- コラム
風の谷のナウシカの巨大飛行機バカガラスのモデル Me321 / 323 ギガント
2017/11/29
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2017/12/6
菅野 直人
日本は高価な兵器をたくさん購入して、特に海上戦力ではヘリ空母(ヘリ搭載護衛艦)やイージス艦までたくさん持ってますよね……しかしハイテクで高価そうな、いや実際高価なイージス艦より、さらに高価な兵器が空を飛んでいると言ったら? ノースロップB-2“スピリット”とはそんな飛行機です。
By Staff Sgt. Bennie J. Davis III – この画像データはアメリカ合衆国空軍が ID 060530-F-5040D-22 で公開しているものです。
これはライセンスタグではありません!別途、通常のライセンスタグが必要です。詳しくはライセンシングをご覧ください。
http://www.af.mil/shared/media/photodb/photos/060530-F-5040D-220.jpg (Originally from en.wikipedia; description page is/was here.), パブリック・ドメイン, Link
現在、日本の海上自衛隊でもっとも高価な戦闘艦、いわば「最高級護衛艦」と言えるのがあたご級イージス護衛艦で、そのお値段たるや1隻約1,453億円と言われます。
それを日本は2隻(あたご、あしがら)保有していますから単純に約2,906億円。
その前のこんごう級イージス艦4隻はもう少し安く、1番艦「こんごう」は約1,223億円と言われますから、ザックリ計算して4隻約4,800億円、あたご級と合わせて約7,700億円。
整備当初の艦隊防空だけでなく、今や弾道ミサイル防衛まで担う日本の重要な「盾」(ギリシャ語で「イージス」)なのは間違いありません。
しかし、それを上回るあっと驚く兵器がアメリカ空軍のステルス戦略爆撃機B-2“スピリット”で、お値段は1機約20億ドル……あたご級建造当時の1ドル約100円の時で約2,000億円、今でも1,800億円以上でしょうか。
しかもそれが21機も生産されたのですから、単純計算で420億ドル……4兆2,000億円が空を飛んでいることになります。
こんごう級やあたご級の原型と言えるアーレイ・バーク級イージス艦を60隻以上、つまり日本の10倍以上作ってまだいつが最終艦になるかわからないアメリカ軍からすれば、「せっかくのステルス戦略爆撃機だし、ちょっとぜいたくしてみた」なんでしょうか?
おかげでギネスブックにまで世界一高い飛行機と認定されました。
戦略爆撃機B-2は、単に高価でステルス機というだけでなく、見た目からしてかなり特異な飛行機、それも他に同種のものがほとんどなさそうなほど、「これで本当に飛ぶのか」と言いたくなる飛行機です。
そもそもこれを開発したノースロップ・グラマン社、F-14トムキャット艦上戦闘機で有名なグラマンと合併する以前はノースロップ社だったのですが、その創設者のジャック・ノースロップ氏がよく言えば信念の人、一般的には変人でした。
1930年代以前から垂直尾翼も水平尾翼も持たず、胴体を兼ねた主翼だけの「全翼機」の実現に異常なまでの執念を燃やしており、とりあえずマトモな飛行機も作りつつ、会社の経営は良くなくて2度も倒産させつつ、その合間に全翼機の実験機を飛ばしています。
その集大成となったのが、第2次世界大戦後に新時代の戦略爆撃機として開発された、試作戦略爆撃機XB-35です。
その姿たるや、垂直尾翼こそあったものの全翼機そのもので、推進式に配置された二重反転プロペラと抵抗の少ない全翼形状で高性能を狙ったものの、プロペラ機構やエンジン不調もあり、性能不足で不採用。
いやいや、これだけ先進的な形状だからジェット化すれば素晴らしい性能を発揮するはずだ! とばかりにジェット試作戦略爆撃機XB-49に発展しますが、初期のジェットエンジンは不安定かつ燃費も悪く。
しかもプロペラ機として開発されたXB-35を安易に根本的な設計見直しを行わずジェット化したので飛行安定性が悪化、性能向上も大したことが無かったので、あえなく不採用になりました。
この失態でジャック・ノースロップ氏は引退してしまいますが、氏の執念を受け継いでいたノースロップ社は粘り強く全翼機のコンセプトを煮詰め、レーダー反射が小さいという特性を活かし、ついにステルス爆撃機B-2の開発にまでこぎつけます。
まだB-2の開発が始まったばかりの1980年、アメリカ国防総省の特別なはからいでB-2の概念模型を魅せられたジャック・ノースロップ氏は、パーキンソン病の病床で余計幾ばくも無かったにも関わらず、こう書き残したと伝えられています。
「今こそ神が25年の余生を与えたもうた理由がわかった。」
1988年に完成して初公開、翌年には初飛行して慎重なテストの後1997年から実戦部隊での運用が始まったB-2ですが、最新鋭ステルス戦略爆撃機など西側世界ではアメリカ空軍でしか使い道が無く、たった21機の生産で終わりました。
大量生産されなかったのも高価になった理由のひとつですが、ステルス性の維持に必要な機体表面のコーティングや、運用に必要な施設の整備など維持費用も半端無く、大量生産などした日にはただ保有しているだけでとてつもなく国防予算を浪費します。
その点は、膨大な数のB-52やB-1といった旧式戦略爆撃機より、B-2の方がより少ない機数で同じミッションを安全にこなせるのだ、ということになっているので存在価値が無いわけではありません。
ただ、実際にアメリカが参加してきた戦争で「どうしてもB-2でないとできない任務」というのはほとんど無く、むしろ「B-2を持ち出すほどアメリカはこの地域の紛争に関心を持っている」というアメリカのメッセンジャー的な役割を果たしているのが実情です。
北朝鮮情勢でもB-2が米本土から飛んでくることはありますが、大抵はグアムから飛んでくるB-1やB-52による威嚇がメインなことからもそれはわかります。
そしてもうひとつ、当たり前ですが「墜落したら2,000億円が吹っ飛ぶ」というのも、大量配備できない理由です。
B-2は2008年に1度だけ電気系統のトラブルで墜落事故を起こしたことがありますが、当然そうなれば全損です。
これがB-52ならデビス・モンサン(米軍機や民間機の墓場と呼ばれる、用途廃止機の集積場)から中古機を1機レストアして……と補充がききますが、B-2にそんなものはありません。
当然、B-2はその能力を誰からも脅威として認められつつ、実践運用はほとんどされてこなかったのでした。
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最先端のステルス爆撃機であるB-2は初飛行、さらに運用開始からも長らく実戦参加が認められてきませんでしたが、高精度のGPS誘導爆弾により、敵のあらゆる対空兵器の射程外から攻撃可能になったことで、いくらか実戦参加が行われています。
その初陣が1999年のコソボ紛争での爆撃作戦で、以降はアフガニスアン紛争やイラク戦争、リビア内戦、対ISIS作戦などで、遠隔地からこつ然と現れては爆弾を落として去っていくという任務に使われました。
主任務は誘導爆弾による高硬度からの遠距離爆撃ですが、爆弾の射程(滑空距離)が伸びてB-52でもできるような任務なので、戦闘機が出てくるか核弾頭搭載巡航ミサイルを使う任務でも無い限りは、あまりB-2である必要も無いのも事実です。
By U.S. Air Force Graphic – この画像データはアメリカ合衆国空軍が ID 160226-F-YZ123-001 で公開しているものです。
これはライセンスタグではありません!別途、通常のライセンスタグが必要です。詳しくはライセンシングをご覧ください。
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なお、超高価で使いにくいB-2、および旧式ながらあと30年は使われそうな旧式爆撃機B-52の後継機として、やはりノースロップ・グラマン社がステルス爆撃機B-21“レイダー”を開発中です。
無人運用も考慮していると言われることからB-2より小さいものの全翼機で形状はB-2に近いと言われ、それでも1機5億5千万ドル(550億円)とB-2の1/4近いコストに収めようとしていますが、今度こそ安くなるのでしょうか?
予定では100機生産すると言われますから、量産効果にも期待したいものですが、ステルス性を維持するため運用コスト増大問題をどう解決するのか、興味深いところです。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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