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2018/02/5

菅野 直人

それは本当に漁船ですか? 漁船型軍用艦艇

2017年冬からの一時期、日本海沿岸各地へ立て続けに漂着したことで話題になった北朝鮮の漁船。中には漁師の避難小屋から設備機材を強奪する海賊まがいの不届きな輩までいたので、改めて日本近海の「海の安全」が注目されていますが、それ以前にも尖閣諸島で海保の巡視船に体当りした中国漁船や北朝鮮の不審船など「それ本当に漁船?」という例が結構あります。実際に漁船ベースの軍用艦艇にどのようなものがあるか、一部ご紹介しましょう。

北朝鮮漁船の漂着で注目される、「それ本当に漁船?」

2017年11月、北海道松前沖で発見された北朝鮮の漁船は、北朝鮮人民軍の識別番号が船体に記載されていたことから「単なる漁船では無いのではないか」と憶測を生みました。実際には人民軍からの委託を受けて操業する単なるイカ釣り漁船とされましたが、その後も一時上陸した松前小島の漁師小屋から盗めそうなものは一切合切引っペがしてまで持ち去ったことが明らかになります。

おまけに、そのような都合が悪い事態になると巡視船に係留されていたロープを切断し、舵が故障しているにも関わらず逃走を図るなどやりたい放題で、「これじゃ海賊、いやただの泥棒じゃないか」と、日本国民を呆れさせました。

あまりに稚拙な「犯行」から軍事的要素はかえって見当たらないほどでしたが、現実問題として、これが何らかの軍事目的を持って「侵入」したものであれば……と思うと、日本海沿岸の危険度が高まっている実感が湧いてきます。
何しろ、これまでも漁船型の軍用艦船は存在したのです。

フラワー級コルベット(イギリスなど)

USS Intensity (PG-93).jpg
By User Gdr on en.wikipedia, パブリック・ドメイン, Link

外洋での航行能力が高い漁船、中でも大型のものを軍用に転用しようという考え方は昔からありましたが、中でも戦時量産型護衛艦として有名なのがイギリス海軍のフラワー級コルベットです。

軍用戦闘艦として最初から設計・建造されたものは目的への最適化で戦闘・航海・生残にと高い能力を持ちますが、一方で量産のためにはそれに対応した造船所や軍用向けエンジンなどの確保が不可欠。しかし場合によってはそれらを十分に確保するのが難しいため、武装以外は極力遠洋トロール船や捕鯨船を応用しよう、それで大量生産した護衛艦なら、ドイツがUボートを大量投入しても対抗できる、という発想が、第2次世界大戦直前のイギリスで生まれました。

そこで、捕鯨船をベースに対艦・対潜用装備を搭載、それらが波を被らないよう設計を工夫して、対潜戦闘時の運動性向上のため設計を改善したのがフラワー級コルベットです。見た目は捕鯨船そのものですが、4インチ手法や爆雷、機関砲をはじめ各種武装を搭載し、対潜捜索用ソナーや、対潜攻撃で威力を発揮した小型散布爆雷「ヘッジホッグ」も搭載しています。

その代わり、量産性重視で最高速力は16ノット止まり、航続距離や居住性も満足とは言えませんでしたが、本格的な戦闘力を持つ護衛艦が就役する第2次世界大戦中盤まで活躍、イギリスとカナダで263隻も建造されました。

元が捕鯨船ですから戦争が終われば武装解除して民間に放出されたものも多く、日本へも輸出されて捕鯨船となったものがありました。

特設監視艇(日本)

日本海軍では、第2次世界大戦中に日本近海でのパトロールを重視していましたが、その中でも問題だったのは、小笠原諸島から東、アリューシャン列島から南の広大な太平洋でした。ここには哨戒機を配備するような航空基地を整備する島も無く、商船改造の特設巡洋艦や特設砲艦を母艦として、多数の特設監視艇を配備した哨戒戦隊(第二十二戦隊、通称“黒潮部隊”)による哨戒活動が頼り。

その代表例が、1942年4月のドゥーリットル空襲のため本土近海に襲来した米空母ホーネットとエンタープライズを捕捉した、第二十三日東丸でした。

ただし、特設監視艇の名のとおり正規の海軍艦艇ではなく遠洋航行可能な漁船や汽船を乗員ごと徴用してわずかな武装をほどこし、無線通信や対空戦闘のため下士官以下の海軍軍人も乗るほかは漁船そのものでで、戦闘力はほぼ皆無です。

そのためドゥーリットル空襲では多数の監視艇が犠牲になりましたが、それでも監視艇の任務は続けられ、武装強化や電探(レーダー)の装備も行われており、戦争末期に米機動部隊と遭遇した監視艇らしき小艇が反撃で米艦を損傷させた記録もあります。

これらは純粋な漁船や汽船の転用でしたが、後には最初から漁船をベースに最初から海軍艦艇として建造した、駆潜特務艇や哨戒特務艇も多数建造、戦後も掃海艇となって朝鮮戦争などに従軍しました。

北朝鮮の工作船などスパイ船

上記のような護衛艦艇、哨戒艦艇は民間船の徴用やその設計をベースとした「漁船型戦闘艦艇」でしたが、それとは別に「漁船に偽装した軍用艦艇」も存在します。古くは旧ソ連が多用したスパイ船で、遠洋向け漁船の見かけながら、アンテナの数などが明らかに違って電波情報収集能力や長距離通信能力を持っているのがひと目でわかるのが特徴です。

同様の船は中国海軍も多数所有していると見られますが、その任務の性質上、実態や具体的な装備が明らかになることはありません。

それが明らかになった数少ない例が、2001年の「九州南西海域工作船事件」で、奄美大島沖の不審船を米軍や海上自衛隊からの情報提供で察知した海上保安庁の巡視船や航空機が追撃。
停船命令を無視したため巡視船が威嚇射撃を行ったところ、不審船が高射機関砲から対戦車ロケット弾、自動小銃にいたるあらゆる火器で攻撃してきたため、正当防衛として20mm機関砲や小銃で反撃を行いました。ただし不審船は直後に自爆沈没、ようやく北朝鮮の工作船とわかったのは引き上げ後のことです。

この事件では「奄美大島沖海戦」とでも言うべき短く熱い戦いの上で決着がつきましたが、実際には高速発揮可能な不審船に逃げられる事例もあり、その全容が解明されたとまでは言えません。

意外と現代で無いのは海賊船

このように漁船型の軍用艦船や偽装船舶は多数ありますが、意外と無いのは漁船をそのまま使って海賊行為に及ぶような「海賊船」です。

海賊行為そのものは南シナ海とジャワ海などを結ぶマラッカ海峡やソマリア沖などで現代でも頻繁に行われ、中には軍用揚陸艦を商船と間違えて搭載兵器で反撃、撃退または撃滅される例もあります。しかし、そうした海賊行為の前線に立つのは今や高性能船外機を持ったモーターボートの類で、海上警察力、あるいは海軍力による水上艦艇や搭載ヘリからの威嚇で、簡単に離脱、あるいは降伏する場合がほとんど。

海上保安庁と戦った北朝鮮の不審船のように、公権力に対して強力な武器で反撃してくるような「海賊船」は希で、仮に存在したとしても「本気で攻撃してくる軍艦」を呼び寄せて、より激しい攻撃を受けるのが目に見えています。それだけに、現代ではむしろ「どの国家機関にも属さない私的な海賊船」は、ほぼ存在しえないと言ってよいでしょう。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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