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2018/03/15

笹木恵一

海底軍艦 ~過去を引きずったまま現代を生きる者の悲哀~

今回紹介するのは1963年公開の東宝特撮映画『海底軍艦』。制作:田中友幸、監督:本多猪四郎、特技監督:円谷英二の黄金トリオ、さらにこちらもお馴染み音楽の伊福部昭が加わり、後の世に語り継がれる大傑作映画となった。
出典:Amazon Prime Video

ストーリー

第二次世界大戦終結から20年が経とうとしていた頃、日本で奇怪な誘拐事件が勃発する。目撃者の証言によると、犯人は被害者をさらった後、体から蒸気を上げながら海に消えていったとのこと。その魔の手が元帝国海軍技術少将で現在は海運業者の専務となった楠見と、彼の海軍時代の部下である神宮司の忘れ形見真琴の元へと忍び寄る。危機一髪のところで真琴をモデルとしてスカウトしようと付け回していたカメラマンの旗中と西部の助太刀もあり難を逃れた楠見達だったが、後日彼らの元へ誘拐犯からのフィルムメッセージが届く。犯人達の正体は、かつて海底に沈んだ超巨大国家『ムー帝国』からの使者だったのだ。かつて地上のすべてを植民地としていたムー帝国は、一万年以上の時を経て再び地上に進出しようというのだ。彼らにとってたった一つの邪魔者はかつての楠見の部下、そして真琴の父である神宮司大佐が建造した秘密兵器だけなのだという。まさかそんな、神宮司は第二次大戦末期に死んだはずではないのか? 時を同じくして警察が取り押さえた身元不明の男、彼は娘の危険を察知した神宮司からの遣いだった。楠見達は彼の案内で神宮司の元へとたどり着く。そこで待っていたのは巨大な万能戦艦『海底軍艦・轟天号』と、神宮司率いる旧帝国海軍の兵士達だった。楠見はムー帝国撃滅の為に轟天号を使用することを要求するが神宮司はこれを拒否する。何故なら彼にとってはまだ第二次世界大戦は終わっていなかったのだ。海底軍艦はあくまで大日本帝国復興のためのものだといって譲らない。そうこうしているうちにムー帝国の地上攻撃は開始された! 果たして人類の運命やいかに⁉

レビュー

海底軍艦』の原作はSF作家押川春浪によって1900年から執筆された『海島冒険奇譚 海底軍艦』に始まる人気小説シリーズで、本作はその初の映像化となる。後に様々なメディアで幾度となく映像化された作品のほとんどが、本作の影響を受けていると言える。もっとも本作では原作の「無人島で密かに建造された巨大戦艦」という基本設定以外は全くの別作品と言える内容になっている。
興味深いのは作中で中心的に描かれる人物達の世代の移り変わりだ。この頃の(といっても今もほとんどがそうだが)東宝特撮作品に多く見られるプロットは、前半は若者たちを諭す立場として年配の人物が存在感を示すも、後半からクライマックスにかけては若者たちが中心となって活躍するというものが多い。しかし本作では前半の導入部こそ若者たちが率先して活躍するも、後半以降は完全に年配の、それもかつて第二次世界大戦を戦った男たちに活躍の場を譲る形となっている。
これは本多猪四郎監督の特撮作品で頻繁に描かれる「過去を引きずったまま現代を生きる者の悲哀」というテーマがより色濃く反映された作品であるからに他ならない。帝国軍人である神宮司にとって、たとえ自分が家族と触れ合う時を犠牲にしても、銃後の社会を守る為に戦うことが軍人の務めと信じ、人知れず戦い続けてきた。しかし20年ぶりに再会した我が娘はおろか上官までもが自分の生き方を完全否定する。自分の意志、人生の大部分を犠牲にしてきたことにまるでそっぽを向くかのように時代は進んでいた、無常にも、残酷にも。神宮司も最後には楠見達の意見をのみ、轟天号を駆りムー帝国との戦いに挑む。戦いには勝利したものの彼の手に何が残ったのであろうか。娘は既に愛する男の元へと行ってしまい、自分自身ももう年を取り過ぎた。さび付いた鎧を脱いだそこに立っているのは、空っぽな老人なのだ。

先端にドリルのついた超兵器というイメージは後のフィクションにおける架空兵器に大きな影響を与えた。この轟天号自体の人気も高く、東宝特撮作品だけでも3度もリメイクされているほどだ。
人物の悲哀を描いた上質の脚本と、登場メカのカッコよさがこの作品の何よりの魅力である。メカのビジュアルで興奮させドラマで泣かせる。上質なエンターテイメントとはまさにこの作品のことをいうのだ。

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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