんな任務をする必要も無いな、ということで輸送機に転用されることになり、上陸作戦の行われた海岸へ直接補充兵を運んだり、傷病兵を収容できるようにしました。
しかし、戦争が終わるとそんな飛行機もいらないなということになり、結局生産されたのは6機のみ。
戦後も使われたあとに民間に放出、そのうち4機が約30tもの水を積めるウォーターボマーに改造され、墜落したり他に売却されたりした機体もあったものの、2018年現在も1機がウォーターボマーとして現役にあるようです。
他の機体も後継機が中古のC-130輸送機だったりと、現役輸送機の中古機はまだまだ余剰があるので、日本の新明和が目論むようなUS-2ウォーターボマー版など、新型飛行艇を海外に売り込む余地はあまり無さそうですね。
(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Martin_JRM_Mars)
By moonm, CC 表示-継承 2.0, Link
意外な例としては中古旅客機も数多くがウォーターボマーに改造されており、わりとポピュラーなのは各国で大量に使われながら、短距離旅客路線からは燃費や騒音の問題でほぼ引退しつつあるダグラスDC-9など。
一時期大量使用されながら今や出番が無い旅客機で他に典型的な例がボーイング747で、昔は「空港が途中に無い洋上など長距離飛行する旅客機は4発エンジンじゃないとダメ」なんて規則があったのですが、それが撤廃されると途端に経済的な双発機に置き換えられました。
物機などに転用される例もありますが、中にはその巨体を活かしたウォーターボマーに改造された747もあり、重量物輸送も可能な搭載能力で、90t以上という大量の水を投下します。
さすがに長くて頑丈な滑走路のある飛行場でしか離発着できませんが、ひとたび飛来すれば壮大な光景を目にすることでしょう。
うわ、ついにB747-400のウォーターボマーが誕生! グローバル・スーパータンカー社の機体で、元エバーグリーン航空のB747-400BCF。8分割されたタンクを持ち、合計20万ポンド(約90.7トン)以上もの消化剤を搭載できる。 https://t.co/PqCj9gHBsm
— 咲村珠樹 SAKIMURA Tamaki (@SabreF86) 2016年9月21日
(参考:https://twitter.com/sabref86/status/778603104291827712)
By Aleksandr Markin – Il-76md landing, CC 表示-継承 2.0, Link
旅客機はもちろん、軍用輸送機も数多くウォーターボマーに転用されていますが、中でも便利なのが旧ソ連製のイリューシンIL-76“キャンディッド”。
何が便利かって、IL-76は爆撃も可能なように爆弾層を持ち、機首にはガラス張りの爆撃手席もあるので、ウォーターボマーとして使う時にも「照準」がしやすいようです。
装甲車など重量物を運搬する能力があるだけに、機体規模の割には大量の搭載能力があり、水運搬能力は40t以上。
しかも後方に大きく開くドアを持つ貨物室への水タンク脱着は容易で、それに要する時間はわずか1時間半、つまり1時間半で輸送機にもウォーターボマーにも早変わりできるわけで、これも使い勝手の良さに繋がっています(火災の無い時は輸送機として使える)。
(参考1:https://ja.wikipedia.org/wiki/Il-76_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F))
(参考2:http://www.geocities.jp/superhydravion/Sengo/senngo.htm)
By United States Army – http://www.history.army.mil/, パブリック・ドメイン, Link
ヘリのウォーターボマーも海外ならではの機体があり、それがベルAH-1“ヒューイコブラ”シリーズの攻撃ヘリ改造ウォーターボマー、“ファイヤーコブラ”です。
初期のAH-1GやAH-1Sなど、AH-64アパッチに代替えして余剰になり、近代化にも予算がかかるような旧式アメリカ陸軍機が対象になっているようで、基本的には普通のヘリと同じようにぶら下げたバケットで近くから水をくむため往復して水を撒きます。
もちろん武装は撤去されてますが、放水銃でも装備していればサマになるところ、単にマニア受けするだけのギミックは無いのが残念。
ただし、現役時代から撤去されない装備にFLIR(赤外線暗視装置)があり、夜間はもちろん、昼間でも火災が完全に鎮火していない場所を探すなど、監視活動にも便利。
日本でも陸上自衛隊で用途廃止になったAH-1Sが余剰装備として廃棄待ちの列を為しているので、せっかくですから誰か有効活用しないでしょうか?
(参考:https://togetter.com/li/988854?page=2)
パブリック・ドメイン, Link
おそらく軍用機転用ウォーターボマーの中でも一、二を争う変わり種が、このノースロップF-15“リポーター”偵察機ではないでしょうか。
何しろF-15からして「何それ、空自のイーグル戦闘機と違うの?」ってぐらいのマイナーな飛行機でして、ちょっとミリオタになった程度では知らない人が多くて当たり前の飛行機です。
ヒントはノースロップ製のスマートな双発三胴レシプロ高速機というところで、P-61“ブラックウィドウ”夜間戦闘機の偵察機版。
700km/h以上の最高速と長い航続距離はレシプロ偵察機としては最高レベルのもので、1945年7月に初飛行してすぐ第2次世界大戦が終わってしまいましたから、戦後に生産されたのも36機に過ぎません。
就役したF-15は戦後日本や朝鮮半島などの航空写真の撮影で活躍して、その写真は重要な役割を果たしたものの、1949年にはほとんどが退役してしまいます。
わずかに、各種テスト用に空軍で使われていたF-15が1957年まで飛行しており、その機体は民間放出後にウォーターボマーに改造、1968年9月6日に事故で失われるまで使われていました。
最後は超マイナー機の、さらに超々マイナーなウォーターボマー機ということで、おあとがよろしいようで……。
(参考1:https://togetter.com/li/988854)
(参考2:https://ja.wikipedia.org/wiki/F-15_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%E3%83%BB%E5%88%9D%E4%BB%A3))
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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