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2018/02/2

菅野 直人

「災害派遣に架ける橋」陸上自衛隊の自走架橋装備

昔、日本軍と強制労働につかされた連合軍捕虜による泰緬鉄道(タイ~ビルマ鉄道)建設を描いた「戦場にかける橋」という映画がありましたが、軍隊において橋や鉄道、道路の建設は重要な仕事です。それは戦争に必要な物資の輸送だけでなく、占領地の経済活動維持にも重要な役割を果たすからですが、たとえ戦争が無くとも軍事組織の架ける橋が大きな役割を果たすこともあります。今回は陸上自衛隊の架橋装備をご紹介。

戦争だけでなく災害でも活躍! あると便利な架橋装備

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戦争において「橋を架けたり、壊したり」というのは重要な軍事活動で、戦闘部隊への補給や、敵が占領している地域の経済活動の妨害、部隊そのものの進撃や撤退の妨害と混乱のため、既存の橋を破壊したり、仮設の橋を架けたりといったことは日常的。

そのため世界各国の軍隊は「工兵」と呼ばれる兵種に橋の修理や仮設橋の建設を任せているわけですが、日本の陸上自衛隊においては「施設科」が工兵に相当します。普通科(歩兵)や機甲科(戦車や機械化歩兵)、特科(砲兵)に比べれば直接的な戦闘力は劣るものの、その代わり地雷原突破から戦場における各種土木工事までの能力・機材を保有している、無くてはならない兵種です。

戦争が起きた時だけではなく、災害派遣でも各種土木機材などで救助から復興支援まで大活躍するのは、主にこの施設科で、正面切った戦闘を主任務としない都合上、世界各国へ派遣されるのもこの施設科が多いですね。

2011年の東日本大震災でもその能力はフルに発揮され、特に津波や地震により流出・損壊した橋に代わって、施設科の架橋装備が数多く使われました。当時、復興支援その他で被災地に足を踏み入れた人の中にも、陸自施設科の橋を利用した人が数多くいたはずです。

もっとも贅沢ながら機動性はピカイチの91式戦車橋

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67式戦車橋の後継として1991年から調達の始まった架橋戦車で、74式戦車をベースに、50t級の90式戦車すら通行可能とした自走重架橋です。全長20mのうち有効長18m、ちょっとした小川程度なら、この91式戦車橋を使って大重量の重機など土木機械も通行可能としてくれます。

油圧アクティブサスペンションを持つ74式戦車発展型なので、架橋時には油圧を抜いて車高を目いっぱい下げて安定させ、5分ほどで架橋/撤収が可能なだけでなく、車内から全ての操作が可能です。

ただし、基本的には戦場で妨害を受けながら作業することを前提とした装甲車両であり、高価なため調達数も1991年以来、年1~2両ペースと少ない「虎の子」であり、91式戦車橋が無いと90式戦車の運用が困難な北海道の北部方面隊にそのほとんどが配備されています。

まだ施設科架橋装備の主力! 81式自走架柱橋

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By Los688 – Myown work, パブリック・ドメイン, Link

全国の施設科に配備され、災害派遣でもよく使われるのがこの自走架柱橋で、見た目は架橋資材を乗せたトラック(74式特大型トラック)そのものです。架橋資材は橋脚と橋桁がセットになっており、油圧により架橋位置にセットされた後は、施設科隊員による結合や固定など、橋として使うための仕上げが行われます。

橋脚の高さは2~4mで設定でき、1台10m、6台1セットで最大60m程度の架橋が可能で、東日本大震災でも橋の流失で孤立した街の道路復旧では大いに役立ちました

架橋速度と耐荷重が大きく向上、07式機動支援橋

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By Japan Ground Self-Defense Forcehttps://www.flickr.com/photos/90465288@N07/8465492238/in/set-72157632281153539, CC 表示 2.0, Link

81式自走架柱橋の後継として登場したもので、重量制限から90式戦車など50t級以上の車両通行ができず、橋脚も必要だったという欠点を是正し、50t以上の重車両通行可能、橋脚不要として、実用性を大幅に向上させました

機材を載せているのは引き続き74式大型トラックですが、架橋方法は大きく異なり、まず機材車からビーム(梁)を対岸まで伸ばした後、その上に橋本体を載せて対岸まで渡すのを繰り返すことで、長い橋を急速架橋します。1台ずつ短い橋の集合だった81式と異なり、07式では架設車1両、ビーム運搬車1両、橋本体の輸送車4両で構成

橋脚の廃止で川底の地形にまであまり配慮しなくて良くなったのが利点で、災害派遣に役立つことから81式からの交代が急速に進んでいます。

孤立した小島へも道をつなげる、92式浮橋

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By Ypy31 – 自ら撮影, パブリック・ドメイン, Link

ここまでは比較的小規模で底の浅い河川、あるいは対戦車壕などへ架橋する機材でしたが、中には川幅の非常に広く流量も多い大規模河川や、災害で橋が崩落して孤立した島への架橋が求められることもあります。そうした時に活躍するのが、安定して浮いていられる「浮橋」で、陸自施設科では70式自走浮橋と、さらに重車両の通行を可能にした発展型92式浮橋を配備中です。

原理的には、水上で動力ボートを使いある程度航送可能な浮橋本体とそれを輸送するトラックで構成されており、水際で荷台を傾け浮橋本体を水面へ落とし、浮橋本体をつなげれば最大104mの橋を作れるというわけです。実際には浮橋本体と動力ボート、橋の上の道路などは分割されており、合計23両の7tトラックが1セット

東日本大震災では、宮城県東松島市沖合で津波により橋を流されて孤立した宮戸島へ架橋され、重機を自走で運搬可能として救援活動や復興支援に大いに役立ちました

その他、新旧大小さまざまの架橋装備があり、次に大災害が起こった時、陸自施設科の橋で助けられるのは、あなたかもしれません。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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