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2018/01/3

菅野 直人

作らなくて良かった?! 幻の珍兵器5選

世の中には「何でこんなものを作ってしまったんだろう」という珍兵器は数多くありますが、もちろん企画止まりで「いやーホントに作らなくて良かったね!」という珍兵器はもっとたくさんあります。今回はそんな中から5つほど「作らなくて良かった珍兵器」をご紹介。

国力の限界を超えた超重爆撃機「富嶽」(日本)

トップバッターは「幻の日本機」ネタの定番中の定番、超重爆撃機「富嶽」。

中島飛行機の創業者、中島 知久平が構想……というより夢想した空中艦隊構想の中核「Z飛行機」が元になっていて、コンセプト自体は活かしつつ現実に作るにはどういう技術でどういう飛行機に……と考えただけで終わった飛行機です。

何しろZ飛行機自体が「1万m以上の高高度を750km/h以上で飛行すれば敵機は追いつけず、爆弾20tを積んで日本から直接米本土爆撃するか、1t魚雷を20本積んで米艦隊に魚雷で飽和攻撃すれば日本は勝てる!」という、そりゃ実現すればそうだろう……という無茶苦茶な案。
おまけに「胴体下にたくさん機銃を設置して下に撃ちまくれば、敵の大編隊も地上部隊も木っ端みじん!」とか、もう言いたい放題、言うだけタダみたいなもんでした。

とにかく雄大な構想なので仮想戦記では大人気で活躍しまくりますが、現実にはZ飛行機に必要とされた5,000馬力級エンジンすら開発の目途がたちません。

第2次世界大戦後、アメリカなどで大型機用大馬力エンジンとして広く使われたワスプ・メージャーが4,000馬力級ですから、それ以上のエンジンを当時の日本が作れるわけもなし。
頑張って3,000馬力級エンジンを4発か6発で、最高速度は600km/hくらいかなぁ……」など現実を考えるほど地味になっていき、そんなのより大量生産できる零戦などをいっぱい作った方がいい、となって、計画段階で終わりました。

要するに現代の皆さんが想像する「富嶽」というのは、Z飛行機か数多く考えられた「試製富嶽」の案の1つにすぎず、「これが富嶽だ」と呼べるもの自体無かったんですね。
仮に設計段階まで進んだとして、どこに富嶽を作る工場や飛ばす滑走路、詰め込む燃料があったのかと考えれば、1944年夏の段階でさっさとやめて正解です。

作った後で絶対困る! 原子力空母ユナイテッド・ステーツ(アメリカ)

Artist's impression of the US Navy aircraft carrier USS United States (CVA-58) in October 1948.jpg
By Bruno Figallo – Official U.S. Navy photo 80-G-706108 from the U.S. Navy Naval History and Heritage Command, パブリック・ドメイン, Link

え? アメリカにもそんな「幻の超兵器」があったっけ? と意外な印象ですが、アメリカ海軍初の原子力空母として1949年4月18日に起工された「ユナイテッド・ステーツ」がそれ。
一応起工までされたからには「作らなくて良かった」でいいのか微妙ですが、なんと建造中止命令は1949年4月23日、なんと建造期間わずか5日で中止ですからこれはもうノーカン!と言ってよいでしょう。

当時は原子爆弾、つまり核兵器を運用できなければマトモな軍隊として扱ってもらえないような勢いで、史上初の核攻撃(広島と長崎です)に成功したアメリカ空軍の鼻息が荒かったのですが、それに何とか対抗しようとしたのがアメリカ海軍です。

まだ大きく重かった当時の核爆弾を運搬する攻撃機は大型にならざるをえず、それを搭載する空母も大きく無ければならず、そのためには史上例を見ない(史上初の原子力潜水艦ノーチラスの起工は1952年)原子力空母だ! と意気込みました。

結果的には、「海軍がそんな無理しなくても、空軍のB-36で世界中どこでも爆撃できるし……」と建造中止になるんですが、ユナイテッド・ステーツ自体もちょっとばかりぶっとんだ空母。

とにかく核爆弾を積んだ大型機を発着させるため、甲板から邪魔者を排除して艦橋も発着指揮所も無いフラットデッキ
原子力機関の採用も煙突がいらないからで、要するに「核攻撃以外は何も考えていない」という割り切った空母ですから、後々これがベトナム戦争など普通の戦争に投入されていたら、航海や航空作戦の指揮にかなり支障があったことでしょう。

結局、建造中止後に核爆弾は小型化され、こんな奇妙な空母でないと発着できないような大型機も必要無くなったので、建造しなくて正解でした。

80cm主砲……何考えてんすか?超大型戦艦H45(ドイツ)

基礎的な戦争史や世界史の知識を持っている皆さんならご存知の通り、1939年9月にナチスドイツはポーランド侵攻とそれに対するイギリス、フランスからの宣戦布告で第2次世界大戦に突入します。

しかしこれはナチスのヒトラー総統最大の誤算と言われるところで、本当はこんなところで世界大戦が起きるはずも無く、それはドイツ海軍拡張のための「Z計画」が完成してからゆっくり雌雄を決すればいいと考えていたフシがありました。

Z計画はただちにほとんどが中止、既に建造されていたわずかな水上戦闘艦や商船改造の仮装巡洋艦、それにUボート(潜水艦)によって、アメリカとヨーロッパを結ぶ大西洋航路の寸断(通商破壊戦)を始めます。
しかし、Z計画そのものはイギリスやソ連が片付いたらまた再興しようと研究は進んでいたようで、逆に戦局が悪化すると、それを取り返すかのように構想だけは膨らんでいきました。

その極めつけが超巨大戦艦H45案で、なんと主砲は46cm砲搭載の戦艦大和もビックリな80cm砲
製鋼技術に優れ大砲、特に巨砲や長距離砲に自信のあったドイツでは、第2次世界大戦中に史上最大の80cm列車砲「グスタフ」を開発、東部戦線(対ソ戦)で実戦投入していたのです。

GeschützDora2.JPG
By Scargill投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

この80cm列車砲は「せっかくだからこれでいろいろ作ろう」となぜか巨砲活用案がいろいろ飛び出し、やれ自走砲だ、やれ戦車だとプランが飛び出しては、軍需大臣のアルベルト・シュペーアが「真面目に戦争やってるんだからいい加減にしろ!」と怒り出す始末。

海軍も陸軍に負けじとプランを出さねば存在感が薄れる……と思ったのかもしれませんが、グスタフの80cm砲を連想4基8門搭載する、空前の超巨大戦艦を計画しました。
もちろんそんなものは「言うだけタダの企画倒れ」に終わりましたが、もし第2次世界大戦が起きていなければ、ナチスドイツの場合はそのくらい作りそうで、見てみたいような怖いような?

時速2km? ルイ・ボワリョーの……戦車?(フランス)

史上初めて「戦車」が実戦投入されたのは1916年ですが、この種の「塹壕線突破用装甲戦闘車両」の構想はそれ以前から結構あり、どの国でも機会あらば実現しようという野心家が至るところにいました。

フランスのルイ・ボワリョー博士もそんな一人で、武双を施した装甲戦闘室の周りを鉄製の巨大な「」で囲み、その「枠」がギッコンギッコン回って障害物を踏みつぶし、塹壕を乗り越えていけばいいじゃないか……という雄大な構想。
ちなみに今回取り上げた珍兵器の中で唯一実物が作られ、しかもテスト走行? まで行われています。

そして試作車はしっかり動き、確かに障害や砲弾穴、塹壕とありとあらゆるものを乗り越えて進めることが判明しました。
ただし、「それだけの話」。

速度たるやわずか2km/hですから兵士が歩くより遅く、それはそれでこんなのが迫ってきたら気味悪いとは思いますが、冷静に大砲をドカンと撃ち込む余裕はたっぷりありそうで、すぐ撃破されるのは目に見えています。
おまけに致命的だったのは「曲がれない」こと。

そもそも曲がることを全く考えておらず、方向転換なんてジャッキアップすればいいじゃない……誰が?という代物。
これを見たある将軍は「確かに何もかも踏みつぶして前進できるが、敵に出会えるとは思わない」と言い残したとか。

なお、もっと小型で洗練した2号車も作ったそうですが(まだやるか)、相変わらず曲がる機能は無かった上に、速度も1km/hに堕ちたそうです。トホホ。

戦後はカナダ海軍あたりに押し付けられそうな氷山空母ハボクック(イギリス)

実現しなかった珍兵器の中でも最も壮大! と言えば、ナチスドイツと並んで珍兵器の考案なら負けない奇人変人揃いのイギリスから登場、氷山空母ハボクック」です。

第2次世界大戦が始まると、アメリカとヨーロッパ、ナチスドイツによるフランス占領後はイギリスの生命線となる大西洋航路をUボートやドイツ空軍から守り、維持することが重要となってきます。
そのためにイギリス海軍は真っ当に護衛空母や護衛艦の建造を進める一方、さまざまなアイデアが持ち込み、その中で有望そうなものは試してみることにしていました。

発明家のジェフリー・パイルが持ち込んだ「パイクリート」もそのひとつで、水に一定の割合でパルプを混ぜ込んだ氷を作ると、溶けにくく頑丈になり、これを構造材にして巨大な構造物を作れば、破壊されても氷なので補修も楽ちん!
というわけでパイクリートで巨大な洋上航空基地「氷山空母」を作って大西洋航路上に浮かべておき、ドイツのあらゆる妨害を阻止する……という「ハボクック計画」が正式に始まってしまいます。

1943年には実際に長さ18m、幅9mの実験船がカナダで建造され、実用版は長さ600m、全幅100m、双発爆撃機なども含め搭載機数150機以上の不沈空母になるはずでした。
しかし、実験船を作った段階で「こんなもん作ってる予算があったら、マトモな護衛艦艇を整備した方がいい」という常識が勝り、あえなく氷山空母ハボクックは中止。

もしこれを実際に作っていたら……船体の大部分はパイクリート、つまりちょっと変わった氷とはいえ、内部構造やメカニズムまで氷なわけはありません。
つまり巨大な構造物が残りますから解体するのも一苦労で、戦後にその処分でかなり困ったのでは無いでしょうか。

洋上航空戦力を欲しがっていたカナダ海軍あたりに押し付けられていたら、元から寒い土地柄なので案外ハマッたりは……予算不足で何かに転用されそうですが。

ちなみに「パイクリート」そのものものは「溶けにくくて固いから寒い地域の構造物に最適」と何かに使われそうですが全然そんなことは無く、2014年にようやくオランダの建築家グループがパイクリート製アイスドームを作ったそうです。つまり「かまくら」ですね。
地球温暖化時代でも氷像を作るのに便利そうなので「さっぽろ雪まつり」とかでパイクリートを使った像とか登場しませんかね?

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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