- コラム
北朝鮮最新情勢『現状は米朝で外交的駆け引きというより、ババ抜きが行われている』
2018/08/8
菅野 直人
すごいー! たーのしー!
2019/01/4
菅野 直人
どうもこのところ目立った動きが無いためか、わが日本では北朝鮮への関心が薄れていき、代わりに韓国が仮想敵国であるかのような『事件』さえ起きてしまいました。新たな防衛大綱(30大綱)で配備の決まったイージス・アショアは配備候補地で揉めていますし、アメリカのトランプ大統領は腹心の国防長官を解任してしまいますし、何が起きているのでしょうか?
ここ数年、毎年のように同じような光景が繰り広げられ、冬の日本海の風物詩となりかけている好漁場、『大和堆(やまとたい)』。
今年も北朝鮮の漁船団が大挙来襲し、共同で警戒し退去を促すため放水する海上保安庁の巡視船や水産庁の監視取締船に対し、投石で抵抗するわ、接触して巡視船の舷側の手すりを壊すわの大暴れです。
「そもそも漁船のどこに石を積んできたのか、イカを獲って重くなった分だけ投げつける気マンマンでは無いか?」と、まさに喧嘩上等で海保や水産庁との『海戦』を繰り広げる北朝鮮漁船団ですが、船が壊れるとそのまま置いていくのか、木造船の漂着も後を絶ちません。
このような物騒なところへ日本側の漁船団が出漁するのも命がけという状態ですが、対する北朝鮮も資源不足でイカでも獲らないと……という状況なのかもしれませんが、その一方で経済制裁を海上での物資受け渡しで逃れようとする『背取り』も続いているようです。
それでは日本が日本海で北朝鮮とばかり対峙していればいいかといえば、さにあらず。
2018年11月20日、大和堆で操業していた日本のイカ釣り漁船へ「操業を止めて海域を移動せよ!」と無線で迫ってきたのは、なぜか韓国海洋警察庁の警備艦でした。
それも日韓漁業協定で定められた日韓暫定水域を超え、韓国のEEZ(排他的経済水域)に侵入したとでも言うのならばともかく、日本のEEZ内で近くに海保の巡視船までいたので、無線で「ここは日本のEEZ内、そのような要求は認められない」と通告して事なきを得ています。
もしも近くに巡視船がいなければ、最悪の場合は日本のEEZ内で日本の漁船が韓国当局に拿捕されるという(しかも前例がある)事態まで起きていたかもしれません。
最悪の事態に発展せず良かった……と思う間も無く、12月20日には日韓暫定水域を航行していた韓国海軍の駆逐艦を、海上自衛隊の哨戒機が監視していたところ、いきなり火器管制レーダーの照射を浴びせられるという、とんでもない事態が起こります。
海洋警察庁の件は後に「再発防止に努めたい」と謝罪を受けたものの、韓国海軍の件は「やった」「やっぱりやってない」「そもそも威嚇してきたのは自衛隊だ」「何を騒いでいるのかよくわからない」と、コメントを出すたび支離滅裂になりかけている体たらくです。
それ以前から第2次世界大戦中に朝鮮半島から渡ってきた労働者(韓国の表現では『徴用工』)への補償問題で、1965年の日韓基本条約での補償を韓国政府が当事者へ渡さずインフラ整備に使ってしまったのを無視し、「今から払え」と韓国の最高裁からとんでもない判決が出たばかり。
これでは日韓関係が悪化するばかりで出口の見えない状態ですが、北朝鮮問題がまだまだ微妙な時期に日韓で争っている場合ではありません。
幸い問題なのは韓国政府だけのようで、「日本からもらっていた補償を当事者に渡せ」と韓国政府を提訴する当時の労働者団体も出てきましたが(一方でこの団体は日本にも裁判を起こしているので、また複雑)、どうも現在の文政権が続く限りは日韓関係の改善は容易でなさそうです。
では日本側にも問題が無いかと言えばさにあらずで、北朝鮮の弾道ミサイルから高度を防衛するはずのイージス・アショア(地上配置型イージス・システム)の配備候補地、秋田県では佐竹知事の発言が日に日に迷走しています。
そもそも2018年9月の県議会で「イージス・アショアは日本国内だけでなく日米双方を守るものだ」と、日本の国防のためという賛成派の大義名分すら失いかねない発言をしたかと思えば、翌10月の議会で追求されると「私に判断の是非を投げられても困る」と国へ丸投げ。
こえですっかり県会議員や県下の自治体から突き上げられてしまったようで、12月に入ると「守る意識を高めるため、防衛省を秋田へ移転してはどうか」と『珍発言』まで飛び出す始末です。
元々、佐竹知事は江戸時代に久保田藩(秋田藩)を治めた佐竹氏(佐竹北家)の末裔で、秋田市長を経て2009年から秋田県知事に就任しており、地元では『殿様』として扱われている人物。
知事としての人気はそれなりにあるのですが、イージス・アショアの問題は外様で大大名でも無かった久保田藩主が、いきなり江戸幕府の大問題について相談されたような唐突さがあったのかもしれず、やや荷が重いのかもしれません。
2017年からの3期目を勤めていて2021年の県知事選に出馬する可能性もありますが、いずれにせよそこで選挙の争点となるまで秋田へのイージス・アショアの配備は本決まりにならないかもしれず(もう1箇所の山口県でも反対)、弾道ミサイル防衛はもうしばらく、海自のイージス艦や空自のパトリオットSAM頼みになりそうです。
本来この記事の主人公であるべき北朝鮮ですが、全くニュースが無いわけではありません。
韓国の文大統領に見切りをつけたのか、金正恩委員長のソウル訪問はいつになるのか見通しが立っていませんし、そうこうしているうちに12月17日の国連総会で採択された、北朝鮮の人権状況を非難する決議に韓国も参加したため「相互信頼に務めるのか、アメリカの陰謀に加担するのか、どっちなのだ!」と非難しています。
同じ日、金委員長は父の金正日総書記の命日で遺体が安置されている宮殿を訪れ、「一歩の譲歩も無く総書記の構想と念願を最後まで実現するため、力強く戦っていこう」と、党幹部へ呼びかけ。
これは12月3日に「北朝鮮が約束を守らないので経済制裁の解除も無い。トランプ大統領が2回目の米朝首脳会談を行おうとしているのは、約束を守らせるためだ。」とボルトン大統領補佐官が北朝鮮への不満を述べたアメリカに対する牽制と思われます。
さらに12月6日にはCNNが衛星画像から判明した北朝鮮のミサイル基地大幅拡張をスクープし、北朝鮮の非核化や弾道ミサイル廃棄が「単に新しくミサイル発射実験や核実験をしていないだけ」に終わったことを強調させました。
12月20日は朝鮮中央通信(北朝鮮)が、核放棄のための『相応の措置』として、経済制裁解除や朝鮮戦争終結宣言に加え「北朝鮮を射程に収める核兵器をアメリカは全廃せよ」と、譲歩どころか態度を硬化。
アメリカでも、トランプ大統領の腹心として安全保障政策面で国際協調の必要性を力説してきたマティス国防長官が2019年2月末で辞任を決めたかと思えば、怒ったトランプ大統領は2月まで待たず、1月1日付で国防副長官を長官代理とし、マティス氏を追い出すことにしていまいました。
せっかく史上初の米朝首脳会談まで行われた2018年でしたが、結局「それ以外は静かだった。少なくとも戦争も武力衝突事件も無かった」というだけで、北朝鮮に関わる各国はみなバラバラに争ったり問題を抱えてしまい、2019年はまた荒れた1年になってしまうのかもしれません。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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