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2018/11/22

笹木恵一

キャプテン・アメリカ~最も偉大なマーベルヒーロー~

日本でも大人気のマーベルヒーローで今最も人気のあるヒーローと言えばもちろんアイアンマンだよね! そりゃぁメカニックなアーマーはかっこいいし、女にはモテるし、それでいてちょっとメンタル弱いところもあったりして、なんか親しみやすい部分もあるから当然だよね。今やマーベルの代表と言えばアイアンマンなんだけど、じゃあ最も“偉大な”ヒーローは誰? と言えばキャプテン・アメリカをおいて他にはいないだろう。いかにもアメリカ至上主義なネーミング、星条旗みたいなちょっとバカっぽいコスチュームで、とっつきづらい人もまだまだいるんじゃないかな? しかし誰が何と言おうと彼ほど偉大なマーベルヒーローはいないのだ。1941年にコミックの連載がスタートして以降何度か映画化されているが、お世辞にも出来が良いとは言えないものばかりだったが、今回紹介する2011年に公開された『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』は満を持しての傑作となった。第二次世界大戦を舞台としている為、当時の軍事ファンや、レトロフューチャーがお好きなSFファンなら必見の内容だ。

出典:キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (字幕版)







ストーリー

時は第二次世界大戦真っただ中。虚弱体質のくせに人一倍正義感が強く負けず嫌いのスティーブ君は、自分も陸軍に入って世界の平和のために戦おうと志願するが、何度やっても審査に通らない。身分を詐称してまで何度も志願する正義感に感銘を受けた米国戦略化学予備軍のアースキン博士にスカウトされ超人兵士計画の第一号に選ばれる。博士の作った血清によって超人兵士キャプテン・アメリカとして生まれ変わる。しかしナチスのスパイによって博士は暗殺され、血清も失われてしまい、超人兵士計画は中止される。
最初で最後の超人兵士となったスティーブだったが、超人が一人いても扱いに困ると判断され、もっぱら戦意高揚のためのマスコットキャラとしての扱いを受けていた。ところが慰問に訪れていたイタリアで、親友で先に陸軍で任務に就いていたバッキー他107部隊が捕虜になったと聞いて、一人敵の基地に侵入。みごと仲間を救出したスティーブは、その功績と能力が認められ、主要な作戦に投入されるようになる。
しかしそれを快く思わない者がいた。ナチスの極秘化学部門“ヒドラ”のリーダー、レッドスカルだ! レッドスカルとヒドラは最先端兵器を開発し、ナチスからも独立して世界を征服しようとしていたのだ。キャプテン・アメリカはヒドラの野望を打ち砕くことができるのか!?

解説

今作のラストでは、氷の中で眠っていたキャプテンアメリカ(以下キャップ)が70年の時を経て復活するという衝撃の展開となっている。当然原作のストーリーをなぞらえたものだが、何故このようなストーリーが生まれたかというと、そこにはコミックの出版事情が大きく影響している。
キャップは1941年にマーベルコミックの前身であるタイムリーコミックスから発行されたコミックを原作とするキャラクターで、ジョー・サイモンジャック・カービーの伝説的な二人の作家によって生み出された。映画とは違い、コミックが発行されたのは1941年の3月(実際に販売されたのは1940年12月)で真珠湾攻撃前であり、当然アメリカは第二次大戦にまだ参戦していない。しかしコミックの第一号の表紙には、ヒトラーにパンチを食らわせるキャップの絵が描かれており、いかに当時多くのユダヤ系アメリカ人が働いていたコミック業界がナチスドイツに対し危機感を覚えていたかが窺い知れる。実際、反ナチス的な内容に対しクレームも寄せられたようだが、殆どの読者からは大いに支持され、キャプテン・アメリカ第一号は100万部の売り上げを記録した。アメリカが第二次世界大戦に参加すると、コミックの人気はさらに拡大していく。米国内が戦争ムードになり、ほかの出版社からもナチスや日本軍と戦うスーパーヒーローが登場し、戦争と共にヒーローコミックは一大ブームとなっていく。戦争が米国および連合国の勝利に終わる頃にその人気もピークを迎え、それ以降は戦争という舞台を失ったヒーローコミックの人気は徐々に衰え、多くのタイトルが打ち切りになっていき、キャップもまた例外ではなかった。その後50年代に一度復活を果たすも、あまり人気は出ず直ぐにまた打ち切りに合ってしまい、この時の復活は黒歴史扱いとなってしまう(その後意外な形で正史に戻されるのだがまた別の話)。
60年代に入るとマーベルコミックスでは大事件が起こっていた。スタン・リー原作のスーパーヒーローたちがヒーローコミックに革命を起こしたのだファンタスティック・フォーから始まる作品群は、それまで理想的な存在だったスーパーヒーローに、現実的な悩みや人間性を持たせたことで、ストーリーに重厚さを与え、読者層を広げることに成功したのだ。そしてこの新世代ヒーロー達を集めた“アベンジャーズ”も人気を博しており、その第4号にてキャップは再登場を果たし、アベンジャーズのリーダーとして完全復帰する。このとき、一部の設定が改変され、第二次世界大戦の終結前にキャップは北大西洋の氷山に墜落して冬眠状態となり、戦争終結後と50年代のキャップは代理の別人ということになった。たしかに人気が落ちて尻すぼみでいつの間にか消えていったよりも、作戦中に行方不明になったと言われる方が、なんかかっこいいというもの。しかしこの時キャップに与えられた新設定はそれだけでは無かった。40年代の誰もがアメリカの正義を信じていた時代とは一転し、60年代当時のアメリカはケネディ暗殺やベトナム戦争の影響で、正義の概念が揺らぎ始めた時代でもあった。だからこそマーベルの悩めるヒーローが大衆に受け入れられたのもあるが、キャップも同様に元いた時代と現代のギャップに苦しむ運命を背負わされたのだ。しかし日々刻々と変化していく社会情勢において変わらないものがある。それはキャップの持つアメリカ精神だ。アメリカ精神とは何か、それはアメリカがどうあるべきかということだ。アメリカ独立宣言のスローガンは『自由・平等・友愛』だ。そんなものは理想に過ぎない綺麗事だと思うかもしれないが、それでもその理想に向かって戦うのがアメリカ精神なのだ。アメリカ政府が、大衆がその精神から外れるようなことがあれば、キャップはたとえ独りになってもその理想の為に戦う。そんな彼だからこそ正義の揺らいだ世代のアベンジャーズのリーダーに相応しいのだ。
キャプテン・アメリカこそ、最も偉大なマーベルヒーローであることは間違いない

おまけ

去る2018年11月13日に、偉大なるコミックライターであり、編集者のスタン・リーがこの世を去った。マーベルヒーローの話題を語るうえで、これに触れないわけにはいくまい。キャプテン・アメリカの誕生にはスタンは直接関わっていないものの、ある重要な影響を与えた事実がある。それは1941年5月に発行されたキャプテン・アメリカ第3号に掲載された“Traitor’s Revenge”というショートストーリーでのこと。これは若きスタン青年のライターとしてのデビュー作だ。除隊させられた兵士が復讐の為に上官の暗殺を企てるが、それをキャップとバッキーが食い止めるというもの。このストーリーでキャップは彼の象徴的な装備である盾をフリスビーの様に敵に投げつけるという技を初めて披露したのだ。
現在まで続くキャップの戦闘スタイルを本人のデビュー作で創作した驚異の男に敬意を称したい。

エクセルシオール

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (字幕版)

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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