- コラム
北朝鮮最新情勢『ベストに染みを作ってまでトランプ大統領が北朝鮮への態度を硬化させた意味』
2018/09/5
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2018/01/10
菅野 直人
2017年11月29日、北朝鮮はまたもや最新弾道ミサイル「火星15号」を発射、さらに射程が伸びたとして脅威の高まりが再認識され、経済制裁の強化など世界情勢も動きが活発化。日本での「今年の1字」に「北」が選ばれるなど、嫌でも北朝鮮を意識しなければいけない2017年となりました。最新の軍事情勢はどうなっているでしょうか?
By Heribero Arribas Abato – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link
北朝鮮情勢は2017年11月29日、全く新しいフェーズに突入しました。
この日未明に発射された新型弾道ミサイル「火星(ファソン)15」が高度4,475kmまで到達した後、発射地点から950kmの日本海にある日本のEEZ(排他的経済水域)内に着弾したと見られており、それまでの「北朝鮮弾道ミサイルシリーズ新記録」を実現したからです。
これにより、確実にアメリカの東海岸の一部を含む射程を持ったICBM(大陸間弾道ミサイル)として、ミサイルそのものはその能力を持っているとみなされました。
もっとも、第1段に初めて複数(2基)のエンジンを使用した2弾式ロケットそのものはそれだけ飛行する能力を持っているものの、「弾道ミサイル」として必要な「宇宙空間を飛翔した後、大気圏に弾頭を再突入させる能力」はまだ未確認です。
報道されている限りでは、弾頭部分は再突入に当たって分解したと見られており、その結果として地上またはそれに近い高度まで正常に機能を維持したまま到達、信管を作動させる能力が無ければ、ミサイルとしての能力を持ちません。
そのため、火星15がロケットとして高い能力を持ちつつも、それがただちに国防上の脅威にはならない、というのが現時点でのアメリカの立場であり、北朝鮮は単に技術力の誇示とそのための実証試験を行っているに過ぎないという見方もあります。
もっとも、「国防上の脅威として認める」ということは、それすなわち「ソ連や中国のような大戦争になると危険な国でも無いなら潰してしまおう、すなわち戦争だ!」となりかねないので、ギリギリまで脅威とみなされないでしょう。
なお、最近の北朝鮮による「弾道ミサイル発射成功記録」は以下の通りです。
衛星打ち上げロケット(ICBM) テポドン2改または銀河3
人工衛星「光明星4号」軌道投入、沖縄県上空を通過し、Jアラート発動
IRBM(中距離弾道ミサイル) 火星10 ムスダン
高度1,000km、水平距離400km、推定射程3,200~4,000km
SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル) 北極星1
水平距離500km
MRBM(準中距離弾道ミサイル) 北極星2
高度550km、水平距離500km、推定射程2,000km
IRBM 火星12
高度2,111km、水平距離787km、推定射程3,000~5,000km
ICBM(大陸間弾道弾) 火星14
高度2,802km、水平距離933km、推定射程9,000~10,000km
ICBM 火星14
高度3,724.9km、水平距離998km
IRBM 火星12
高度550km、水平距離2,700km、日本上空を通過し太平洋に着弾、Jアラート発動
IRBM 火星12
高度800km、水平距離3,700km、日本上空を通過し太平洋に着弾、Jアラート発動
ICBM 火星15
高度4,475km、水平距離950km、推定射程13,000km
以上のように、IRBMは火星10と火星12のロフテッド軌道(上空高く発射し、水平距離を抑制する軌道)での発射と火星12の通常発射でおおむねその性能を確認。
ICBMは火星14のロフテッド軌道発射でエンジンの性能確認が済んだものの、より性能の高い火星15のロフテッド軌道発射に成功したことから、火星10から火星12と同様の流れが予測されます。
2018年はじめにもう1回程度火星15でのロフテッド軌道発射が行われた後、火星15による射程実証発射が2018年中には行われるかもしれません。
それと関連する動きか、2017年12月18日には2016年2月以来となる「衛星打ち上げロケット」の発射を示唆する論評が北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」で発表されています。
あるいは人工衛星の打ち上げとその重量によって、ICBMとしての性能を誇示し、ハワイやグアム、アメリカ西海岸近くへの着弾によるアメリカへの直接的刺激を避けるということかもしれません。
その場合、「大気圏再突入弾頭」のテストは日本海への着弾で行われるとみられるため、それがたとえ火星12のロフテッド軌道による発射であっても見逃せないところです。
前述のように2017年に入ってからは弾道ミサイルの実験としては異様なほど「間髪入れず発射」が行われており、しかも失敗が減っているため脅威論が高まっていますが、それにつれて各国による経済制裁も強化されています。
その効果がいかほどのものか、なかなか具体的な成果が見えず疑問視されていましたが、2017年11月下旬から日本海側の東北や北海道地方への北朝鮮漁船、あるいはその難破して破壊された破片や遺体の漂着が相次いだのが注目を集めました。
中でも北海道松前沖の松前小島に「漂着」した漁船は、漂流したというより自力で島の入江に「避難」したとも考えられる航行能力を有し、島の漁船向け避難小屋などからあらゆるものを盗んだことがバレると、舵が故障しているにも関わらず逃走を図るという「前代未聞の逃走劇」を展開。
以前から北朝鮮漁船によるEEZ内での違法操業は大問題となっており、海上保安庁が放水でイカ釣り漁船が船上に干したイカを台無しにするなど、対策を行ってきました。
しかし、例年と異なり難破する漁船が相次ぐ背景には、北朝鮮の食糧事情の悪化、粗悪なエンジンを搭載した漁船が冬の荒れた日本海で無理な操業を行っているといった要素があると見られます。
単純な「食糧不足」というより、特権階級による利益拡大の好機とばかりに影響下にある朝鮮人民軍部隊から操業を委託された漁船が急増してポンコツまで駆り出されているのでは、という意見もありますが、その内情までは定かではありません。
ひとつだけ言えるのは、「日本海とその沿岸の安全度が下がり、より対策を強化しなければいけない時期」が到来しているということです。
対策としては水産庁が漁業取締船の追加建造を決定していますが、2017年7月には北朝鮮籍と思われる漁船を取り締まろうとした取締船が漁船から小銃の銃口を向けられ威嚇される、という「事件」まで起きています。
こうなると、松前小島の「大窃盗事件」と合わせ、もはや漁船団というより「海賊団」とも言えて、海上保安庁のみならず海上自衛隊の支援が急務で、海域によってはロシア当局との国際的な連携も必要かもしれません。
まるで日本海というよりソマリア近海での話に思えますが、それがインターネット上でのヘイトスピーチ的な煽り・叩きのような話で済まなくなりつつあります。
その一方で「朝鮮半島有事」に備えた準備はなかなか進展しません。
正確に言えば、韓国では有事に備えた議論がアメリカ以外の関係各国をシャットアウトしてしまい、いざという時の在韓邦人の救出に関して、日本のみならず他国も韓国との話し合いが拒否されている状況です。
しかも、イギリスやカナダなどアメリカ以外に朝鮮戦争での「国連軍構成各国」ですら締め出されており、アメリカ以外と交渉しないという韓国の姿勢は北朝鮮と変わらぬように見えます。
そのため、日本は国連軍の枠では無く、在韓邦人の多い各国と協力した「有志連合」という新たな枠組みで韓国との交渉を模索する姿勢です。
仮に韓国がその歴史的経緯から自衛隊の直接関与を認めないとしても、「有志連合」に属する国の関与さえ認められれば、最悪の場合、「有志連合」の軍用機や軍用艦艇による邦人救出と、その後方支援ならば実現するかもしれません。
国が外国に在住する日本人どころか大使館の安全さえ保証できないというのは問題ではありますが、ここはプライドを捨ててでも現実的な邦人保護策を採用すべきでしょう。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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