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2018/08/24

菅野 直人

1946日本降伏せず~北海道・東北対ソ決戦予測『マカロフ作戦』

日本がポツダム宣言を受諾、1945年8月15日に降伏を受け入れた玉音放送が流れていなければどうなったか……連合軍による九州南部上陸作戦『オリンピック作戦』、関東上陸作戦『コロネット作戦』が発動されていたはずです。歴史と異なる日本本土決戦が行われるとしたら、ソ連による対日宣戦布告がなされず、日本が降伏のタイミングを失っている状況。そしてソ連は1945年8月9日でなくとも、いつかは攻めてきたはずです。

関連記事:
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1946日本降伏せず~関東決戦予測『コロネット作戦』







1945年8月9日、ソ連参戦せず


歴史通りの終戦を迎える最大の要素は何か?
以前に紹介した“1945日本降伏せず~南部九州決戦予測『オリンピック作戦』”および“1946日本降伏せず~関東決戦予測『コロネット作戦』”では、それを『ソ連による対日宣戦布告』と定めました。

広島・長崎への原子爆弾投下は確かにその威力で日本の政府・軍部を震撼させましたが、計画していた本土決戦ではそれ以上の損害と引き換えに、連合軍へ大打撃を与えて有利な条件で和平交渉に臨むはずだったからです。

しかし、ソ連が日本に宣戦布告して対ソ戦が始まってしまえば、日本はもはや和平交渉の仲介役を頼む大国がいなくなってしまいますから、それ以上戦争を継続しても無意味となります。
だからこそ1945年8月9日、ソ連対日宣戦布告の翌日にポツダム宣言を受諾し、8月15日の玉音放送・終戦へと結びつきました。

しかし、もしソ連が日本へ宣戦布告しなければ、日本は原子爆弾にも屈せず、ソ連による仲介を期待しながら、無条件降伏を回避すべく本土決戦を戦ったのでは無いでしょうか?
それが1945年11月の九州南部上陸『オリンピック作戦』による同地の基地化と、それに続く1946年3月、関東上陸『コロネット作戦』と、それに対する日本軍による迎撃作戦『決号作戦』です。

しかし、最悪のシナリオは、関東平野で連合軍との最終決戦が始まった時に起こります。
日本軍が最後の戦力を注ぎ込む戦いを始めてしまい、もはや連合軍に大打撃を与えて和平交渉が始まるか、日本軍最後の主力が壊滅しても連合軍に打撃を与えられず、最後の希望が潰えるか、そのタイミングでソ連が参戦してきたら?

対日侵攻『マカロフ作戦』発動

第2次世界大戦末期、後の『冷戦』は既にその兆候を見せており、アメリカで容共的だったルーズベルト大統領の死去と、反共的なトルーマン大統領の就任により、米ソ間の関係は急速に冷え込んできていました。
ソ連の独裁者、スターリンが希望する北海道侵攻を認めず、それでいて満州や南樺太、千島列島への侵攻は催促するというアメリカの態度も、スターリンにとっては勝手に見えたかもしれません。

その結果、スターリンがむしろ連合軍(ほとんどは米軍)による日本本土決戦を望み、そのドサクサの中で歴史以上に火事場泥棒的な収奪と、連合軍の消耗で後の冷戦を優位に進めようとしていたら?
こうしてソ連を除く連合軍と日本軍の最終決戦『コロネット作戦』開始を待って、対日侵攻計画『マカロフ作戦』が発動されます。

時期は1946年3月1日、コロネット作戦の開始と同日。
そこまで史実以上に消耗し、もはや関東平野での『最終決戦』用戦力しか大規模な戦力が残っていない日本は、関東平野に連合軍が上陸してきた背後からソ連軍侵攻の報を聞き、愕然とするでしょう。

なお、『マカロフ作戦』は実在した作戦ではなく、あくまでこの記事上のフィクションです。

満州・朝鮮半島・南樺太壊滅す

マカロフ作戦』の初動は史実の対日侵攻とほぼ同じで、満州と南樺太への侵攻で始まり、天候等の条件が整い次第、占守島など千島列島への上陸作戦も開始されます。

史実と異なるのは主に準備期間で、1945年8月9日ではなく1946年3月1日へと7ヶ月も伸びるので、それだけ兵力や物資の集積度は上がりますが、その一方で千島列島への侵攻はまだ冬季に行わねばならないため、あるいは若干時期が遅れるかもしれません。
その結果、沿海州から朝鮮半島北部への侵攻と、千島列島に代わって南樺太への上陸作戦がより大規模になる可能性が高くなります。

満州がソ連軍機甲部隊による草刈り場となるのは史実と変わりませんが、朝鮮半島北部への侵攻により、関東軍および避難民は後背地を失って大混乱に陥るはずです。
朝鮮半島を担当する日本陸軍第17方面軍のうち、済州島を守備する第58軍(歩兵3個師団基幹)を除く戦力は第120師団など歩兵4個師団、戦車1個連隊、野砲兵1個連隊がある程度で、制空権も無い中ソ連軍の『スチームローラー』には抵抗の術がありません。

また、南樺太で善戦して避難民が脱出する時間を稼ぎ、北海道侵攻を食い止めるはずだった第5方面軍第88師団も、千島列島に変わり南樺太の側背、真岡などへ上陸作戦を行われては、史実通りに有利な迎撃戦闘など不可能。

こうして満州、朝鮮半島、南樺太の日本軍は各所で国民義勇戦闘隊もろとも各個撃破され、北海道や本州日本海側、九州北部などへ避難民の輸送も思うようにいかないはずで、朝鮮半島南部の釜山からの脱出便がかろうじて可能かどうか?
こうして開戦半月後には、絶望的な抵抗を行う一部日本軍を除き、北海道などはソ連軍に対して丸裸の状態に陥ります。

ソ連、北海道を占領す

この時点で日本は第12方面軍が関東平野で米軍を中心とした連合軍上陸部隊と激戦中であり、北海道を守備する第5方面軍へ増援を送る余力はほとんどありません。

東北地方を守備する第11方面軍にも歩兵6個師団、戦車1個連隊などを基幹とする戦力はありますが、そのうち歩兵5個師団は沿岸防備用の『張り付け師団』で、唯一の機動打撃師団である第72師団(宮城県仙台市)は関東への増援に回される可能性が高くなります。

北海道を防衛する第5方面軍は、増援が見込めない以上独力で北海道を防衛せねばなりませんが、千島列島と南樺太の部隊を除く北海道残留部隊は第7師団(帯広)と第42師団(稚内)を基幹に、独立混成旅団2個と戦車連隊1個などごくわずか。
1946年3月下旬には宗谷湾と石狩湾に上陸作戦を行うであろうソ連軍に対して可能なのは、函館や苫小牧などから東北地方へ脱出する避難民のため、時間を稼ぐことくらいになりそうです。

宗谷要塞や第42師団は善戦して宗谷湾への上陸部隊を食い止め、石狩湾に上陸したソ連軍に対しては最後の精鋭、第7師団と戦車部隊に混成旅団を加えた戦闘団が立ち向かうものの、物量で押してくるソ連軍に対して劣勢は否めません。

結局、宗谷湾の戦線を突破して日本海側沿いに進撃してくるソ連軍に対して複数の戦闘正面を抱えるようになると、函館や苫小牧、室蘭などに後退しながら時間を稼ぐ遅滞防御戦闘に終始すると思われます。
北海道で組織的な抵抗が終わるのは、遅くとも4月上旬でしょう。

やはり止まらないソ連軍

その頃には関東平野での『最終決戦』の帰趨が見えてくる頃で、条件付き和平であれ無条件降伏であれ、最後の主力である陸軍第12方面軍の大半を失った日本軍は、もはや抗戦を継続できずに松代(長野県)の大本営も停戦に向け動き出しているでしょう。
しかし、例えば1946年4月上旬の時点で『この世界での玉音放送』が行われたとしても、もちろんソ連軍の進撃は止まりません

日本軍の抵抗を排除した連合軍、ことに米英はソ連軍に抗議するはずですが、日本本土決戦で疲れきった彼らの言う事をスターリンが聞き入れるかどうか?
現実にはやはり「まだ正式な降伏がなされていない。日本軍が停戦に応じず抵抗を続けている」などの理由で千島列島攻略を開始するはずです。

そしておそらくは、津軽海峡の安全な通航を手に入れるため陸奥湾に上陸、同地を守備する第11方面軍第50軍の『沿岸貼り付け師団』を蹴散らしたところで、ようやく侵攻を停止する、こんなところではないでしょうか。
アメリカ軍との激突を避けるためそれ以上の侵攻は行わないかもしれませんが、『互いにここまでは侵攻しないようにしよう』というメッセージを込め、1946年3月中には東北地方最大の都市、宮城県仙台市へ最後の原子爆弾投下が行われるかもしれません。

1946年6月、どうにか第2次世界大戦が終結した時、日本で無事な場所は残っているでしょうか

岩手・秋田以南の東北地方と、北関東でも栃木あたりは無事かもしれません。
おそらくそこへ侵攻される前に日本軍も停戦するだろうという意味で、松代大本営のある長野もどうにか無事でしょう。

それ以外の地域は、補給線寸断のための原子爆弾の投下や無差別爆撃、艦砲射撃によって、もはや往時の日本の姿を残さず、生き残った人々も連合軍による保護無しでは生きていけない状態になっていると思われます。

そこまで戦う前に1945年8月15日で戦争が終わったから、私たちの歴史は正しかったのか?
そこまでは言いませんが、『最悪の中の最善』を目指した結果のひとつだったことは間違い無いでしょう。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。
撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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