- コラム
北朝鮮最新情勢『トランプ先生のダメ出しと、南北トレッキング外交』
2018/10/3
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2018/02/15
菅野 直人
韓国初の冬季オリンピック、「平昌(ピョンチャン)五輪」が開幕しましたね! それに合わせて南北融和、冬なのに雪解けムードを演出したい韓国と、その話に乗っかろうとしている北朝鮮の南北2国によって、周辺諸国も国連も振り回される形になっています。
By オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアのAxGさん – Self made with Inkscape using File:Pyeongchang 2018 Olympic official emblem.gif, パブリック・ドメイン, Link
盛んに弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、国連に経済危機を強化され、アメリカのトランプ大統領との舌戦も強化される北朝鮮。
日本では2017年の「今年の漢字」に“北”が選ばれるなど、朝鮮半島有事(第2次朝鮮戦争)が目前に迫っているような雰囲気すらありました。
しかしちょっと待ってほしい、と要所で待ったをかけるのは、本来なら北朝鮮との対立がもっとも激しいはずの分断国家の南側、韓国(大韓民国)。
現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が2017年5月10日に就任して以降、アメリカとの関係が微妙になったり、中国との関係回復に努めたり、日本との関係を悪化させたりと忙しくしていますが、対北朝鮮政策ではむしろ融和感をアピールしたがっています。
それもそのはず、2018年2月9日から25日まで開催される韓国初の冬季五輪、平昌(ピョンチャン)オリンピックと、続くパラリンピックをとにかく成功させたいという目下の課題があるのです。
そのためには各国の選手団や観客が安心して来られる「安全安心、平和な朝鮮戦争」で無ければなりません。
一触即発の緊張感漂う中でもオリンピックは開催できますが、経済効果が台無しになっては国民からの理解を得るのも難しいところ。
北朝鮮が2017年に派手な花火(弾道ミサイル)を打ち上げまくったのも、ある意味平昌オリンピックへの祝砲……ではなく、「今なら何をしても、とにかく韓国はとりなすはずだ」という計算があったかもしれません。
実際、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験でその周囲に撃ち込むと言い出したグアムの観光客は激減していますし、その二の舞はゴメンだというのが韓国の文政権の本音でしょう。
とはいえ北朝鮮のおかげでオリンピックの盛り上がりは今ひとつどころではなく、開催直前になってから何とか報道が盛り上がってきましたが、宿泊施設などは空室が目立ってかなり危機的な状況とも言われて、開催終了まで火消しに大変だと思います。
By Asao Tokolo – File:2020 Summer Olympics Logo.png, パブリック・ドメイン, Link
ただし、そんな韓国政府に対し、日本国民は笑ったり怒ったりしている場合ではありません。
何しろそこから直近、2020年の夏季オリンピックは東京で開催されるのです!
しかも、「2020年」をキーワードに、というかダシに使って、「2020年までに○○を実現」的な話を日本政府主導で多数用意し、国威発揚、世界に先進国家日本をアピールする最大の機会だ! と意気込んでいます。
今の韓国の姿は2年後の日本の姿、東京オリンピックのタイミングで朝鮮半島危機など存在してほしくない日本としては、東京オリンピックが近づけば、やはりある程度融和政策に転換、少なくとも強硬なコメントは差し控えるようになるでしょう。
それが嫌なら少なくとも2018年中、平昌オリンピック後に北朝鮮問題の本格的なケリをつけいたいところ……ではありますが、残念ながら日本は朝鮮半島情勢において、重要なプレイヤーの一人であるものの、決して主役級ではありません。
本音では日本の政策決定に大きな影響力を持っているような人物でも「今年中に戦争するならしといてほしいな……」と思っているかもしれませんが、その場合に国連軍の中核として重要な役割を果たすべきアメリカが、というよりトランプ大統領がどう思うかでしょう。
日本も自衛隊に航空機などから運用する長距離ミサイルの採用を決定し、「敵地を直接攻撃する積極的防衛策」にようやく手をつけましたが、そのための戦力が揃うのは早くて数年後では話にならず、「後方支援しかできない日本は黙ってろ」といったところです。
では、北朝鮮、韓国と並ぶ主要プレイヤーのアメリカはどうかと言えば、昨年秋までに予算案が議会を通過できず、短期間のつなぎ予算を編成してしのいできたものの、ついに上院での調整が難航してしまい、2018年1月20日に一時予算が失効してしまいました。
これで政府機関の大部分が一時閉鎖となってしまい、同22日に何とかつなぎ予算が上下院を通過、一部政府機関の閉鎖は解除されたものの、その期間は何と2月8日までの超短期、しかも平昌オリンピック開催前日までです。
4年前にもオバマ政権下で同様の事態はあり、冬季五輪が開催されるたびにそうなるようにも見えますが、実際はオバマ政権以来常に予算編成の危機は恒例行事。
しかもトランプ政権が成立してからは公約通りに移民抑制策やメキシコ国境との「移民対策の壁」を設置しようと予算を要求するものですから、議会は野党の民主党のみならず、与党のはずの共和党ですら難色を示しています。
そのため、現在のアメリカは北朝鮮問題どころではなく国内問題に注力しないといけない状況で、ちょうど平昌オリンピックもあるし一時休戦、という雰囲気でしょう。
これが軍事的にどのような影響を与えるかといえば、軍組織こそさすがに「一時閉鎖でお休み!」とはならないものの、訓練などは予算が出ないため、大規模なものは日米合同訓練など国際的なものを含め、多くが中止になっている模様です。
それもまた北朝鮮が計算に織り込み済みであろうことはもちろんで、アメリカの超短期つなぎ予算の期限である2月8日、平壌にて朝鮮人民軍創設70周年軍事パレードが、朝鮮人民軍の総力を上げて決行。
本来なら積極的に対立するはずの、他の主要プレイヤー(アメリカと韓国)が身動きできない時に悠々と武夷を示すという余裕ぶりです。
どうもこういう時の北朝鮮を見ると、「やはり外交手腕とバランス感覚、計算高さは上手といわざるを得ない」と言えます。
しまいにオリンピックの韓国女子アイスホッケーチームに北朝鮮代表選手を送り込み、南北合同チームを実現させてしまい、オリンピックを記念した金剛山(北朝鮮)での祝賀行事のため、必要な軽油を韓国に拠出させてしまいました。
2017年末には「北極星2号による人工衛星打ち上げ」を今にも行おうとして緊張感を高めていたのに、いつの間にか周辺諸国を手のひらで踊らせています。
一応、平昌オリンピック終了後にはまた米韓合同軍事演習が行われる見通しにはなっていますが、それを実行する米軍の方にもどうやら「赤信号」が点灯しかけている気配です。
横須賀を司令部としており、在日米軍のみならず極東全域の米軍の中核のひとつ、とも言える米海軍第7艦隊では、2017年にイージス駆逐艦2隻が相次いで衝突事故を起こし、修理のため任務が不可能になりました。
さらにイージス巡洋艦シャイローでは行方不明になって、海に転落したと思われていた乗員が1週間後に艦内で生きているのが見つかるなど、どう考えても士気や規律、練度に問題がある状況です。
そして2017年後半から2018年初頭にかけ、沖縄の米海兵隊のヘリが上空から物を落としたり整備不良と思われる基地の外への緊急着陸(不時着)を多発させたりと、単なる「米軍叩き」では済まず、沖縄県当局は元より日本政府ですら不快感を示す始末。
在日米軍海兵隊司令官すらも「重大事故でなかったのが不幸中の幸い、議会から予算出なくて兵員の確保や部品調達に難儀している状態で、常に困難を乗り越えてきた海兵隊が試される事態」という趣旨の発言をしており、事態はかなり深刻です。
これが、日本周辺での緊張をむやみに高めないため、あるいは北朝鮮などを油断させるための「死んだふり」ならいいのですが、駆逐艦の衝突事故も含め、どうにもアメリカ側へのメリットはほとんど無く、デメリットばかりという状況では、楽観的になどなれません。
どうも我が日本にせよ、韓国にせよ、「いざという時、アメリカは本当に頼りになるのか?」というのを深く考えた方がいいような状況に陥いっている気がします。
差し当たり、平昌オリンピックおよび、その後のパラリンピック(2018年3月9日~18日)までは北朝鮮も「その機会に得るものを得ておく一時休戦期間」として大きな動きは無いはずです。
しかし、その後誰もが活発に動き出す3月下旬以降、アメリカは予算が出ているのか、韓国はどちらを向いているのか、そして日本はどう動くべきか。
政治的、軍事的な日々の動きを見る上で、それが2018年春にどう結実するのを狙った動きなのかに、注目しましょう。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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