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2018/04/26

笹木恵一

リターナー~未来を守れ金城武!~

リターナーは2002年に公開された日本映画作品。監督はいまや日本を代表するヒットメーカーとなった山崎貴監督。主演は“普通サイズの魔人ゴーレム”こと金城武。ヒロインを演じるのは当時僕の友達の浅田君が大ファンだった鈴木杏、悪役を演じるは元SET隊の岸谷五朗だ!

ストーリー

どうやら未来の世界は人類と宇宙人の全面戦争が勃発し、宇宙人の圧倒的な科学力の前に人類は滅亡寸前にまで追いやられているらしい。人類が生き残るべく最後に残された手段は、最初に地球に侵入し、後に仲間の軍隊を呼び寄せることになる独りの宇宙人を殺すこと。ところがタイムマシンが完成した矢先宇宙人の攻撃を受け、ギリギリのところで少年兵の鈴木杏をたった一人だけ運命の日2002年の戦争開始3日前の日本へ送ることに成功する。彼女がそこで出会ったのは、闇取引の現場を襲い、金を奪い去るという荒んだ稼業を営む金城武だった。彼の腕を見込んで宇宙人退治の協力を得ることになるが、その先に待っていたのは金城武の宿敵岸谷五朗だったのだ! 岸谷五朗は宇宙人を捕らえ、その力を己のものにしようともくろんでいる。果たして金城武と鈴木杏は破滅の未来を変えることができるのか!?

レビュー

2000年の『ジュブナイル』で監督デビューした山崎貴監督の第二回監督作品。元々VFXからキャリアをスタートさせた監督だけあって、当時の邦画としてはCGも頑張っている。特に興味深いのはアクションシーン。今作の3年前には『マトリックス』が公開されており、世界中でその模倣が行われていた時代。今作もその影響下にあるのは明白だが、まだ真似しようにもちゃんと真似できていない部分が見受けられ、一部お粗末な部分があったりするが、終盤のアクションシーンでは逆にそれがスピーディーで独特なアクションを生み出すことに成功している。これはマトリックスのパロディがやり尽くされた現代ではむしろ作ろうと思って作れるものではない。映像技術の歴史的には興味深い部分も多いが、問題はストーリーと演出面。宇宙人をからめたSF設定や、中盤で明らかになる謎等は非常に面白く見られるが、現実離れしすぎたキャラクター、ストーリーを進めるためだけの不自然な行動、後出しじゃんけんの逆転劇など、残念なポイントが多く見受けられる。また戦いが終わり、エピローグ部分の釈の長さと説明的シーンの蛇足感が映画のバランスを著しく損ねている。山崎監督といえば先述した通り、現在もヒット作品を量産し続ける類まれな才能を持っている監督である。だが『ヒットしやすい作品=誰にでもわかりやすく、受け入れられる』という側面もある。そのための説明的なシーン等がスマートに描けているとはいいがたい。また合理性よりもわかりやすい雰囲気を優先した作風は現在の山崎監督作品に共通してみられる傾向だが、今作はまだ2作目という事もありまだ作風と映画のバランスの両立が上手くできていないのかもしれない。

銃の描写について

邦画の銃描写には、現在ですら首をかしげるものが多いが、今作もその例に当てはまる。特に撃たれた際のダメージ描写は「おいおい、そんなもんじゃ済まねぇよ」とつっこみを入れずにはいられない。敵の岸谷五朗が使用するのは以前も紹介したS&W M29 。こいつを鈴木杏の細い腕に至近距離からぶっ放すのだが、撃たれた彼女はその直後に人間の赤ちゃんぐらいの大きさの生き物を抱えて元気に走っている! M29の破壊力についてご存知の方ならいかに荒唐無稽なシーンであるかお分かりいただけるだろう。また、ラストシーンのとある人物がスプリングフィールドM1911A1で大体5メートルぐらいの距離から手の平を撃たれ綺麗な風穴が空くのだが、現実だったら弾が貫通した手の甲がぐっちゃぐちゃになってしまう事だろう。

このように今見ると少々きつい部分もあるが、プロットはなかなか面白い。今をときめく名監督のどこか歪さの残る若き日の作品ということで、是非ご覧になっていただきたい。

笹木恵一

幼稚園時代からレンタルビデオ屋に足しげく通い、多くの映画や特撮、アニメ作品を新旧国内外問わず見まくる。
中学時代に007シリーズにはまり、映画の中で使用される銃に興味を持ちはじめる。
漫画家を目指すも断念した過去を持つ(笑)。

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