- コラム
ランペイジ 巨獣大乱闘~今年最高の脳筋バカ映画!~
2018/06/14
笹木恵一
すごいー! たーのしー!
2018/12/6
笹木恵一
すっかり冬ですね。厚着をして、みんながどんどんモコモコになっていくこの季節。バスや電車で満員になろうものなら、もうそのギュウギュウ具合は半端じゃありません。こんな時はスリに遭いやすくなるというもの。スリと言えば、警察官のくせにスリに合って、しかも拳銃を盗まれたマヌケがいるんですよ。そいつの名前は三船敏郎ってんですけどね。その盗まれた銃を探しているうちに、とんでもない事件にたどり着いてしまうのです。
出典:野良犬
うだるような暑さが続く夏の日。戦後4年、当然冷房なんてどこにもおいてないような時代。元復員兵で新米刑事の三船敏郎は、あまりの暑さにボーっとしてたせいか、拳銃をスられてしまう。盗まれた拳銃はコルトM1908。それを追っている最中、淀橋で強盗事件が発生。犯人が発砲した弾を調べると、使用された拳銃は三船のコルトだと発覚。責任を感じた三船は辞職しようとするが、上司から、責任を感じるならこの事件を解決して見せろと説かれ、この事件を担当するベテラン刑事の志村喬と組んで犯人を追う。捜査を進めるうち、一歩一歩犯人に近づいていくが、その間にも犯人は三船のコルトを使って犯行を重ねていき、その度に三船は自責の念に捕らわれるののだった。さらに、犯人の人物像が見えてくるにつれ、その男が自分と同じ復員兵であり、貧困に喘ぐ孤独な青年だと知り、彼に同情の念すら抱いてしまう三船。ついに犯人の居場所を掴んだ二人の刑事だったが、犯人の凶弾が志村喬を襲った。もう同情なんてしない、たった独りで犯人を追う三船。果たして無事犯人を逮捕することができるのか!?
日本において刑事ものというジャンルを確立させたことでも知られる本作。何が面白いって、犯人から脇役に至るまでのキャラクター造形や、彼らが暮らす街の風景、そこで育まれる犯罪を伴った日常描写に、戦後日本が抱える闇が満遍なく織り込まれている。しかもそれがこれ見よがしにではなく、あくまで普通のこととして描写されているのだ。これは制作当時としては、それが当たり前の日常であった為に他ならないだろう。闇市でのゲリラ撮影も行われているが、そこには行き場を失った帰還兵や犯罪の片輪を担がされる青少年、実は売春の温床となっている一見普通の出店等々、現代の日常系アニメが泣いて逃げるような日常風景ばかりなのだ。
今回の犯人も言ってしまえば時代の犠牲者だ。復員先で全財産を奪われ、貧乏と孤独に喘ぎ、拳銃と云う力を手に入れてしまったばっかりに、その抑圧されてきた欲望が一気に爆発してしまったのだ。だからこそラストシーンでの悶絶には胸が締め付けられる。しかし三船演じる主人公も同じく、復員先ですべてを奪われた人物であり、一度は復讐心に駆られたものの、あえて逆の道を進むことで、自分が狂犬となることから逃れた。いわばこの二人はコインの表と裏なのだ。
映画とは時代を映す鏡であり、その時代の観客は登場人物に共感を覚えるものだ。この時代の人々にとってこの主人公と犯人はどちらも共感し得る存在であり、一つ間違えば自分も犯人と同じ立場になっていたかもしれないが、それと戦う主人公と言う構図、この戦後日本の光と闇の対決こそが、この映画のエンタメ性と言えるのだ。しかし闇にとらわれ過ぎて居てはいけない。確かに今作の犯人には同情の念を抱いてしまうが、その為に罪のない、逆境の中でも真っすぐに生きる者たちが傷つけられているのだ。その犯罪を一つ一つ摘み取るごとに、犯人への同情心は薄れていくのだと、映画はほろ苦く終わる。
さて、この映画を観た後「そうだ!悪い奴は絶対に許しておけないぜ!」と思った一般市民諸君には是非、フリッツ・ラング監督の名作『M』をご覧になっていただきたい。
幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。
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