- コラム
帝国海軍の残照-戦争後生き残った艦艇たち-
2017/02/11
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2017/10/17
菅野 直人
日本の海を守り、最近は海賊対策や災害派遣で遠征することも多い海上自衛隊。その中核となるのは護衛艦隊の4個護衛隊群と地方配属の沿岸警備用護衛隊に配属された護衛艦です。今回はいくつかに類別された「護衛艦」のそれぞれの違いを紹介しましょう。
By Yamada Taro – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link
DDH-183 いずも
かつての旧日本海軍の中型空母「飛龍」などすら上回る大型で対潜ヘリコプターなど5機を同時に離発着可能、最大14機の搭載が可能な大型の「いずも型護衛艦」(いずも、かが)。
By Wivern, CC 表示-継承 3.0, Link
護衛艦ひゅうが
そしてヘリの同時離発着数3機、同搭載機数11機といずも型よりやや小さい「ひゅうが型護衛艦」(ひゅうが、いせ)の4隻がDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)です。
創設以来対潜水艦戦闘を主任務にしてきた海上自衛隊の「主力艦」と言えて、実質上は「空母」(ヘリコプター母艦)にほかなりませんが、かつては「はるな型」(はるな、ひえい)「しらね型」(しらね、くらま)と後部にのみ飛行甲板を備えたヘリコプター3機搭載型でした。
しかし、どれだけヘリを搭載しても同時離発着は1機に限られ、他の護衛艦や陸上から飛来したヘリの整備補給を行う余裕も無いため、運用に幅を持たせるため航空母艦と似た形の全通甲板や、艦内の大きな格納庫を持つようになっています。
ただし、先行して建造された小型の「ひゅうが型」が対空ミサイルや対潜魚雷などを装備して「戦闘艦」としての能力を持っているのに対し、大型の「いずも型」はそれらを配して小型の対空機関砲や短距離ミサイルしか持たない「ヘリ母艦」になりました。
これは「ひゅうが型」でも自ら戦う戦闘艦としては取り回しが効かず大きすぎたことと、「いずも型」では艦隊への補給艦や輸送艦としての能力も持たせた「多用途艦」としての能力が高められた結果です。その結果、「いずも型」は対潜ヘリ母艦というより他国の「ヘリコプター揚陸艦」に近い能力を持っていると言えます。
航空母艦に近い形状はそのためであり、垂直離着陸戦闘攻撃機「F-35B」を搭載して本格的に軽空母に使おうというのは的外れで、現実には海上自衛隊に戦闘機部隊を編成したり、航空自衛隊から空母に派遣する飛行隊を創設する余裕はありません。(ありえるとすれば、米海兵隊や英海軍のF-35Bを離発着させるくらいでしょう)
By New Zealand Defence Force, CC BY 3.0 nz, Link
DDG-175 みょうこう
ミサイル護衛艦の「ミサイル」とは「対空ミサイル」を指しており、艦隊またはその護衛対象を空の攻撃から守ることを目的に整備されました。後にアメリカから導入された、非常に高い情報処理能力と同時多目標追尾・攻撃能力を持つ「イージスシステム」を搭載したDDG(ミサイル護衛艦)、「イージス艦」が主力となっています。
現在ではイージス艦が「こんごう型」4隻(こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい)と「あたご型」2隻(あたご、あしがら)、イージス艦以前の「はたかぜ型」(はたかぜ、しまかぜ)の8隻が配備中。
これに加えて2020年と翌年には新型のイージス艦2隻が就役予定で「はたかぜ型」は練習艦(TV)に格下げとなり、海上自衛隊のDDGは8隻全てがイージス艦になる予定です。
なお、イージス・システムは元々が旧ソ連の艦隊や爆撃機による対艦ミサイル同時多数発射による「飽和攻撃」に対処するため、全力を発揮すれば1隻で多数の対艦ミサイルを撃墜する、まさに「イージス(ギリシャ神話の「盾」)」として開発されました。
しかし、最近ではシステムの更新や新型の対弾道ミサイル用迎撃ミサイルを搭載した「BMD艦」へ改修(「あたご型」は最初からBMD艦として建造)され、北朝鮮が保有し日本も射程に収めた弾道ミサイルの実験監視を行っています。
いざとなれば弾道ミサイルを大気圏外で迎撃可能な「唯一の盾」としての役割を期待される一方、本来の艦隊や民間船舶を守る役割は減退し、汎用護衛艦(DD)の援護を受ける必要性が生じてしまいました。これに対処するため、陸上設置型のイージスシステム「イージス・アショア」を整備する計画が進んでいます。
By Yasu osugi – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link
DD-115 あきづき
搭載ヘリによる対潜水艦戦闘や限定的な対艦攻撃能力を持つDDH、対空、対弾道ミサイルで圧倒的な威力と対艦ミサイルによる対艦攻撃能力を持つDDGに対し、それらをいずれも限定的ながらバランス良くまとめた「海上の猟犬」がDD(汎用護衛艦)です。
DDGほど射程は長くないものの対空ミサイルを持ち、DDHほど数は多くなく同時発着数も1機に限られるものの対潜ヘリを搭載し、対艦ミサイルも持っています。また、DDHやDDGより小型のため海上戦闘艦としての運動性にも優れ、DDHやDDGからの管制を受けて動くまさに「護衛艦隊の手足」です。
近年のDDは大型化していることから単独で行動することも多く、ソマリア沖の国際的な海賊対策作戦には常時海上自衛隊のDDが派遣されています。
2017年8月現在では、DDGのBMD艦化を補うため限定的な艦隊防空能力を備えた「あきづき型」4隻(あきづき、てるづき、すずつき、ふゆづき)が最新で、2018年と翌年の完成を目指し、再び対潜戦闘能力を強化した「あさひ型」2隻が建造中です。
その他、「たかなみ型」5隻(たかなみ、おおなみ、まきなみ、さざなみ、すずなみ)と「むらさめ型」9隻(むらさめ、はるさめ、ゆうだち、きりさめ、いなづま、さみだれ、いかづち、あけぼの、ありあけ)までが新世代DD。
旧世代DDは「あさぎり型」8隻(あさぎり、やまぎり、ゆうぎり、あまぎり、はまぎり、せとぎり、さわぎり、うみぎり)と、「はつゆき型」2隻(まつゆき、あさゆき)が現役です。
「あさぎり型」の6隻と「はつゆき型」2隻の計8隻は機動的に運用される護衛隊群所属ではなく、かつては「地方隊」と言われた沿岸護衛用護衛隊に所属しており、平時は対潜ヘリを搭載していません。
DE-229「あぶくま」
小型の沿岸防衛用護衛艦で、沿岸部や海峡部などでの哨戒や対潜・対艦戦闘を主任務とするのがDE(沿岸護衛艦)です。
かつては「地方隊」と呼ばれる海上自衛隊の根拠地ごとに置かれた沿岸防衛組織下の戦闘部隊所属でしたが、組織変更で2017年8月現在は護衛艦隊でDD以上の護衛艦と一元運用されています。
予算削減で沿岸防衛用には旧式化したDDが充てられるようになったためDEは「あぶくま型」6隻(あぶくま、じんつう、おおよど、せんだい、ちくま、とね)が最後になっており、いずれも沿岸防衛用の護衛隊に配属中。
ただし、「あぶくま型」は対潜ヘリや対空ミサイルこそ持たないものの対艦ミサイルや対潜魚雷による戦闘力は侮り難く、小型で小回りが効くところが見直され、現在は「あぶくま型」や旧式DDに代わる新型DEと呼ぶべき小型護衛艦が計画中です。
練習艦「しまゆき」
海上自衛隊には護衛艦隊とは別に幹部(士官)のタマゴである幹部候補生を訓練するための「練習艦隊」が編成されており、専門の練習艦「かしま」のほか、旧式護衛艦をTV(練習艦)に転籍させて配属しています。
2017年8月現在では旧式DD「はつゆき型」から3隻(やまゆき、せとゆき、しまゆき)がTVとしての任務についており、ヘリコプター格納庫を幹部候補生用の講堂に改造しているため、ヘリコプター搭載能力は持たず、発着甲板が残るのみです。
それ以外の武装はDD時代と同じなため、有事にはすぐ護衛艦としての能力を復旧できる建前ですが、現実には最新に近い装備を候補生に体験させるのが目的となります。
2021年3月に2番艦まで完成する新型DDGが就役後、「はたかぜ型」DDG2隻がTVに転属する予定ですが、同型は講堂設置スペースとなるヘリコプター格納庫を持たないため、引き続き「はつゆき型」のいずれかがTVとして残るかもしれません。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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