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2017/10/23

菅野 直人

空の軽業師! ジェット”軽”戦闘機5選

ジェット時代に「普及版」あるいは政治的・予算的事情で高性能戦闘機の代わりに調達可能だった軽戦闘機。その中でもF-16やF/A-18のように発展に伴い重戦闘機化したものもありますが、一貫して軽戦闘機として活躍したものを紹介します。

ノースロップ F-5 フリーダムファイター / タイガーII(アメリカ)

編隊を組んで飛行するF-5
By USAF photo; original uploader was Bwmoll3 at en.wikipedia, 2006-02-10 (original upload date) – U.S. Air Force photo 061006-F-1234S-072 [1] available from the National Museum of the USAF [2]; transferred from en.wikipedia, パブリック・ドメイン, Link

時は1950年代、超音速ジェット戦闘機時代が到来したものの、そんな高額な一級品を貧乏国の空軍がそうやすやすと買えるわけもありません。

特にソ連を筆頭とする東側共産主義陣営に対する西側自由主義陣営にとっては、筆頭国であるアメリカが有償・無償の軍事援助をするといっても限度があり、仮に供与しても運用するにはやはり多額のコストがかかります。

そこで機体価格も運用コストも安い廉価版超音速戦闘機が求められたのですが、うまくハマりこむようにそのような戦闘機を計画していたのがノースロップ(現在のノースロップ・グラマン)。元々はアメリカ海軍の軽空母や護衛空母用小型戦闘機として計画されましたが、需要が無いとわかるや輸出用軽戦闘機N156Fを開発します。

小型の機体に、見た目とは裏腹に不整地での離着陸にも向いた頑丈な着陸脚ミサイルにも使われるほど安価な小型ターボジェット・エンジンを2機搭載したN156Fは「F-5フリーダムファイター」と命名され、単座型F-5Aと訓練用の複座型F-5Bは自由主義を守る小さな無数の盾になったのでした。

ただし、肝心の供与対象国の方が「アメリカ空軍でも実績が無いものはちょっと」と難色を示したので、F-5Aをベースに空中給油装置などを追加したF-5Cをアメリカ空軍が少数採用、実験部隊「スコシ・タイガー」をベトナム戦争に送り込みます。(ちなみにスコシ・タイガーの「スコシ」は日本語の「少し」で小さい虎の意味)

狙い通り好調な運用実績を示したF-5CのおかげでF-5A/Bは自由主義陣営各国で採用、エンジンを強化するなど発展型F-5E / F「タイガーII」ともども長く使われ、F-5E / Fは現在でもいくつかの国で現役運用中です。
試作機だけで終わった最終発展型F-20「タイガーシャーク」ともども、漫画「エリア88」のおかげで日本では有名ですね。

ミコヤン・グレビッチ Mig-19 ファーマー(ソ連)

ハンガリー空軍のMiG-19PM
By Varga Attila投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

アメリカのノースアメリカンF-100スーパーセイバーに続く世界で2番目東側陣営では初の超音速ジェット戦闘機で、1954年初飛行。

冷戦時代には他のミグ戦闘機と比べて比較的マイナーな存在だったため「テスト的な意味合いで作られた初期の超音速戦闘機」扱いでしたが、後にその実績が明らかになると「ジェット戦闘機としてはかなりの運動性能を持つ最高レベルの格闘戦戦闘機」と呼ばれるようになります

Mig-21より一回り小さく、Mig-15/17よりは大きな小型双発ジェット戦闘機で、Mig-21発展型より高度な整備能力などを必要としなかったため東側陣営の多くの国で使われ、ベトナム戦争や中東戦争でも参戦しました。

特にMig-19を多用したのは中国で、ライセンス生産型の「殲撃六型 」(J-6またはF-6)と、それをベースに攻撃機に改設計した「強撃五型」(Q-5またはF-5)を多数生産、パキスタンなどへ独自に輸出しています。

航続距離が非常に短く、まだ中国空軍で使われている強撃五型が航空自衛隊機と対峙するようなことは無いと思いますが、殲撃六型はまだ北朝鮮で使われていると言われており、その姿を見る機会はまだあるかもしれません。

フォーランド ナット/HAL アジート(イギリス / インド)

フィンランド空軍博物館(英語版、フィンランド語版)のナットF.1
By Ruuhinen投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

次第に高性能・高価格化が進んでいたジェット戦闘機に対し、小型軽量安価で「とにかく安い!」を売り文句としたイギリス製軽戦闘機

いわば前述のF-5と同じコンセプトで1世代前の亜音速軽戦闘機ですが、超音速を狙わなかったのでより簡素で、1955年に初飛行したもののあまりに小さすぎて、母国イギリス空軍では練習機型しか採用されませんでした。

輸出もちょうど少し後にF-5が登場したため本格的に採用したのはフィンランドとインドだけで、イギリス空軍ではアクロバットチーム「レッドアローズ」で採用されるなど航空ショー向きの機体でしたが、セールス的には失敗に終わっています。

しかし、唯一ライセンス生産までして大規模に導入したインド空軍では第2次・第3次パキスタン戦争で大活躍し、その運動性能でパキスタン空軍のF-86セイバーを圧倒。その後も国営航空機製造会社HAL(ヒンドゥスタン・エアロノーティックス)で独自改良型HAL アジートとして生産が続けられ、Mig-21との「ハイ・ローミックス運用」におけるロー、すなわち簡便で使いやすい軽戦闘機として1991年まで使われました

なお、本家ナットは「トップ・ガン」のパロディ映画「ホット・ショット」の主役戦闘機として登場したことでも知られています。

ダグラス A-4 スカイホーク(アメリカ)

A4 lands on melbourne.jpg
By Nick Thorne投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, Link

かつて数多くの航空機メーカーが存在したアメリカの名門、ダグラスの名設計者エド・ハイネマンが設計した軽艦上攻撃機

え、戦闘機じゃないの? と言われるかもしれませんが、軽量な機体に十分な出力を持つエンジンを持ち、機関砲も装備して空対空ミサイルも装備可能だったので、戦闘機としての運用も可能でした。

しかも戦闘機として考えた場合は特に低空での軽快な運動性は凄まじく、映画「トップガン」では主役の双発重戦闘機F-14トムキャットが後ろから猛然と迫るのに対し、コマのように激しく回るバレルロールで翻弄していた姿が印象に残ります。

実際、アメリカ海軍では対潜空母の、オーストラリア海軍やアルゼンチン海軍では軽空母の防空戦闘機兼戦闘爆撃機として使われ、アメリカ海軍ではMig-17をシミュレートする仮想敵機としても使われたほか、.実戦でもベトナム戦争で米海軍機が、中東戦争ではイスラエル空軍機が撃墜記録を残しており、ヘタな戦闘機顔負けの活躍を見せました。

もっとも華々しかったのはアメリカ海軍のアクロバットチーム「ブルーエンジェルズ」使用機だったことで、1974年から1986年まで20年以上の長きにわたり使われています

現在もブラジル海軍で空母「サンパウロ」用の戦闘機として配備されていますが、老朽化と修理予算の不足で同艦の退役が決定したため、「ハイネマンのホットロッド」「バンタム級チャンピオン」と呼ばれたA-4の現役も終わろうとしています。

AIDC F-CK-1 経国(台湾)

IDF Pre-production.jpg
By 王常松 Chang-Song Wang – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 2.5, Link

ちょっと変わり種で政治的事情により開発されたのが、台湾(中華民国)空軍のF-CK-1。同国へはアメリカが長年軍事援助を行ってきましたが、米中国交正常化以降は常に中国とのバランスに配慮した形で援助も制限されるようになります。

1980年代に入って導入が検討された新型戦闘機も、F-16のダウングレード版F-16/79か誰も採用しない軽戦闘機F-20をアメリカから提示されたものの要求仕様に足りなかったため、F-16の技術も導入した軽戦闘機IDFの独自開発が決定。

こうして1989年に初飛行したIDFはF-CK-1「経国」(名称は初飛行直前に死去した蒋経国総統から)と命名されました。F-16より一回り小さい軽戦闘機でエンジンも小型ながら、レーダー誘導式の空対空ミサイルや空対艦ミサイルなどの運用が可能で、航空自衛隊のF-2を小規模にしたような運用の柔軟性が高いマルチロールファイター(多用途任務機)となっています。

その後アメリカから(ダウングレード版ではない)F-16C/Dの導入が決まったことで存在意義がやや薄らいだ「経国」ですが、近代化改修を受けながら現在も運用中です。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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